「傾聴」は単なるコミュニケーションにあらず

対話

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看護場面で求められる
「傾聴」の特徴は?

看護職のみなさんは「傾聴」という言葉をしばしば口にされます。そこには、患者や家族が話すことに耳を傾けて「よく聞く」ことが、相手とのコミュニケーションを深め、良好な関係を築くことにつながるとの理解があるからでしょう。

ただそのとき、「ただ聞いていればいい」ということではないはずです。対面している患者が自分に伝えたがっていることをしっかり聞きとり、正確に理解して、次の看護に反映していくことが大切なんだろうと思います。

その点に、カウンセリング場面などにおける「傾聴」と看護場面での「傾聴」には微妙な違いがあり、さまざまな工夫が求められているように思います。その、微妙な違いの部分にウエイトを置き、看護としての「傾聴」についていくつか記事を書いてきましたので、ここで一度まとめてみたいと思います。

看護としての「傾聴」は
ただ聞くだけでは不十分

「傾聴」という言葉には、「相手の話をただじっと聞いている」というイメージが強く、聞いている側、つまり看護師サイドの、相手が訴えようとしていることを理解しようという姿勢が弱いように感じられる――。取材でそんな話をしてくれたのは、精神看護専門看護師の平井元子さんでした。

患者側にしてみれば、こころにうっ積していることを誰かに聞いてもらうだけで気が晴れる場合もあるでしょう。しかし看護場面では、ただ聞いているだけでは、問題は解決しないことが多いものです。

相手の話を理解したら、その理解が正しいかを確認する

患者が言いたがっていることを、まずは正確に聞き取り、理解する必要があります。そのうえで、自分が理解したことが間違っていないかどうかを相手に確認し、そのうえで患者が訴えていることに対処していかないことには、患者の満足は得られないと思います。

つまり、話を聞いて自分が理解したことが正しいかどうかを確認しつつ、さらに傾聴するという「双方向のやりとり」、よく言われるキャッチボールが欠かせないということになります。このやりとりを通して、双方の「共感」のもとに「合意」に至ったところで、次のステップに進んでいくことになります。

このやりとりのプロセスを踏むことが、看護としての傾聴ということになるのではないか、という話を看護としての「傾聴」は聞くだけで終わらせないで書いています。

意思決定支援にも不可欠な
積極的に傾聴する力

ご承知のように、傾聴の手法は、受動的傾聴と積極的傾聴に分けられます。

患者の話を傾聴し、「こういうことですね」と双方が納得して合意できるまでのプロセスには、患者が話したことを、自分がどのように感じ、理解したかということを相手に伝え、重ねて話してもらい、それを改めて確認してというやりとりが欠かせません。まさにこれが「積極的傾聴」と呼ばれる聞き方です。

この積極的傾聴、つまりActive Listeningは、皆さんよくご存知の、アメリカの臨床心理士であるカール・ロジャーズ氏が提唱したカウンセリングスキルです。

糖尿病の患者教育と糖尿病ケアチームのスタッフ教育に取り組んでいる村田敬(たかし)医師(京都医療センター)は、著書「『通じる力』医師のためのコミュニケーションスキル入門」(金芳堂)のなかで、患者との関係を発展させて治療・ケアの効果を高めていくうえて、この積極的傾聴の手法が重要不可欠なコミュニケーションスキルであるとしています。

患者の意思決定支援、とりわけ患者との合意形成というかかわりにおいて求められる「傾聴する力」をどう身につけていくか――。この点については看護師の「傾聴する力」をどう高めていくかがお役に立てると思います。

傾聴で注目すべきは
「何を」ではなく「いかに」語っているか

傾聴する力、という話になると、とかく「聞き方の手法」とか「話を聞き出すテクニック」といったことに関心が向きがちではないでしょうか。

この点について、友人の現役看護師さんが、「話の聞き方や受けとめ方を身に着けることも必要ですが、そういったテクニックに先立つ大事なものがあることに気づかされた」として一冊の本を紹介してくれたことがあります。

精神科医であり産業医としても経験豊富な小山文彦医師(東邦大学産業精神保健職場復帰支援センター)による「精神科医の話の聴き方 10のセオリー」(創元社)です。

本書の第Ⅰ部で小山医師は、「悩むこころをどのように受け止めたらよいのか」について、「10のセオリー」、つまり10の基本原則を提示しています。簡単に言ってしまえば、話し手が「何を語っているか」だけではなく、「いかに語っているか」にも注意を払うということです。詳しくはこちらを読んでみてください。

傾聴のプロである宗教家が語る
悩める人の話を傾聴するコツ

「傾聴のプロ」として全国各地で「カフェ・デ・モンク(Cafe de Monk)」という移動式喫茶室を開き、人々の悩みに耳を傾けている臨床宗教家がいることをご存知でしょうか。

この場合の「悩み」は、仲間や友人とのおしゃべりではとうてい気持ちが晴れないような、こころの奥深いところにある悲しみや苦悩を指しています。

数ある「カフェ・デ・モンク」のなかには、がんセンターや緩和ケア病棟のある病院の患者用ラウンジなどで開設しているところもあります。

臨床宗教家たちはそこで、死期の迫っている患者や家族、あるいはがんの転移やがんの末期であることを担当医から告げられて動揺している患者の話にじっと耳を傾け、そのこころに寄り添っているのです。

彼らが、「悩める人の声をどのように聞いているのか」は、臨床宗教家の生みの親である金田諦應(かねた たいおう)氏(曹洞宗・通大寺 住職)により、「傾聴のコツ―――話を「否定せず、遮らず、拒まず」 (知的生きかた文庫)」(三笠書房)にまとめられています。

そこでは、ただ黙って相手の話に耳を傾けること、つまり「受動的傾聴」は本当の傾聴ではないとして、「積極的傾聴」により「相手が語る物語に共感し、その物語を受け入れていくこと」の大切さがわかりやすく紹介されています。

この「傾聴して、受け止める」技術について、看護師さんを取材させているとよく出てくる本として『対人援助の現場で使える 傾聴する・受けとめる技術 便利帖』(翔泳社)もあります。

終末期ケアとして、患者のこころの深い部分での、いわゆるスピリチュアルな痛みにかかわっていく際にも、基本となるのは積極的傾聴の姿勢であることを教えられます。詳細はこちらで紹介していますので、是非お役立てください。

「カフェ・デ・モンク」と呼ばれる移動喫茶室で宗教者らが悩める人びとの苦悩に耳を傾ける活動が広がっている。この活動の生みの親である臨床宗教師の金田僧侶は、傾聴のコツを「ただ聴くことではなく、相手の物語を共有しようとすること」と説いている。