望まぬ妊娠を防ぐ緊急避妊薬を薬局で試験販売

避妊薬

緊急避妊薬を
医師の処方なしに薬局で

緊急避妊薬(アフターピル)を入手するには、現在は医師の処方箋が必要です。ただ、11月28日(2023年)から、医師による処方箋がなくても薬局の店頭で購入できる「試験販売」が、全国145の薬局において順次開始されているのをご存じでしょうか。

緊急避妊薬とは、避妊しないで性行為をした場合やコンドームが破れてしまうなど避妊に失敗した場合、あるいは性被害にあった場合などに望まない妊娠を防ぐため、緊急処置として性行為後に服用する薬で、避妊法の一つと位置づけられています。

今回試験販売されるのは、「ノルレボ錠」とジェネリック医薬品(後発医薬品)の「レボノルゲストレル錠」。いずれも性行為後の早い服用ほど避妊効果が高く、72時間以内に服用すれば、100%妊娠しないわけではないものの、比較的高い確率で妊娠を防ぐことができるとされています。

ただ、これらの薬に性感染症を予防する効果は期待できません。また、気になる費用は購入者の負担となり、7000円から9000円程度とのことです。

販売対象は16歳以上
研究への参加同意が必要

「試験販売」とあるように、今回の緊急避妊薬の薬局での販売は、あくまでもトライアルです。厚生労働省から業務委託を受けた日本薬剤師会が調査研究として行うもので、医師の処方箋なしで薬局で緊急避妊薬を購入するには、この研究への参加に同意し、薬剤師らの面談による質問やアンケートに協力することが条件となります。

販売対象年齢は16歳以上ですが、16歳以上18歳未満の場合は保護者の同伴と同意が必要となります。また、性交同意年齢に満たない16歳未満に対しては、薬局が産婦人科医などを紹介することになっています。

緊急避妊薬の試験販売は2024年3月まで

緊急避妊薬の薬局での試験販売については、2017(平成29年)に、厚生労働省の専門家による検討会で、一度議論されています。

しかし、「避妊せずに薬を飲ませておけばいいだろう」などと考えて避妊に協力しない男性が増加したり、性暴力に悪用されたりして、逆に女性が苦しむ可能性が懸念され、見送られた経緯があります。

今回の調査研究としての試験販売は、2024年3月まで続けられます。この間に、緊急避妊薬の購入者や薬局担当者、産婦人科医にアンケート調査を行い、医師の処方箋なしで適正に薬局販売できるかどうかを検証することになります。

厚生労働省はこの研究結果を踏まえ、緊急避妊薬の医師の処方箋を必要としない薬局での市販化に向け、今後の方針を決めるとしています。

試験販売終了後は……

薬局での試験販売終了後は緊急避妊にかかる対面診療が可能な医療機関を受診して医師に処方箋を発行してもらう必要があります。厚生労働省は、この対面診療が可能な全国の産婦人科医療機関のリストをこちらで公表しています。

パブリックコメントでは
9割以上が薬局販売に賛成

なお、2022年12月末から2023年1月に厚生労働省が行った緊急避妊薬に関するパブリックコメント(意見公募)には約4万6000件の意見が寄せられ、そのうち約98%が「医師の処方箋なしでの薬局販売」に賛成しているそうです。

一方で、日本産婦人科医会が2021(令和3)年に会員らを対象に実施したアンケート調査では、「医師の処方箋なしでの薬局販売」への懸念事項として、以下の回答がそれぞれ6割近くを占めたことが報告されています。

  • コンドーム使用率の低下による性感染症リスクの拡大
  • 緊急避妊薬服用後の妊娠への対応が遅れる
  • 避妊に協力しない男性の増加

緊急避妊薬購入希望者は
事前に電話連絡を

調査研究として試験販売を実施する日本薬剤師会は、公式サイトからアクセスできる専用サイトにおいて、緊急避妊薬の購入方法や試験販売を行っている全国145の販売薬局のリストを公開しています。なお、購入を希望する場合は、事前の電話連絡を求めています。

また、試験販売に関する調査研究に参加していない薬局でも、緊急避妊薬の購入希望者からの問い合わせに対応できるよう、試験販売に関する告知リーフレットを作成しています(会員向けホームページからダウンロード可能)。

看護職の皆さんの健康課題として、また性被害にあった女性が救急外来等を訪れた場合などに活用していただきたいと考え、ポイントをまとめてみました。

なお、

参考資料*¹:日本薬剤師会「緊急避妊薬試験販売インフォメーション」