入院予定患者に「入院前から行う」入退院支援




慢性期疾患

入院予定患者対象の
「入院時支援加算」

入院が予定されている患者が、入院生活をスムーズに送り、より早い時期により良い状態で退院できるよう入院前からの支援が強化されています。

その具体策として、2018(平成30)年度の診療報酬改定で「退院支援」が「入退院支援」に改められたことは既にご承知だろうと思います。

この改定により、
⑴ 入院が確定して入退院支援加算の要件を満たしている患者を対象に、
⑵ 入退院支援センターのような外来部門において入院前から一定の支援を実施すると、
⑶ 診療報酬上の評価として、患者の退院時に(1回のみ)「入院時支援加算」200点が加算されることになっています。

なぜ、入院してくる前から支援するの?

さて、新設から1年余り……。
この間、入院予定が決まったばかりの早い段階から退院支援の一環として支援をスタートすることについては、「何かしっくりしない」という声を、少なからず耳にしてきました。

東京近郊の公立病院で入退院支援を専任で担当しているS看護師も、少なくとも2か月ほど前に話をした時点では、合点がいかないままに取り組んでいると話す1人でした。

ところがつい先日、久しぶりに電話で話す機会があったのですが、そのとき彼女が、
「なんとなくもやもやしていたものが吹っ切れて、ここ数日は心底納得してやっている」
と、とても明るい声で「いい話」をしてくれたのです。

そこで今日は、S看護師が話してくれた、その「いい話」を紹介しながら、退院後の生活に向けた支援の一環として行われる「入院前からの支援」について、診療報酬上の算定条件なども紹介しながら書いてみたいと思います。

入院前から退院後まで
その人らしい暮らしを

たとえば「入院サポートセンター」のような部門が設置されている一部の病院では、2018年の診療報酬改定により「退院支援」が「入退院支援」に名称変更される以前から、入院が予定されている患者を対象に、さまざまなかたちで入院前からの支援が行われてきました。

そこでは、PFM(Patient Flow Management)との略称でも知られるように、外来における入院前支援において、患者の在宅療養中の生活に関する情報を得るなど、在宅療養中の患者の生活を支援してきた介護支援専門員(以下「担当ケアマネジャー」)との間で、密な連携が行われていました。

このPFMを実施していた病院側の担当看護師等の多くが、
「担当マネジャーから得られた入院前の患者情報がその後の退院支援に役立った」
と答えていることが厚生労働省の調査*で明らかになっています。
*平成28年度入院医療費等の調査「介護支援員との連携」

ただ、中小規模の病院で「退院支援」とか「退院調整」と言えば、対象になるのは入院中の患者に限られていたのではないでしょうか。

そのため「なぜ入院してくる前からかかわる必要があるのか。だいたいどんな支援をすればいいのか」等々の疑問が湧いてくるのは、ある意味当然といえば当然なのかもしれません。

「その人らしさを尊重する」発想を

そのような疑問を持ちながら、さまざまな患者に入退院支援を続けているうちに、彼女が看護をするうえで常に基本に置いている「その人らしさを尊重する」という発想に立ち返ってみようと考えるようになったのだそうです。

そして今では、
「医師から入院治療を提案されて入院を決めた患者が、それまで続けてきたその人らしい暮らしを、入院によって途切れさせることなく、できるだけ早い時期に退院して以前のような生活に戻っていけるように支援しよう」
と考えていると言います。

「患者が続けてきたその人らしい暮らし方」を知るうえで、さらには「できるだけ早い時期に退院して以前のような生活に戻っていく」ためにも、入院に至るまでの間ずっとその人を支えてきた地域の関係者と密に連携して、切れ目のない支援を行うことが大切なのだと、今更のように再確認したと話してくれました。

入院前からの支援対象患者と
入院前に行う支援内容

そもそも入退院支援の対象となる患者については、「入退院支援加算」の算定要件として、2018年度診療報酬改定は以下を挙げています。

  1. 悪性腫瘍、認知症または誤嚥性肺炎等の急性呼吸器感染症のいずれかであること
  2. 緊急入院であること
  3. 要介護状態であるとの疑いがあるが要介護認定が未申請であること
  4. 家族または同居者から虐待を受けている、またはその疑いがあること
  5. 生活困窮者であること
  6. 入院前に比べADLが低下し、退院後の生活様式の再編が必要であること
  7. 排泄に介助を要すること
  8. 同居者の有無にかかわらず、必要な養育または介護を十分に提供できる状態にないこと
  9. 退院後に医療処置(胃瘻等の経管栄養法を含む)が必要なこと
  10. 入退院を繰り返していること
  11. その他患者の状況から判断し、上記に準ずると認められる場合

これらの要件を満たす患者のうち、
⑴ 他の保険医療機関(健康保険証が使える病院や診療所)からの転院患者を除き、
⑵ 医師の「入院治療が必要」との判断に患者側が同意したうえで、
⑶ 自宅などから入院する予定になっている
患者が「入院時支援加算」の算定対象となります。

患者が入院生活を事前に理解し、スムーズな退院につなぐ

この場合の、外来部門が担当する入院前からの支援の目的として、以下が明記されています。
⑴ 患者自身については、「入院生活や自分が受ける治療プロセスをイメージして、必要な準備をしたうえで入院に臨むことができる」こと
⑵ 病院側については、
「患者の個別の状況を事前にアセスメントし、よく理解したうえで患者を受け入れることにより入院医療をスムーズに提供できる」こと

そのうえで、実施すべき支援内容として、以下の3点を挙げています。

  1. 以下に示す⑴から⑻を入院前に行う
    ⑴ 身体的・社会的・精神的背景を含めた患者情報の把握
    ⑵ 入院前に利用していた介護サービス・福祉サービスの把握
    (要介護・要支援状態の場合のみ)
    ⑶ 褥瘡に関する危険因子の評価
    ⑷ 栄養状態の評価
    ⑸ 服薬中の薬剤の確認
    ⑹ 退院困難な要因の有無の評価
    ⑺ 入院中に行われる検査・治療の説明
    ⑻ 入院生活の説明
  2. ①の情報を基に、入院中の看護や栄養管理等にかかる療養支援計画を立てる
  3. ②の計画を患者および入院する病棟の多職種スタッフと共有する
    (看護師・栄養士・理学療法士・薬剤師・MSWなど)

このうち1については、患者の病態等により⑴から⑻の全てを実施できない場合は、実施した内容の範囲内で療養支援計画を立案しても差し支えないものの、その場合でも⑴と⑵と、および⑻は必ず実施し、残りの項目については入院後に実施しても構わない、となっています。

入院前の支援を病棟看護師の負担軽減につなぐ

なお、診療報酬点数表には記されていませんが、今回の改訂で「入院前からの支援」を加えることを検討する会議においては、
「入院前の支援を加えることにより、入院医療の効率化や患者の満足度の向上、さらには円滑な在宅への復帰をはかることに加え、病棟看護師の負担軽減につなげたい」
といった強い意見もあったと聞いています。

この場合の検討会議参加については、2020年度診療報酬改定により、責任者が必ずしも対面でなくてもよいと判断した場合は、オンラインでの参加も可能となっている。詳しくは、→オンライン会議の導入で気をつけたいこと

上記支援項目⑶の「褥瘡に関する危険因子の評価」については、別の記事で評価方法についてまとめてみましたので、参考にしてみてください。
→ 「褥瘡に関する危険因子の評価」が身近な課題に