入院予定患者に外来部門で行う「入院前支援」

慢性期疾患

入院予定患者対象の
「入院時支援加算」

入院が予定されている患者が、入院生活をスムーズに送り、より早い時期により良い状態で退院できるよう入院前からの支援が強化されています。

その具体策として、2018(平成30)年度の診療報酬改定で「退院支援」が「入退院支援」に改められたことは既にご承知のことと思います。

この改定により、「入院が確定して入退院支援加算の要件を満たしている患者」を対象に、「入退院支援センターのような外来部門において入院前から一定の支援を実施する」と、診療報酬上の評価として、患者の退院時に(1回のみ)「入院時支援加算」200点が加算されることになっています。

2020年度診療報酬改定により、入院前の支援状況に応じて、「入院時支援加算」が「加算1 230点」と「加算2 200点」に分けられている*¹ 。

なぜ、入院してくる前からの支援が必要か

この入院前からの支援について、当初は、「何かしっくりしない」という声を、少なからず耳にしてきました。

東京近郊の公立病院で入退院支援を専任で担当しているS看護師も、少なくとも2か月ほど前に話をした時点では、合点がいかないままに取り組んでいると話す1人でした。

ところがつい先日、久しぶりに電話で話す機会があったのですが、そのとき彼女が、「なんとなくもやもやしていたものが吹っ切れて、ここ数日は心底納得してやっている」と、とても明るい声で「いい話」をしてくれたのです。

そこで今日は、S看護師が話してくれた、その「いい話」を紹介しながら、退院後の生活に向けた支援の一環として行われる「入院前からの支援」について、診療報酬上の算定条件なども紹介しながら書いてみたいと思います。

入院前から退院後まで
その人らしい暮らしを

たとえば「入院サポートセンター」のような部門が設置されている一部の病院では、2018年の診療報酬改定により「退院支援」が「入退院支援」に名称変更される以前から、入院が予定されている患者を対象に、さまざまなかたちで入院前からの支援が行われてきました。

そこでは、PFM(Patient Flow Management;入院患者の一貫した支援システム)との略称でも知られるように、外来における入院前支援において、患者の在宅療養中の生活に関する情報を得るなど、在宅療養中の患者を支援してきた介護支援専門員(以下「担当ケアマネジャー」)との間で、密な連携が行われていました。

このPFMを実施していた病院側の担当看護師等の多くが、「担当マネジャーから得られた入院前の患者情報がその後の退院支援に役立った」と答えていることが厚生労働省の調査でも明らかになっています。

ただ、中小規模の病院で「退院支援」とか「退院調整」と言えば、対象になるのは入院中の患者に限られていたのではないでしょうか。

そのため「なぜ入院してくる前からかかわる必要があるのか。だいたいどんな支援をすればいいのか」等々の疑問が湧いてくるのは、ある意味当然なのかもしれません。

「その人らしさを尊重する」発想を

そのような疑問を持ちながら、さまざまな患者に入退院支援を続けているうちに、S看護師が看護をするうえで常に基本に置いている「その人らしさを尊重する」という発想に立ち返ってみようと考えるようになったのだそうです。

そして今では、「医師から入院治療を提案されて入院を決めた患者が、それまで続けてきたその人らしい暮らしを、入院によって途切れさせることなく、できるだけ早い時期に退院して以前のような生活に戻っていけるように支援しよう」と考えていると言います。

「患者が続けてきたその人らしい暮らし方」を知るうえで、さらには「できるだけ早い時期に退院して以前のような生活に戻っていく」ためにも、入院に至るまでの間ずっとその人を支えてきた地域の関係者と密に連携して、切れ目のない支援を行うことが大切なのだと、今更のように再確認したと話してくれました。

入院前からの支援対象患者と
入退院支援の支援内容

そもそも入退院支援の対象となる患者については、「入退院支援加算」の算定要件として、2018年度診療報酬改定は以下を挙げています。

  1. 悪性腫瘍、認知症または誤嚥性肺炎等の急性呼吸器感染症のいずれかであること
  2. 緊急入院であること
  3. 要介護状態であるとの疑いがあるが要介護認定が未申請であること
  4. 家族または同居者から虐待を受けている、またはその疑いがあること
  5. 生活困窮者であること
  6. 入院前に比べADLが低下し、退院後の生活様式の再編が必要であること
  7. 排泄に介助を要すること
  8. 同居者の有無にかかわらず、必要な養育または介護を十分に提供できる状態にないこと
  9. 退院後に医療処置(胃瘻等の経管栄養法を含む)が必要なこと
  10. 入退院を繰り返していること
  11. その他患者の状況から判断し、上記に準ずると認められる場合
2022(令和4)年度 診療報酬改定にて、ヤングケアラー(本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子ども)及びそのケアを受けている家族が、入退院支援の対象に追加されています。
ヤングケアラーの定義および看護に期待される役割については、こちらをチェックしてみてください。
大人に代わって家族の介護やきょうだいの世話を担っている「ヤングケアラー」の存在が注目されている。ケアの常態化、長期化は子どもたちの成長にも健康にもさまざまな影響を及ぼしている。その実態を踏まえ、看護が彼らにできることを考えてみた。

これらの要件を満たす患者のうち、次の患者が「入院時支援加算」の算定対象となります。

  1. 他の保険医療機関(健康保険証が使える病院や診療所)からの転院患者を除き、
  2. 医師の「入院治療が必要」との判断に患者側が同意したうえで、
  3. 自宅などから入院する予定になっている患者

患者が入院生活を事前に理解し、スムーズな退院につなぐ

この場合の、外来部門が担当する入院前からの支援の目的として、以下が明記されています。

  1. 患者自身については、「入院生活や自分が受ける治療プロセスをイメージして、必要な準備をしたうえで入院に臨むことができる」こと
  2. 病院側については、「患者の個別の状況を事前にアセスメントし、よく理解したうえで患者を受け入れることにより入院医療をスムーズに提供できる」こと

そのうえで、実施すべき支援内容として、以下の3点を挙げています。

  1. 以下に示す⑴から⑻を入院前に行う
    ⑴ 身体的・社会的・精神的背景を含めた患者情報の把握
    ⑵ 入院前に利用していた介護サービス・福祉サービスの把握
    (要介護・要支援状態の場合のみ)
    ⑶ 褥瘡に関する危険因子の評価
    ⑷ 栄養状態の評価
    ⑸ 服薬中の薬剤の確認
    ⑹ 退院困難な要因の有無の評価
    ⑺ 入院中に行われる検査・治療の説明
    ⑻ 入院生活の説明
  2. 上記の情報を基に、入院中の看護や栄養管理等にかかる療養支援計画を立てる
  3. 立案した療養支援計画を患者および入院する病棟の多職種スタッフと共有する
    (看護師・栄養士・理学療法士・薬剤師・MSWなど)

このうち「1」については、患者の状態等により⑴から⑻の全てを実施できない場合は、実施した内容の範囲内で療養支援計画を立案しても差し支えないものの、その場合でも⑴と⑵、および⑻は必ず実施し、残りについては入院後に実施しても構わない、となっています。

なお、上記支援項目⑶の「褥瘡に関する危険因子の評価」については、別の記事で評価方法についてまとめてみましたので、参考にしてみてください。

褥瘡アセスメントをはじめとする褥瘡マターは、とかく皮膚・排泄ケア認定看護師に頼ってきたが、2018年度診療報酬改定で新設された入院時支援加算の算定要件に絡み、他人任せではいられなくなったという方もいるだろう。そんな方のためにポイントをまとめた。

参考資料*¹:2020年度診療報酬改定 個別改訂項目について p.419