「褥瘡に関する危険因子評価」が身近な課題に

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褥瘡危険因子の評価が
入院時支援に欠かせない

「以前の病棟勤務だった頃は、褥瘡に関しては、定期的にラウンドしてくれる皮膚・排泄ケア認定看護師に頼り切っていたけれど、これからはそうもいかなくなった」――。

こう話してくれたのは、この春に内科病棟から入院サポートセンターへ移動になり、入退院支援チームに参加しているM看護師です。

2018年度の診療報酬改定により、入院が確定している患者のうち入退院支援加算の要件を満たしている患者を対象に、入院前、つまり外来時点から一定の支援を行うと、「入院時支援加算」として評価されるようになっています。詳細は「入院予定患者に外来部門で行う入院前支援」をご覧ください。

この入院時支援加算は、入退院支援加算を届け出ている医療機関であれば追加的に評価を申し出ることができるのですが、それにはいくつか満たすべき要件があります。

M看護師が勤務する病院は地域との連携体制の面でクリアできない点があり、入院時支援加算新設から1年近く、この算定の対象から外れていたそうです。

ところが1か月ほど前に直属の上司から、病院として入院時支援を行うことが決まった旨の報告があり、「ついてはあなたに専従でやってもらいたいから、すぐにも準備にとりかかるように」と大役を任命された、と言うのです。

冒頭の「これからはそうもいかなくなった」のは、こういう背景があってのこと。入院時支援加算の算定要件として実施すべき支援はいくつかあるのですが、そのなかの一つに「褥瘡に関する危険因子の評価」が挙げられています。そのため、彼女自ら褥瘡という課題にかかわらざるを得なくなったというわけです。

褥瘡に関する危険因子に
「スキン-テア」が加わる

診療報酬の観点から言えば、すでに2012(平成24)年度に診療報酬が改定された時点から、入院基本料の算定要件の一つに「褥瘡対策が行われていること」が組み込まれていて、そのなかに「褥瘡に関する危険因子の評価」が求められていました。

今回の改定で新設された「入院時支援加算」の算定要件となっている「褥瘡に関する危険因子の評価」には、この評価方法を流用すればいいわけです。

2012年の改定以降、勤務先の病院におけるこの評価は、親交のある皮膚・排泄ケア認定看護師が仲間と一緒にやっていましたから、M看護師としては「詳しいことは彼女に教えてもらえばいいや」ぐらいに、全く気軽に考えていたそうです。

実際、この申し出に認定看護師の彼女は、「いいわよ」と、即快諾だったのですが、「でも、今回の改定ではその評価にスキン-テア*が追加されているから、今までやってきたことそのままというわけにはいかないけど、一緒に勉強しましょう」となったそうです。

勉強を始めたとのメールが届いてからほぼ半月後、その「勉強」で学んだことを、M看護師は電話でていねいに説明してくれました。

そのうえで、「私のように、今回の改定で新設された入院時支援を担当することになって、褥瘡アセスメントに新たに取り組もうという方も少なくないでしょうから、少しでもお役に立てるようにブログに今の話を書いてよ」との緊急要請を受けました。これに応え、以下にざっくりとでとすが要点をまとめてみようと思います。

*「スキン-テア(Skin Tear)」とは、摩擦やずれにより皮膚が傷ついてできる裂傷のこと。その傷口から浸出液が漏れ出る様子が、皮膚(skin)が涙(tear)を流しているように見えることから、この呼び名がついたとのこと。
皮膚が脆弱(ぜいじゃく)な高齢者に多く見られ、褥瘡につながりやすいことから、褥瘡の危険因子として注視されるようになった。

褥瘡に関する危険因子評価項目
スキン-テアが追加で8項目

2018年度の診療報酬改定による褥瘡関連の変更、改正点については、日本褥瘡学会により「褥瘡関連項目に関する指針」としてまとめられているなかで褥瘡に関する危険因子の評価項目として、以下の8項目が表示されています。

  1. 日常生活自立度
  2. 基本的動作能力(ベッド上での自力体位変換)(イスに坐つた姿勢の保持、除圧)
  3. 病的骨突出
  4. 関節拘縮
  5. 栄養状態低下
  6. 皮膚湿潤(多汗、尿失禁、便失禁)
  7. 皮膚の脆弱性(浮腫)
  8. 皮膚の脆弱性(スキン-テアの保有、既往)

これらの項目一つひとつについて、「あり」「なし」あるいは「できる」「できない」でチェックしていきます。

その結果、「あり」もしくは「できない」が1つでもあれば、この評価結果をもとに、入院中の看護計画を立案し、その計画を患者が入院する病棟の多職種スタッフと共有、実施することが求められているのです。

日常生活自立度と
褥瘡に関する危険因子の評価

上記評価項目のなかの「1」の「日常生活自立度」については、厚生労働省が以下の「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準」を活用し判定することを求めています。

その判定に際しては「~をすることができる」といった「能力」の評価ではなく「状態」、特に「移動」に関する状態像に着目してランク分けするよう注意を促しています。

生活自立 ランクJ
何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する
1. 交通機関等を利用して外出する
2. 隣近所へなら外出する
準寝たきり ランクA
屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない
1. 介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する
2. 外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている
寝たきり ランクB
屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体だが、座位を保つ
1. 車いすに移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う
2. 介助により車いすに移乗する
寝たきり ランクC
1 日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する
1. 自力で寝返りをうつ
2. 自力では寝返りもうてない
※判定に当たっては、補装具や自助具等の器具を使用した状態であっても差し支えない。

判定の結果、「J1」~「A2」に該当する寝たきり状態ではない患者については、「褥瘡に関する危険因子評価表を作成する必要はない」、とされています。

なお、上記の日本褥瘡学会がまとめた「褥瘡関連項目に関する指針」*¹は当会のホームページ上で公開され、全文をダウンロードできるようになっています。なかでも日常的に活用したい厚生労働省の「褥瘡対策に関する診療計画書」のなかにある「褥瘡危険因子評価表」は上記指針のp.10を参照してみてください。

床ずれではない褥瘡にも関心を

最近は別のかたちでの広義の褥瘡として、ギブスや酸素マスク、カテーテル類などの圧迫、接触によって発生する創傷「医療関連機器圧迫創傷」や睡眠薬による過鎮静などが原因となる「薬剤誘発性褥瘡」の存在がクローズアップされています。

詳しくはこちらの記事を参考にしてみてください。
⇒ 床ずれではない褥瘡「医療関連機器圧迫創傷」の予防策は万全ですか

「薬物誘発性褥瘡」の存在を認識していますか

褥瘡対策に加わった「薬剤滞留の問題」チェック

また、令和4(2022)年度診療報酬改定により褥瘡対策に加えられた「薬剤滞留の問題」については、こちらを参照してください。
⇒ 褥瘡対策で注意したい「薬剤滞留の問題」

日本褥瘡学会のガイドラインが7年ぶりに改定され、『褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版』(照林社)が2022年3月に発表されています。
新版では、14項目のクリニカルクエスチョンを設定し、「推薦文」と「推薦の強さ」が提示されています。

参考資料*¹:日本褥瘡学会「褥瘡関連項目に関する指針」