眠気覚ましにカフェインを摂りすぎていませんか




カフェインの摂りすぎ

カフェインの過剰摂取に
厚生労働省が注意喚起

夜勤中の脳の疲れや集中力の低下を防ぐにはブドウ糖がいい、という話を先日書きました。
これを読んでくれた友人の看護師さんから、ちょっと気になるメールが届きました。

ブドウ糖のような甘いものが脳の疲れをとるのにいいことはわかったけれど、甘いものはやっぱり太るもとだから、私はコーヒーに頼ってしまう、といった内容です。

少々心配になり、「一晩にどのくらい飲んでいるの?」と電話で尋ねてみました。
すると、「私は2、3杯だけど、同僚のなかにはもっと飲んでいる人もいる。しゃきっとしたいからと、エナジードリンクってあるでしょ。あれを飲んでいる人もいる」との返事――。

これを聞いて、かなり心配になってきました。
というのは、ちょうど2年ほど前、厚生労働省がカフェインの過剰摂取による健康被害について注意を呼びかけていたことを思い出したからです。

日看協が発表した「夜勤形態」の調査結果では、二交代制が最も多く、勤務時間は約16時間に及んでいる。この間に1時間の休息と続けて2時間の仮眠をとっているようだが、体内時計から考えると脳の疲れや集中力の低下が懸念される。回避策としてブドウ糖補給を……。

急性カフェイン中毒による救急搬送が
相次ぐ実態を日本中毒学会が調査

厚生労働省は2017年7月、ホームページ上に「食品に含まれるカフェインの過剰摂取について」と題するQ&Aコーナーを新たに設け、「カフェインの過剰摂取に注意しましょう」と広く国民に呼びかけています*¹。

コーナーを新設して健康リスクを注意喚起するきっかけとなったのは、当時、急性カフェイン中毒による救急搬送患者が相次いでいることを懸念した日本中毒学会が、その実態について全国規模の調査を行った結果*として、公表された内容でした。
*上條吉人:カフェイン含有製品の摂取後に救急搬送された患者の背景、臨床経過、予後などに関する後方視的多施設共同調査,日本中毒学会編『中毒研究』30(2),2017

全国38の救急医療機関を対象にアンケート調査を行ったところ、2011年4月~2016年3月までの5年間に、少なくとも101人が急性カフェイン中毒で救急搬送され、うち7人が不整脈で心停止を起こし、そのうち3人が死亡していたことがわかったのです。

コーヒーとエナジードリンクを併用!?

心停止に至った患者はいずれもカフェインを過剰摂取(6g以上)しており、なかには53gを摂取した患者もいたことが明らかになっています。

また、救急搬送された患者のうち97人は、眠気防止薬として市販されている栄養ドリンクやカフェイン入り錠剤やカプセルを服用したうえで、さらに加えてコーヒーやカフェインを添加したエナジードリンクのような清涼飲料水も併せて飲んでいました。

過剰摂取による急性カフェイン中毒で救急搬送された患者の平均年齢は25歳と若く、男女比では男性の方がやや多くなっていました。加えてその報告には、深夜勤務の仕事に就いている人も多かった旨の記述があり、非常に気になったことを覚えています。

カフェインの中枢神経刺激作用が
眠気抑制や疲労感軽減効果を

カフェインは天然の植物由来の成分で、コーヒー、紅茶、緑茶や抹茶などの日本茶、ウーロン茶、さらにはココアやチョコレートの原料であるココア豆など、私たちが嗜好品として昔から日常的に愛飲しているものの多くに含まれています。

加えて最近は、カフェインを添加したエナジードリンクのような清涼飲料水やカフェインの錠剤やカプセルなども比較的手軽に手に入り、若い世代、特に中高生を中心に、眠気覚ましや集中力が高まるなどの理由で人気が博しています。

カフェインには、中枢神経を刺激して覚醒を促す作用があります。
この作用によって眠気を抑えたり、疲労感を軽減してからだも気持ちもしゃきっとさせてくれる効果を期待して、目覚めの一杯から始まり、私たちは1日に何杯かのコーヒーをはじめとするカフェイン飲料を食品感覚で摂っています。

厚生労働省の資料によれば、コーヒー100mlに含まれるカフェインは60㎎、紅茶なら30㎎、煎茶やウーロン茶では20㎎。この程度のカフェイン量であれば、リラックスや気分転換のために飲んでいるぶんには健康被害の心配はまずないと考えていいでしょう。

エナジードリンクには
1本に100㎎を超えるカフェインが

しかし、同じカフェイン食品ながら、エナジードリンクのような「眠気覚まし」をアピールしているカフェイン添加の清涼飲料水となると、ちょっと違ってきます。

これらの飲料水には、缶や瓶1本当たりコーヒーなら約2杯分に相当する100㎎、なかにはさらに多くのカフェインが含まれています。

カフェイン100㎎は、健康であれば危険な量ではないようです。
しかし、これを1日に何本も続けて飲んだり、コーヒーなどのカフェイン飲料と、あるいはカフェインの錠剤やカプセルとエナジードリンクを併用したりすれば、カフェイン摂取量が過剰になり、カフェイン中毒につながるリスクがあります。

カフェインの摂り過ぎによる
中毒症状と長期的な健康被害

カフェインを一度に過剰に摂取すると、中枢神経系の刺激によるめまい、脈拍数の増加、興奮、不安、からだのふるえが、また消化管が刺激されて食欲不振に始まり、下痢や吐き気、嘔吐などのつらい症状を自覚するようになります。
急性のカフェイン中毒症状です。

さらに、飲み続けることによる長期的な影響として、肝機能が低下している人では高血圧につながるリスクが指摘されています。また、カルシウム摂取量が少ない人がカフェインを飲み続けると、体内のカルシウム量が低下して骨粗鬆症のリスクが高まるとも指摘されています。

長期的には、精神面への影響もあります。
カフェインをからだに入れていないと「気持ちが落ち着かない」「不安になる」「イライラしてくる」ためについ飲んでしまう、といった「依存」の問題も起こり得るのです。

WHOの妊婦向けカフェイン規制
コーヒーは1日3~4杯まで

いずれにしてもカフェインの過剰摂取は心身両面のさまざまな健康被害につながりますから、飲み過ぎにはくれぐれも注意が必要です。

では、カフェインの適量とはどのくらいなのかという話になるわけですが、健康にマイナスの影響が生じないと推定されるカフェイン飲料の1日当たりの摂取許容量は、その人の食習慣なども影響して個人差が大きいことなどから、日本を含め世界レベルでに設定されていません。

ただし、妊娠中の女性についてはWHOが、胎児へのカフェインの影響を避けるためには、同じカフェイン飲料であるお茶や紅茶などに比べコーヒーは、それらのほぼ2倍のカフェインを含んでいることから、1日3~4杯までにするよう呼び掛けています。

同様にイギリス食品基準庁も、妊婦向けにカフェイン摂取に関する注意喚起をしているのですが、こちらはWHOよりも厳しく、1日のカフェイン摂取量を200㎎以下に抑えるよう求めています。
この量は、コーヒーで言えば、通常サイズのマグカップで2杯程度です。

現在日本では、食品安全委員会などがカフェインの摂取許容量の決定に向け、カフェインの健康被害に関する情報収集・分析に取り掛かっている段階あると聞いています。

その結果が出されるまでは、カフェインだけに頼らない眠気対策や心身ともにしゃきっとする方法を自分なりに考えながら、健康を守っていただきたいものです。

参考資料*¹:厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html