日本救急医学会が熱中症対処法で緊急提言

夏

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深部体温40度以上で意識障害が重症なら
「最重症」の熱中症を疑い、即座に体の冷却を

猛暑続きのなか熱中症で救急搬送される患者が急増しているのを受け、日本救急医学会は7月8日のオンライン記者会見で、熱中症の予防や対処法に関する緊急提言を行っています。

そのなかで、熱中症の重症度分類に「最重症」を加え、今年改定の「熱中症診療ガイドライン2024」に盛り込み、こちらで公表しています。

同時に医療関係者には、深部体温*が40度以上、もしくは皮膚に明らかな熱感があり、かつ重症の意識障害により意思疎通が図れない「最重症」レベルの熱中症患者に対しては、何らかの方法で即座に体を冷却する「アクティブ・クーリング(積極的な冷却)」を行う必要があるとしています。

*深部体温とは、脳や臓器など身体内部の温度のこと。正確には直腸、膀胱、鼓膜、血液などで測るが、簡単に測定することは難しいため、比較的深部に近い腋窩最深部に体温計を密着させて測定する。

訪問先などで
「最重症」レベルの熱中症を疑ったら

アクティブ・クーリングと呼ばれる冷却法には、体に水分を吹きつけてから扇風機などで気化熱を奪う、あるいは冷たい水を張ったプールなどで全身を冷やす等の方法があります。

ただし、このようなクーリング法は、過度の冷却により低体温に陥るなどのリスクを伴います。したがって、アクティブ・クーリングを安全かつ効果的に行うためには「事前に講習や研修を受けていることが必要で、不安のある施設は日本救急医学会に相談してほしい」とのこと(問い合わせはoffice-jaam@umin.ac.jpへ)。

また、在宅など医療機関以外の場所で「最重症」レベルの熱中症患者に遭遇した時は、「(体を冷やそうと)無理に水風呂に入れたりすることなく、まずは救急車を呼ぶこと」。救急車を待つ間に、意識状態を注視しつつ「できれば水分と塩分(経口補水液 オーエスワン など)を摂取させ、エアコンのある部屋で衣服を脱いで体内の熱を外に出しながら休ませるなどの応急対応をしてほしい」としています。

訪問先などでの基本的な熱中症対応については、帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長の三宅康文医師らによる『医療者のための熱中症対策Q&A【電子版付】』(日本医事新報社)が参考になります。

また、緊急時の熱中症対応の一つとして、訪問看護ステーションに熱中症応急処置セットなどの備えがあればなお心強いのではないでしょうか。

救急搬送の熱中症患者増加で
重症度に「最重症」を追加へ

日本救急医学会は熱中症の重症度を、これまでは次の3段階に分類していました(「日本救急医学会熱中症分類2015」*¹による)。

  • Ⅰ度(軽症)  : めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛(こむら返り)があるものの意識障害は認めない状態で、現場にて対処可能(冷所での安静、体表冷却、経口的に水分とNaの補給)
  • Ⅱ度(中等症): 頭痛や嘔吐、倦怠感、集中力や判断力の低下などがあり、速やかに医療機関を受診する必要がある状態
  • Ⅲ度(重症) :意識障害やけいれん発作などがあり、医療者の判断により入院(場合によっては集中治療)が必要な状態

今回この重症度を見直し、Ⅲ度の重症のなかでも、「深部体温が40度以上ある」、かつグラスゴー・コーマ・スケール(GCS)で8点以下の意識障害があり、「意識がない、あるいはうとうとしている」ためにさらに注意を要する状態をⅣ度(最重症)として新たに加え、4段階にしています(こちら)。

日本救急医学会によると、これまで実施してきた調査結果や各国の分類を調べた結果、重症と診断された患者のうち深部体温が40度以上で意思疎通が図れないという最重症に該当する患者は他の重症患者より死亡率が高かったそうです。

今回公表された新分類には、熱中症による救急搬送者数が増加するなか、死に至る最重症の熱中症を見極め、救命につなげる狙いがあるとされています。

減塩中の患者への熱中症対策は

なお、高血圧などにより減塩治療を続けている患者の熱中症対応については、こちらで日本高血圧学会のメッセージを紹介していますので、あわせてご覧ください。

熱中症シーズンに入り、メディアは盛んに熱中症予防を呼び掛けている。確かに「不要不急な外出を避けること」は大事だが、「水分や塩分をこまめに摂りましょう」と言われて困っているのは減塩治療中の高血圧患者だ。塩分はどうすべきか。日本高血圧学会の見解を紹介する。

参考資料*¹:日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2015