訪問リハビリの訪問看護指示書記載に新ルール

デスクワーク

リハビリ専門職に対する
訪問看護指示書記載の見直し

「2022(令和4)年度診療報酬改定」の個別改訂項目が、中央社会保険医療協議会(中医協)の答申で明らかになりました。

このなかで、理学療法士や作業療法士などリハビリテーション専門職(以下「リハビリ専門職」)が医療保険の枠組みの中で医療的ニーズの高い患者に提供する訪問リハビリテーション(以下「訪問リハビリ」)について、主治医が発行する訪問看護指示書の記載に新たなルールを設けることが明記されています。

リハビリ専門職が訪問看護の一環として行っている訪問リハビリに関しては、かねてから次の点を問題視する声があがっていました。

  • 医療的ニーズが必ずしも高くない患者(利用者)らに繰り返し訪問リハビリを提供する事例が少なからずある
  • スタッフの多くをリハビリ専門職が占める訪問看護ステーションが増えている

こうした現場の声を受け、前回(2020年度)の診療報酬改定では、リハビリ専門職(理学療法士、作業療法士または言語聴覚士)が週に4日以上の訪問リハビリを行った場合の評価が6,550円から5,550円へ引き下げられた経緯があります。

そして今回の診療報酬改定では、リハビリ専門職による訪問リハビリの提供時間(介入時間)や実施回数(頻度)などを訪問看護指示書に新設される記載欄に書き込むことが、新たにルール化されることになったのです。

訪問リハの提供時間・回数を
訪問看護指示書に明記する

リハビリ専門職が訪問看護の一環として行う訪問リハビリについては、2021(令和3)年度の介護報酬改定において、訪問看護指示書に、訪問リハビリの提供時間(介入時間)や回数(頻度)等の詳細を記載するという新ルールが盛り込まれました。

介護保険制度におけるこの新ルールについて、今回の診療報酬改定ではどう対応すべきかが、中医協の審議において課題の一つとなっていました。

その審議過程では、支払い側と診療側双方の委員から「リハビリ専門職による訪問看護(リハビリ)の実態を明らかにするためにも、診療報酬でも介護報酬同様の見直しをすべきではないか」との声が多くあがったようです。

その結論として、「医療保険制度においても(介護保険制度)同様の対応を行うこととし、訪問看護指示書に当該事項に係る記載欄を設ける」ことになったわけです。

「医療上訪問リハビリが必要」と
主治医が判断することが条件

訪問リハビリは、病状自体は安定期にあるものの、実際の生活の場における日常生活の自立と社会参加を助けるリハビリが退院後も継続して必要であり、かつリハビリのための通院が困難と判断される患者に提供されるサービスです。具体的には、訪問リハビリの対象者の状態、いわゆる医療的ニーズとしては以下が想定されています。

  • 下肢の筋力低下や麻痺、痛みなどにより、起き上がり、立ち上がり、歩行、座位の保持等に支障がある
  • 手指の筋力低下や麻痺、拘縮などにより動きに支障があり、食事や排泄、着替えなどの自立が困難である
  • 言語障害があり、日常会話に支障が出ている
  • 嚥下障害があり、食事摂取時に咳き込みやむせがみられ、誤嚥のリスクがある
  • 各種福祉用具の使用に不慣れで、活用方法の指導が必要である

いずれにしても、患者の生活の質を高めるためには「医療上訪問リハビリが必要」と、主治医が判断することが必要条件です。この判断のもと、その旨を明記した「訪問看護指示書」が発行された場合に限り、サービスが提供されることになります。

要約すれば、主治医が訪問リハビリが必要と判断して訪問看護指示書にその旨明記すれば訪問リハビリはOKということです。

なお、この訪問リハビリには、対象者に作業や余暇活動などを通じて心理的サポートを行うこと、および介護している家族等に対する介助方法や療養環境の設定、福祉用具の活用などについてアドバイスを行うことも含まれます。

訪問リハビリの利用
介護保険か医療保険か

リハビリ専門職が患者宅や入所先の介護施設などを訪問してサービスを提供する訪問リハビリは、介護保険でも医療保険でも利用することができます。

原則として、要介護認定で「要介護1」以上の認定を受けている利用者は介護保険が優先され、その他、65歳未満(40~64歳まで)*や65歳以上でまだ要介護認定を受けていない場合は医療保険による訪問看護の一環として訪問リハビリを利用することになります。

40歳以上65歳未満で16の特定疾患の患者は、特定医療費(指定難病)医療受給者証を持参していていても介護保険で訪問看護(訪問リハビリ)を利用することができる。16の特定疾患とは、①がん(がん末期として医師が医学的知見に基づき判断したものに限る)、②関節リウマチ,③筋萎縮性側索硬化症,④後縦靭帯骨化症,⑤骨折を伴う骨粗鬆症,⑥初老期における認知症,⑦進行性核上性麻痺(大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病),⑧脊髄小脳変性症,⑨脊柱管狭窄症,⑩早老症,⑪多系統萎縮症,⑫糖尿病性神経障害,糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症,⑬脳血管疾患,⑭閉塞性動脈硬化症,⑮慢性閉塞性肺疾患(COPD),⑯両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

「要支援」なら介護予防訪問リハビリ

要介護認定で「要支援1」か「要支援2」の場合は、要介護状態になることを極力防ぐ、あるいは今の状態が悪化するのを防ぐ目的で「介護予防訪問リハビリ」を利用できます。

この場合のリハビリの内容としては、日常生活動作(ADL)の訓練から始まり、家事や外出等のための手段的ADL(LADL)訓練、社会参加のための作業手順の習得、就労環境への適応といった職業関連活動の訓練、福祉用具の使用に関する訓練などがあります。

訪問看護としての訪問リハビリには
利用制限に幅がある

訪問リハビリを継続して利用するうえで必要な主治医による「訪問看護指示書」は、介護保険の枠内であれば3カ月に1回の発行、医療保険の枠組みで提供される場合は1カ月に1回の発行が必要となります。

訪問リハビリの利用回数は、介護保険の場合も医療保険の場合も、1回20分以上が1単位で1週間に6単位を限度、つまり120分までの利用が可能です。

ただし医療保険の場合は例外となるケースがあります。たとえば末期の悪性腫瘍の患者は利用回数に制限がなく、1週間に6単位以上利用することもできます。

このほか、退院から3カ月以内(退院日から起算)に訪問リハビリを利用する場合は、1週間に12単位まで、急性増悪時は6カ月に1回、14日以内限定で1日に4単位(80分)まで受けられるようになっています。

なお、訪問看護(訪問リハビリ)は、基本的には、必要な患者は必要なだけサービスを利用できるように、特例としての優遇策がいくつも設定されています。詳しくはこちらを参考にしてみてください。

医療保険対応の訪問看護には「1日1回、週3日まで」の利用枠がある。患者の病気や状態によっては、この枠を超えて週4日以上、最長で28日利用できる場合がある。その際必要になる「特別訪問看護指示書」や対象となるケースについてまとめた。