放射線職業被爆について知っておきたいこと




放射線リスク

放射線職業被爆について
知識不足を実感している

看護師として東京近郊の総合病院に就職して半年余りが過ぎ、「ようやく1人だけで動けるようになってきた」と、うれしそうに話していた知人のKさん。
ところが先日、「最近気になっていることがある」と、心細げに電話をしてきました。

聞けば、「感染症の職業感染予防については研修もバッチリ受けて基本的なことは理解できているのに、放射線の被爆防護に関しては、大学でも就職した病院でもきちんと教わっていないことに気づいて、心配になってきた」と言うのです。

改めて現場に出てみると、エックス線検査や核医学検査を受ける患者を搬送するなどして、黄色の放射線マークが貼られた「放射線管理区域」に立ち入ることが、思っていた以上に多くなり、放射線の職業被爆ということが気になってきたのだそうです。

この話を聞き、そういえば職業上の放射線防護(occupational radiation protection)について詳しく調べたことはなかったな、と気がつきました。
そこで今回は、K看護師と同じような不安を抱えている看護師さんに、放射線の職業被爆防護について最小限の基礎知識を提供できたらと思い、改めて調べてみました。

放射線「管理区域」に
該当する場所を知っておく

まずはK看護師が、先の電話でポロリと漏らした、
「そもそもあの仰々しい表示のある放射線管理区域にはどのような規定があるのかしら」
といったごく基本的な疑問を解くことから始めることにします。

医療における放射線の安全利用に関しては、「放射線障害防止法」の略称で語られることの多い「放射性同位元素等の規制に関する法律」(2017年11月に「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」から法律名を改正)があります。

また医療法でも、日常の診療に使用する放射線の適正利用と放射線を用いた検査や治療を安全に提供するための規定を定めています。

そこでは、放射線の「一定の線量、濃度または密度を超える恐れのある場所を管理区域とする」として、外部放射線の線量、空気中の放射性同位元素の濃度、放射性同位元素により汚染される部位の放射性同位元素表面密度が、具体的な数値で明示されています。

そのうえで、医療機関では以下のような場所が「管理区域」に該当するとしています。
⑴ 放射線治療室及び関連施設
⑵ 診療用放射線照射装置(γナイフ、コバルト60遠隔照射装置等)使用室
⑶ 診療用高エネルギー放射線発生装置(リニアック等)使用室
⑷ 放射性同位元素装備診療機器(骨塩定量分析装置、Cs137血液照射装置等)使用室
⑸ 診療用放射線同位元素(I123、Sr89、Ga67等)使用室
⑹ 貯蔵施設
⑺ 廃棄施設

管理区域内に立ち入るスタッフは
被爆線量測定器を着用する

さらに医療法は、管理区域内に立ち入る人を「放射線診療従事者」と定義しています。
具体的には、放射線診療に従事、または放射性医薬品を取り扱う医師、歯科医師、診療放射線技師、看護師、准看護師、歯科衛生士、臨床検査技師、薬剤師等がこれに該当します。

この、放射線診療従事者に該当する看護師、准看護師は、一時的に立ち入る場合も含め(例外あり)、全員が胸または腹部に放射線量測定器を装着して、外部被爆による線量を測定、算定し、被爆を線量限度*以下としなければならない、と規定されています。
*線量限度は5年間で100ミリシーベルト(1年間では50ミリシーベルト)だが、例外もある。

ここで言う「外部被爆」とは、エックス線撮影時のように放射線源が身体の外部にあり、体外から被爆する場合を言います。
これに対し、呼吸や飲食により体内に入り込んだ放射線源から被爆する場合は「内部被爆」と呼び、同じ線量を被爆した場合でも放射線の影響は内部被爆の場合がより深刻です。

フィルムバッジは基本1個
不均等被爆が心配なら2個装着

外部被爆に対する放射線量測定器、いわゆる個人モニタとしては、「ポケット線量計」や「フィルムバッジ」がよく使われているようです。

その装着部位ですが、身体に受ける外部放射線の被爆線量が均一であれば、男性、または妊娠する可能性がないと診断された女性は「胸部」に、それ以外の女性は「腹部」に装着します。

一方、身体に受ける被爆線量が均等でない、いわゆる「不均等被爆」の場合は、放射線量測定器を2個用意します。このうち1個は胸部か腹部に装着しますが、残りの1個は体幹部あるいは末端部で放射線に最も多くさらされるリスクのある部位に装着します。

看護師さんは、放射線防護策として、鉛の防護エプロン(プロテクター)を利用することが多いと思いますが、その際、頭部や頸部などの体幹部に不均等被爆のおそれがあるようなら、防護エプロンに覆われていない襟元に、もう1個の測定器を装着することが奨励されています。

また、NICUなどでポータブルエックス線撮影の際に赤ちゃんを手で支えるためにその手への被爆が懸念されるという場合は、手首に残りの測定器を測定しておけば安心です。

以上、放射線診療に従事する看護師さんの安全管理について基本的なことをまとめてみました。
放射線防護の3原則については、回を改めて書いてみたいと思います。