放射線職業被ばくについて知っておきたいこと




放射線リスク

放射線職業被ばくのことを
理解していますか

看護師として東京近郊の総合病院に勤務する知人のKさんから、先日、「最近気になっていることがある」と、心細げな声で電話がかかってきました。

「感染症の職業感染予防については研修も受けてそれなりに理解できているのに、放射線の被ばく防護に関しては、大学でも就職した病院でもきちんと教わっていないことに気づいて、心配になってきた」と言うのです。

改めて振り返ってみると、エックス線検査や核医学検査を受ける患者を搬送するなどして、黄色の放射線マークが貼られた「放射線管理区域」に立ち入ることが、思っていた以上に多く、放射線の被ばくということが改めて気になってきたのだそうです。

この話を聞き、そういえば職業上の放射線防護(occupational radiation protection)についは、私自身も詳しく調べたことはなかったな、と気がつきました。

そこで今回は、K看護師と同じような不安を抱えている看護師さんに、放射線の職業被ばく防護について最小限の基礎知識を提供できたらと思い、改めて調べてみました。

放射線被ばく量の
測定が必要な管理区域

まずはK看護師が、先の電話でポロリと漏らした、
「そもそもあの仰々しい表示のある放射線管理区域にはどのような規定があるのかしら」
といったごく基本的な疑問を解くことから始めることにします。

医療における放射線の安全利用に関しては、「放射線障害防止法」の略称で語られることの多い「放射性同位元素等の規制に関する法律」(2017年11月に「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」から法律名を改正)があります。

また医療法でも、日常の診療に使用する放射線の適正利用と放射線を用いた検査や治療を安全に提供するための規定を定めています。

そこでは、放射線の「一定の線量、濃度または密度を超える恐れのある場所を管理区域とする」とし、医療機関では以下のような場所が「管理区域」に該当するとしています。

  1. 放射線治療室及び関連施設
  2. 診療用放射線照射装置(γナイフ、コバルト60遠隔照射装置等)使用室
  3. 診療用高エネルギー放射線発生装置(リニアック等)使用室
  4. 放射性同位元素装備診療機器(骨塩定量分析装置、Cs137血液照射装置等)使用室
  5. 診療用放射線同位元素(I123、Sr89、Ga67等)使用室
  6. 貯蔵施設
  7. 廃棄施設

管理区域内では
被ばく線量計を装着

さらに医療法は、上記の管理区域内に立ち入る人を「放射線診療従事者」と定義しています。

具体的には、放射線診療に従事、または放射性医薬品を取り扱う医師、歯科医師、診療放射線技師、看護師、准看護師、歯科衛生士、臨床検査技師、薬剤師等が該当します。

この、放射線診療従事者に該当する看護師らは、一時的に立ち入る場合も含め(例外あり)、全員が胸部または腹部に被ばく量を測定するための個人線量計を装着して、外部被ばくによる線量を測定し、被ばくを線量限度*以下としなければならない、と規定されています。

*被ばくの線量限度は、5年間で100ミリシーベルト(1年間では50ミリシーベルト)だが、例外もある

ここで言う「外部被ばく」とは、エックス線撮影時のように放射線源が身体の外部にあり、体外から被ばくする場合を言います。

これに対し、呼吸や飲食により体内に入り込んだ放射線源から被ばくする場合は「内部被ばく」と呼び、同じ線量を被爆した場合でも放射線の影響は内部被ばくの場合がより深刻です。

被ばく線量計は基本1個
不均等被爆なら2個装着

外部被ばくに対する個人線量計、いわゆる個人モニタとしては、「ポケット線量計」や「フィルムバッジ」がよく使われているようです。

その装着部位ですが、身体に受ける外部放射線の被ばく線量が均一であれば、男性、または妊娠する可能性がないと診断された女性は「胸部」に、それ以外の女性は「腹部」に装着します。

一方、身体に受ける被ばくが均等でない「不均等被ばく」の場合は、線量計を2個用意します。

このうち1個は胸部か腹部に装着しますが、残りの1個は体幹部あるいは末端部で放射線に最も多くさらされるリスクのある部位に装着します。

看護師さんは、放射線防護策として、鉛の防護エプロン(プロテクター)を利用することが多いと思いますが、その際、頭部や頸部などの体幹部に不均等被ばくのおそれがあるなら、防護エプロンに覆われていない襟元に、もう1個の線量計を装着することが奨励されています。

また、NICUなどでポータブルエックス線撮影の際に赤ちゃんを手で支えるためにその手への被ばくが懸念される場合は、手首に残りの線量計を測定しておけば安心です。

なお、放射線の人体への影響や放射線防護の考え方などを放射線影響協会がまとめた「放射線の影響がわかる本」は、2020年10月に改訂され、日本放射線看護学会のWebサイトからダウンロードできるようになっています(コチラ)。

医療機関で放射線を扱う場合、法令で義務づけられている線量計の装着状況を産業医科大学の研究グループが、医療従事者1348人を対象に抜き打ちで調査したところ、医師で61%、看護師で23%、全体で34%が装着していなかったことが明らかにされている。IVRやPET、術中CT撮影など、放射線を扱う医療機器が普及し、医療スタッフが被ばくする機会が増えているだけに、放射線被ばくに対する意識改革が求められている。