子宮頸がんワクチン接種とキャッチアップ制度




ワクチン接種

HPVワクチンによる
子宮頸がん予防効果を実証

子宮頸がんの予防について、スウェーデンの研究チームが、子宮頸がんワクチンの接種により、がんの発症リスクが大幅に減ったとする研究結果を発表していることが、いくつかのメディアで一斉に報じられています*¹。

報道によればこの研究は、スウェーデンのカロリンスカ研究所などの研究チームが、10月1日発行の米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表したものです。

子宮頸がんワクチンとしては、子宮頸がんの原因となる「ヒトパピローマウイルス」の感染を防ぐワクチン、通称「HPVワクチン」が使われています。

これまでこのワクチン接種により、HPVの感染を防ぐ効果や子宮頸がんの前段階となる症状(前がん病変)を減らすとするデータは発表されていました。

しかし肝心の、子宮頸がんの発症リスクをどれだけ減らせるのかを明らかにした詳細なデータはありませんでした。それだけに、今回の報告は、HPVワクチンによる子宮頸がんの予防効果を実証した世界初の研究として注目を集めています。

スウェーデンの研究チームが
167万人を17年間追跡調査

本研究チームはスウェーデンの住民登録などを用い、2006年から2017年までの間に10歳から30歳だった女性およそ167万人を対象に、4つの型のウイルスに有効なワクチンの接種と子宮頸がんの発症との関係について追跡調査を行いました。

その結果、ワクチンを接種しなかった女性群(約115万人)で子宮頸がんと診断されたのは10万人当たり94人だったのに対し、ワクチンを接種した女性群(約53万人)で子宮頸がんと診断されたのは10万人当たり47人と半減していました。

17歳未満にワクチン接種で発症リスク9割低下

研究チームはさらに、年齢など条件の違いを調整したうえで、ワクチン接種時期を17歳未満と17~30歳に分けて子宮頸がんの発症リスクを分析しています。

その結果、
⑴ 17歳未満でワクチンを接種した場合は発症リスクが88%低下し、
⑵ 17歳から30歳までにワクチン接種をした場合はリスクが53%低下
したということです。

以上の結果から研究チームは、
「ワクチン接種は子宮頸がんの発症リスクを大幅に減らすことにつながることが示された。同時に、より若い年齢で接種すると効果はより高いことも確認された」
と結論づけています。

国内では12~16歳対象に
公費でHPVワクチン定期接種

わが国におけるHPVワクチンは、2013年4月に定期接種化されています。
ところがワクチン接種後に副反応とみられる体調不良などの訴えが相次いで報告されたため、厚生労働省は定期接種化からわずか2カ月後の6月に、
「ワクチン接種の積極的勧奨を差し控える」と発表しています。

この、差し控え発表後も定期接種は継続されていて、12~16歳(小学校6年生~高校1年生相当)の女子は公費(無料)でHPVワクチンを接種できるようになっています。

しかしながら、ワクチン接種の積極的推奨差し控えの影響は大きく、当初は約70%あった国内のHPVワクチン接種率が、現在では1%未満にまで落ち込んでいます。

わが国では、年間約1万人が子宮頸がんに罹患し、この病気で約3000人が死亡しており、罹患率・死亡者数とも2000年以降、増加はしていないものの横ばい傾向が続いています。

また、子宮頸がんの年代別罹患率は年次推移とともに若年化が進んでいて、最近では20~40歳代前半で特に増加が目立っています。

年代別の死亡数では、39歳以下で年間約200人、44歳以下では年間約400人が子宮頸がんにより死亡しています。

キャッチアップ制度を求める
キャンペーン展開中

こうした現状を受け、現在、国内では、産婦人科医や小児科医ら有志による子宮頸がんワクチン接種のチャンスを求める「HPVワクチン for me」の署名活動、
「HPVワクチン(子宮頸がん等予防)を打つ機会を奪われた若者たちが無料で接種するチャンスをください」が始まっています*²。

日本の予防接種制度について、感染症専門医の岩田健太郎医師(神戸大学医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野・教授)は、最大の問題は「キャッチアップ制度の欠如」にあると指摘し、その制度化を提案しています*³。

キャッチアップ制度とは、設定された予防接種期間を過ぎても、ワクチンを接種できなかった人が後から接種して感染防御に追いつく(キャッチアップできる)という制度で、海外では常識になっているとのことです。

17歳以降の女性にも
公費負担でPHVワクチン接種を

HPVワクチンについて言えば、子宮頸がんは性交渉によるHPV感染が原因で罹患します。
そのためHPVワクチンは性交渉を経験する前の段階、つまりHPVウイルスに感染していない10代前半に接種すると、より予防効果が期待できるとされています。

そこで国としては、公費負担によるPHVワクチン定期接種(3回接種)の対象年齢を12~16歳としているというわけです。

今回報告のあったスウェーデンの研究でも、17歳未満でワクチンを接種したほうが17歳以降に接種した場合より、子宮頸がんの発症リスクは低いことが実証されています。

また、未婚、既婚に関係なく、HPVワクチンを接種したことがなく、すでに性交渉を経験している成人女性であっても、HPVワクチン接種による子宮頸がんの予防効果は、必ずしもゼロではないことも明らかにされています。

実際、定期接種の対象年齢から外れていても自費(1回16,500円前後×3回)でHPVワクチン接種を受ける女性は少なくないと聞きます。

しかし、大学生など20代、30代の女性に自費診療でかかる約5万円は負担が大きすぎ、
「ワクチンを打ちたいが高すぎて難しい」との声が多いのも事実のようです。

そこで、これを公費負担にして、ワクチンを打ちたい人が無料で打てるチャンスを、というのが今回のキャンペーンの主旨です。
賛同される方は署名を!!

なお、厚生労働省は10月9日、HPVワクチンに関するリーフレット(概要版&詳細版)を改訂し、Webサイト(コチラ)にて公表しています。

参考資料*¹:子宮頸がんワクチンで予防、実証 スウェーデンのチーム
参考資料*²:HPVワクチン For me
参考資料*³:定期接種ワクチン:キャッチアップの制度化を