子宮頸がんワクチンとキャッチアップ接種

ワクチン接種
子宮頸がんを予防するHPVワクチンの公費によるキャッチアップ接種は令和6年度(2025年3月)で終了する。しかし、令和4年度のキャッチアップ接種対象者のうち初回接種をした人は全国でわずか6.1%であるとして、厚生労働省は2024年5月22日、対象者に接種を呼び掛けています。「子宮頸がんワクチン」や「キャッチアップ接種」、「キャッチアップ接種対象者」等については、下記をご覧ください。

子宮頸がんワクチンによる
子宮頸がん予防効果を実証

子宮頸がんの予防についてスウェーデンの研究チームが、子宮頸がんワクチンの接種により、がんの発症リスクが大幅に減ったとする研究結果を米医学誌に発表しています

子宮頸がんワクチンとしては、子宮頸がんの原因となる「ヒトパピローマウイルス」の感染を防ぐワクチン、通称「HPVワクチン」が使われています。

このワクチン接種により、HPVの感染を防ぐ効果や子宮頸がんの前段階となる症状(前がん病変)を減らすとするデータは、これまでにも発表されていました。しかし肝心の、子宮頸がんの発症リスクをどれだけ減らせるかを明らかにした詳細なデータはありませんでした。

それだけに、今回の報告は、HPVワクチンによる子宮頸がんの予防効果を実証した世界初の研究として注目を集めています。

子宮頸がんワクチン接種と
がん発症の関係を追跡調査

本研究チームは、スウェーデンの住民登録などを用い、2006年から2017年までの間に10歳から30歳だった女性およそ167万人を対象に、4つの型のウイルスに有効なワクチンの接種と子宮頸がんの発症との関係について追跡調査を行いました。

その結果、ワクチンを接種しなかった女性群(約115万人)で子宮頸がんと診断されたのは10万人当たり94人だったのに対し、ワクチンを接種した女性群(約53万人)で子宮頸がんと診断されたのは10万人当たり47人と半減していました。

17歳未満にワクチン接種で子宮頸がん発症リスク9割低下

研究チームはさらに、年齢など条件の違いを調整したうえで、ワクチン接種時期を17歳未満と17~30歳に分けて子宮頸がんの発症リスクを分析。その結果、「17歳未満でワクチンを接種した場合は発症リスクが88%低下」し、「17歳から30歳までにワクチン接種をした場合はリスクが53%低下」したということです。

以上の結果から研究チームは、「ワクチン接種は子宮頸がんの発症リスクを大幅に減らすことにつながることが示された。同時に、より若い年齢で接種すると効果はより高いことも確認された」と結論づけています。

国内では12~16歳対象に
公費でHPVワクチン定期接種

わが国におけるHPVワクチンは、2013年4月に定期接種化されています。ところがワクチン接種後に副反応とみられる体調不良などの訴えが相次いで報告されたため、厚生労働省は定期接種化からわずか2カ月後に、「ワクチン接種の積極的勧奨を差し控える」と発表。

この、差し控え発表後も定期接種は継続されていて、現在、12~16歳(小学6年~高校1年相当)の女子は公費(無料)でHPVワクチンを接種できるようになっています。

しかしながら、ワクチン接種の積極的推奨差し控えの影響は大きく、当初は約70%あった国内のHPVワクチン接種率が、一時期は1%未満にまで落ち込みました。

年間約3000人が子宮頸がんで死亡

わが国では、年間約1万人が子宮頸がんに罹患し、うち約3000人が死亡していて、罹患率・死亡者数とも2000年以降、増加はしていないものの横ばい傾向が続いています。

また、子宮頸がんの年代別罹患率は年次推移とともに若年化が進んでいて、最近では20~40歳代前半で特に増加が目立っています。年代別の死亡数では、39歳以下で年間約200人、44歳以下では年間約400人が子宮頸がんにより死亡しています。

国立がん研究センターなどのチームは2021年1月7日、子宮頸がんの母親が出産した際に、羊水に混ざったがん細胞を子どもが吸い込み、肺がんを発症した例を2例確認したと報告。「生まれてくる子のためにも母親の子宮頸がん予防は重要」と警告しています。

キャッチアップ接種を求め
キャンペーンを展開

こうした現状を受け、国内では、産婦人科医や小児科医ら有志による子宮頸がんワクチン接種のチャンスを求める「HPVワクチン for me」の署名活動、「HPVワクチンを打つ機会を奪われた若者たちが無料で接種するチャンスをください」が展開されました。日本に欠けている、いわゆるキャッチアップ接種をスタートさせようというわけです。

キャッチアップ接種とは、設定された予防接種期間を過ぎても、ワクチンを接種できなかった人が後から接種して感染防御に追いつく(キャッチアップできる)という制度、海外では常識になっているとのことです。

17歳以降の女性にも
公費負担でPHVワクチン接種を

HPVワクチンについて言えば、子宮頸がんは性交渉によるHPV感染が原因で罹患します。そのためHPVワクチンは性交渉を経験する前の段階、つまりHPVウイルスに感染していない10代前半に接種すると、より予防効果が期待できるとされています。

そこで国としては、公費負担によるPHVワクチン定期接種(3回接種)の対象年齢を12~16歳としているわけです。

今回報告のあったスウェーデンの研究でも、17歳未満でワクチンを接種したほうが17歳以降に接種した場合より、子宮頸がんの発症リスクは低いことが実証されています。

また、未婚、既婚に関係なく、HPVワクチンを接種したことがなく、すでに性交渉を経験している成人女性であっても、HPVワクチン接種による子宮頸がんの予防効果は、必ずしもゼロではないことも明らかにされています。

実際、定期接種の対象年齢から外れていても自費(1回16,500円前後×3回)でHPVワクチン接種を受ける女性は少なくないと聞きます。しかし、大学生など20代、30代の女性に自費診療でかかる約5万円は負担が大きすぎ、「ワクチンを打ちたいが高すぎて難しい」との声が多いのも事実のようです。

そこで、これを公費負担にして、ワクチンを打ちたい人が無料で打てるチャンスを、というのがキャンペーンの主旨でした。

2022年4月から無料での
子宮頸がんワクチン救済接種

こうした動きを受け、厚労省は2021年11月15日、子宮頸がんワクチン接種の機会を逃した女性を対象にキャッチアップ接種を無料で行う方針を固め、12月23日には、接種機会を逃した女性の無料での救済接種(いわゆるキャッチアップ接種)を2022年4月から実施する方針を公表。1月27日には、その救済措置の詳細を発表しています。

それによれば、対象者は平成9年度生まれ~平成18年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2007年4月1日)の女性、約500万人で、キャッチアップの接種期間は令和7(2025)年3月まで。問い合わせは、住民票のある市区町村窓口へ。

ワクチンは半年間に3回接種する必要がありますから、初回接種を2024年9月末までに受ける必要があります。1回接種した後、長期にわたり接種を中断していた人は、1回目から打ち直すのではなく、2回目と3回目を無料(公費)で打てる、としています。詳しくは、厚生労働省のホームページ*³をご覧ください。

参考資料*¹:子宮頸がんワクチンで予防、実証 スウェーデンのチーム

参考資料*²:HPVワクチン For me

参考資料*³:厚生労働省「HPVワクチンの接種を逃した方へ