治りにくい褥瘡に亜鉛不足が関係!?




牡蠣

必須ミネラルの亜鉛の不足が
褥瘡の治癒を遅らせている?

難治性、つまり治りにくい褥瘡に低栄養が関係していることはかねてより指摘されていたことです。
この低栄養状態について、「亜鉛不足」が大きく影響している可能性のあることが認められたとする研究成果が発表されています。

亜鉛(Zn)は、カルシウムやマグネシウム、ナトリウムなどと同じ必須ミネラルの1つであることはご承知でしょう。

この亜鉛不足が、高齢者に多い味覚障害の原因だとする指摘のあることは知っていました。
しかし、褥瘡の治癒過程にもマイナスの影響をもたらしているとは……。

各種アプローチを試みてはみるもののなかなか快方に向かわない褥瘡に、日々悩まされている医療・ケアスタッフは決して少なくないと聞きます。

そこで今日は、とても興味深いこの研究成果と、亜鉛という、普段あまり気にしてこなかった必須ミネラルについて、書いてみたいと思います。

亜鉛欠乏マウスにできた褥瘡は
キズが大きく、回復も遅れがち

亜鉛不足により褥瘡が治りにくくなることが、マウスを使った実験で科学的に証明されたとする研究成果を発表したのは、群馬大学大学院の茂木清一郎准教授(医学系研究科臨床医学領域皮膚科学講座)らが主導する山梨大学、金沢医科大学との共同研究グループです。

同研究グループは、亜鉛欠乏食または亜鉛を含む普通食を2週間与えたマウスを用いて、この研究を行っています。

マグネットで皮膚を圧迫して褥瘡モデルを作り、圧迫部位にできた褥瘡の広がり方(大きさ)とその治癒過程を比較しているのです。

その結果、普通食を食べた正常マウスと比較して、亜鉛欠乏食を食べたマウスでは、
⑴ 皮膚の圧迫によりできた褥瘡のキズ(皮膚潰瘍)が大きくなりやすく、
⑵ 褥瘡の回復も遅れがちであることが確認された、というのです。

亜鉛不足による低酸素状態で
増えた活性酸素が褥瘡を難治化

加えて同研究グループは、褥瘡が広がりやすく、なおかつ治りにくくなるメカニズムを探っていく過程で、亜鉛欠乏のマウスにできた褥瘡部位は、正常マウスにできた褥瘡部位と比較して、血液量が少なくなっていることも確認しています。

このことから、血液中に亜鉛が不足して起こる低酸素状態が活性酸素(通常の状態よりも活性化された酸素)を増やし、その過剰に増えた活性酸素が褥瘡の周囲組織を傷害することにより、傷が広がったり治りにくくなったりすると考えられる、と結論づけています。

これを裏づけるように、同研究グループは、亜鉛欠乏マウスに経口的に亜鉛を補充して得られる褥瘡の回復効果を調べた実験で、褥瘡の潰瘍部分の広がりと治りにくさは、亜鉛の経口補充により改善することが確認できたことも併せ報告しています。

通常の食生活を続けていれば
亜鉛不足に陥る心配はないが

そもそも亜鉛という必須ミネラルは、私たちの体内のいたるところで休みなく繰り返されている細胞の新陳代謝に深くかかわっています。

褥瘡のできる皮膚について言えば、皮膚組織を構成している細胞一つひとつの新陳代謝に深くかかわっているわけです。

この皮膚細胞は、体内にある各種細胞のなかでもとりわけ新陳代謝が活発です。
約1カ月ごとに古い細胞から新しい細胞へと入れ替わっているのですが、この新しい細胞を形成するうえで、亜鉛が重要な働きを果たしているのです。

通常の食生活を続けてさえいれば、亜鉛不足に陥る心配はないだろうと言われています。

ところが、食事からの亜鉛の摂取量が不足したり、せっかくの亜鉛も胃腸機能の低下で十分消化吸収されなかったり、あるいは服用している薬などのために亜鉛の吸収が阻害されたりすると、からだが亜鉛不足に陥り、それが即、褥瘡の悪化や難治化へとつながりかねないようです。

血清亜鉛値を測定し低亜鉛なら
亜鉛を経口補充するかかわりを

同研究グループはその研究成果から、高齢者のような低栄養状態に陥りやすく褥瘡を起こすリスクの高い患者においては、
⑴ 積極的に血清亜鉛値を測定し、
⑵ 低亜鉛であれば亜鉛を経口補充することにより、
褥瘡の発生予防にもつながると考えられるとしています。

亜鉛不足の状態に陥りやすい原因として高齢者でよく指摘されるのは、歳を重ねるにつれて食が細くなり、食事の摂取量自体が目に見えて減少してくることです。

■調理済み食品には亜鉛の吸収を妨げる食品添加物が
加えて、特に高齢者二人だけの家庭や独居者では、手間のかからない出来合いの総菜や弁当、菓子パンといったファーストフード(「ファストフード」とも言う)で簡単に食事を済ませてしまうことが多くなりがちです。

手軽さが魅力でつい利用したくなるハムやソーセージ類、ちくわやかまぼこのような魚肉の練り製品、カップ麺に代表されるインスタント食品やレトルト食品、スナック菓子類などの加工食品もファーストフードの範疇に入ります。

これらの調理済み食品には、亜鉛の吸収を妨げる食品添加物が、微量ながら必ず含まれています。時々摂取する分にはまず問題はないのですが、これに頼りすぎて毎食のように食べ続けていると、やがて亜鉛不足に陥ります。

■降圧薬などの「亜鉛アキレート作用」に要注意
薬について言えば、高齢者の多くが処方を受けている降圧薬のほか、多くはめまいや意欲の低下といった脳梗塞後遺症の症状軽減を目的に処方される脳循環改善薬やがん治療に使われる抗腫瘍薬、あるいは抗うつ薬などのなかには、「亜鉛キレート作用」といって、亜鉛の吸収を抑制する作用を持つ薬もあります。

このタイプの薬の服用を続けていると、通常以上の亜鉛が尿中に排泄されてしまうため、亜鉛不足から低亜鉛の状態に陥りがちです。

該当する薬が処方されている患者については、主治医に褥瘡の回復が遅れていることなどを伝え、薬の変更を検討するなどの対応をとってもらうことも必要でしょう。

■牡蠣やうなぎ、レバー、ナッツ類で亜鉛不足を防ぐ
亜鉛はあらゆる食材に含まれているのですが、身近な食品で含有量が多いもののトップにあげられるのは牡蠣です。
普通サイズのものを3、4個摂れば、1日の接取推奨量を補うことができます。手軽さで言えば、牡蠣の燻製油漬け缶詰もOKです。
その他もうなぎのかば焼き、レバー類なども含有量の多さでは上位にあげられます。

また、カシューナッツやアーモンドなどにも亜鉛が多く含まれています。
おやつ代わりにもなりますが、高齢者は歯がよほど健康でないとそのままではなかなか摂る気にならないでしょうから、 クラッシュミルサー 等を使って粉砕し、ふりかけとして摂る方法などもすすめてみてはいかがでしょうか。

紹介した研究については、群馬大学のPRESS RELEASE 2019年7月29日「治りづらい床ずれのメカニズムを解明」(コチラ)を参考資料としています。

なお、褥瘡についてはコチラの関連記事も読んでみてください。
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→ 「褥瘡に関する危険因子の評価」が身近な課題に