看護師の接遇マナーで最近考えること

接遇への思いを記す

どの職場も新人を迎えるシーズンとなりました。

医療現場も例外ではなく、新人研修等の準備で日々忙しくしておられる管理職クラスの看護師さんも少なくないことでしょう。

そんな折も折、新人看護師の接遇マナー研修について、友人から少し気になる話を聞きましたので、今日はそのことを書いてみたいと思います。

看護師に求められる接遇マナーは
接客マナーだけではない

その友人Tさんは、国際線のキャビンアテンダント、いわゆる「CA」を5年余り経験したのち、後輩CAのマナー教育に10年間携わってきた女性です。

その経験を買われて、数年前からいくつかの医療機関の看護部に、新人看護師研修の講師として招かれるようになったそうです。

もちろんテーマは「看護師としての接遇マナー」です。

講師の要請を初めて受けたときTさんは、「看護師さんとは、風邪をこじらせて外来を受診したときや、年老いた親が入院したときの出会い程度しかないから、看護師さんとしての接遇マナーなんて私には語る資格はない」と、いったんはお断りしたといいます。

これに、「是非講師をお願いしたい」と最初に要請してきた看護部長さんは、概ねこんなふうな話をして彼女を説得したそうです。

「キャビンアテンダントの方も、上空を飛行中の機内という慣れない環境に身を置いて落ち着かない気持ちでいる乗客を相手に、安心・安全を守るためにいろいろな気配りをされているわけでしょう? おそらくそこには、接客マナーを超える、おもてなしをしようとする気持ちを支える何かがあるはずだから、そのへんの話をしていただきたいのです」

この話に関連して、「医療現場における接遇は、患者の安心や安全を守るために医療者が身に着けるべきもの」として「医療接遇」の大切さを説く本が、2020年11月に刊行されています。詳しくはこちらを。
新型コロナの感染拡大により、新規感染者も重症者も連日最多を更新し、医療機関はコロナ対応以外の医療にも支障が出かねない状況にあると聞く。医療従事者の心身のつらさはもとより、患者もまた危機的状況にあるなかで、彼らの安心・安全を守る医療接遇に関する新刊を紹介する。

接遇マナー以前に、
患者に向き合う基本姿勢が大事

あれこれ説得され、そういう話だったら自分にもできるかもしれないと引き受けたTさん。

とはいえ、「実は、講師として紹介されてたくさんの看護師さんの前に初めて立ったときから、なんともいえない違和感があった」といいます。

その違和感とは、会場の新人看護師さんたちの反応が予想外のものだったことでした。

「どうも集まっている看護師さんの多くが私に期待しているのは、同じサービス業の経験者が語る接客マナーのようなんです。挨拶やお辞儀の仕方とか、言葉づかい、身だしなみ、特にお化粧ではどんなことに気をつけたらいいのか、とかですね」

研修後に書かれた感想文を見せてもらったが、そこにも、「CAのOBなのだから身だしなみの話をもっとしてほしかった」とか、「機内でも多いだろうからクレーム対応について話してほしかった」といった類の記述が目についたそうです。

接遇マナーの5原則と言われる「身だしなみ」「あいさつ」「表情」「言葉づかい」「態度(聴く姿勢)」について聞きたかった、ということでしょうが……。

「私としては、そういったハウツー的なことは話すつもりがなかった。ハウツーのかたちでマナーを身につける前に、プロとして患者さんに向き合う基本姿勢みたいなものを私の話からくみ取り、看護師である自分に置き換えて考えてみてほしいと思っていたのですが……。力不足で、うまく伝えられなかったようです」

結局Tさんは、今年もいくつかあった講師の要請をすべて辞退したそうです。

接遇マナーを超える笑顔にも
TPOが問われる難しさが

Tさんにとってはあまりいい経験ではなかったようですが、それでも「やらせていただいてよかったと思うことも、もちろんあった」――。

それは、「看護師さんの笑顔は、何物にも代えがたい特効薬でしょうから、患者さんとは笑い合えるような関係になってほしい」と話したとき、みんなが大きくうなずくのを見て、「やっと気持ちが通じ合えた」と実感したようです。

看護師さんの笑顔の効用ユーモアセンスの大切さについては、私もこれまで何度か記事にしてきました。

「笑い」に免疫力を高める効果が期待できることは欧米での実験で確認されている。日本でも初めて、その実証研究がお笑い芸人の協力を得て行われ、その効用が確認されている。研究対象はがん患者だったが、認知症をはじめとする他の患者にも応用できそうだ。
ジャーナリストのノーマン・カズンズ氏が、自らの膠原病を「笑いばして」克服した体験を公表して以来、笑いと治癒力の関係が注目されている。「自律神経のバランスが整う」「NK細胞が活性化する」結果とされる。看護師にユーモアセンス求められる所以だ。

表情筋を鍛えて安らぎを与える笑顔づくりを、との思いから、表情筋のトレーニング器 MTG フェイシャルフィットネス PAO(パオ)の紹介もしてきました。

それは、病院や在宅ケアの現場を取材させていただくなかで、看護師のみなさんの笑顔が、またトンチの効いた受け答えが、病に臥せっている患者や家族のこころを救っている現実を、幾度となく目撃してきたからです。

一方で、その笑顔やユーモアセンスも、ときに患者サイドの方がたに不快な思いをさせてしまう場合があることを教えられる場面にも、何度か遭遇してきました。

高齢のご夫妻が、看護師さんの声のトーンに不快な思いをされたという話を先に紹介しましたが、このことも接遇マナーの一環でしょう。

自分の話し声が相手にどう聞こえているかは、あまり気にしていない。しかしとかく女性は、相手にきちんと伝えようと思えば思うほどトーンが高くなりがちで、高齢者には耳障りな音にしか聞こえていないことが多い。腹式呼吸トレーニングで落ち着いた低い声を。

Tさんが、看護師さんには接遇マナーということをハウツー的にとらえないでほしいと話す根拠は、おそらくこの辺にあるのだろうと思います。

看護師さんの一部が「いつもマスクをしている」ことに「マナー違反では?」の声があがっていますが、この点についてはこちらの記事を読んでみてください。なお、コロナ禍の今はマスクは外せませんが……。
→ 看護師の「いつもマスク」はマナー違反?

接遇の基本におくべきは
「相手の意に沿おうとする気持ち」

早い話が、笑顔を例にいえば、患者や家族の前ではいつも笑顔でいればいいというものではない、ということなんだろうと思います。

大事なことは、その時々の患者や家族の気持ちに沿えるかどうかであり、看護師さんとしての接遇マナーの基本はそこにあるのではないか、と――。

ハウツーとして身につけたマナーは、それだけでは、ときにその相手の気持ちに近づこうとするうえで妨げになってしまうのではないだろうか、逆にいえば、患者の意向を尊重しようとする気持ちさえあれば、自ずと荒い言葉を使うこともないだろうし、礼儀をわきまえることも忘れないのではないだろうか――。

この点が、Tさんが接遇マナーの基本として伝えたかったことだろうと、私なりに解釈しています。看護師のあなたはいかがお考えでしょうか。

なお、新人の看護師さんに接遇マナーを伝える立場にある看護管理者が事前の準備として目を通すと話してくれた本としては、『医事・看護従事者のための接遇/対話力向上の技術』(経営書院)が多かったように思います。参考までに紹介させていただきました。