看護師の接遇マナーで最近考えていること




接遇への思いを記す

どの職場も新人を迎えるシーズンとなりました。
医療現場も例外ではなく、新人研修等の準備で日々忙しくしておられる管理職クラスの看護師さんも少なくないことでしょう。

そんな折も折、新人看護師の接遇マナー研修について、ちょっと気になる話を聞きましたので、今日はそのことを書いてみたいと思います。

看護師に求められる接遇マナーは
接客マナーだけではない

その友人Tさんは、国際線のキャビンアテンダント、いわゆる「CA」を5年余り経験したのち、後輩CAのマナー教育に10年間携わってきた女性です。

その経験を買われて、数年前からいくつかの医療機関の看護部に、新人看護師研修の講師として招かれるようになったそうです。
もちろんテーマは「看護師としての接遇マナー」です。

講師の要請を初めて受けたときTさんは、
「看護師さんとは、風邪をこじらせて外来を受診したときや、年老いた親が入院して見舞いに訪れたときの出会い程度しかないから、看護師さんとしての接遇マナーなんて私には語る資格はない」と、いったんはお断りしたといいます。

これに、「是非講師をお願いしたい」と最初に要請してきた看護部長さんは、概ねこんなふうな話をして彼女を説得したそうです。

「キャビンアテンダントの方も、上空を飛行中の機内という慣れない環境に身を置いて、なんとなく落ち着かない気持ちでいる乗客一人ひとりの安心・安全を守るためにいろいろな気配りをされているわけでしょう? おそらくそこには、接客マナーを超える、おもてなしをしようとする気持ちを支える何かがあるはずだから、そのへんの話をしていただきたいのです」

接遇マナー以前に、
患者に向き合う基本姿勢が大事

あれこれ説得され、そういう話だったら自分にもできるかもしれないと引き受けたTさん。
とはいえ、「実は、講師として紹介されて初めてたくさんの看護師さんの前に立ったときから、なんともいえない違和感があった」といいます。

その違和感とは、会場の新人看護師さんたちの反応が予想外のものだったことでした。
「どうもそこに集まっている看護師さんの多くが私に期待しているのは、同じサービス業の経験者が語る接客マナーのようなんです。挨拶やお辞儀の仕方とか、言葉づかい、身だしなみ、特にお化粧ではどんなことに気をつけたらいいのか、とかですね」

研修後に書かれた感想文を見せてもらったが、そこにも、
「CAのOBなのだから身だしなみの話をもっとしてほしかった」とか、
「機内でも多いだろうからクレーム対応について話してほしかった」
といった類の記述が目についたそうです。

「私としては、そういったハウツー的なことは話すつもりがなかった。ハウツーのかたちでマナーを身につける前に、プロとして患者さんに向き合う基本姿勢みたいなものを私の話からくみ取り、看護師である自分に置き換えて考えてみてほしいと思っていたのですが……。力不足で、うまく伝えられなかったようです」
結局Tさんは、今年もいくつかあった講師の要請をすべて辞退したそうです。

接遇マナーを超える笑顔にも
TPOが問われる難しさが

Tさんにとってはあまりいい経験ではなかったようですが、それでも「やらせていただいてよかったと思うことも、もちろんあった」――。

それは、「看護師さんの笑顔は、何物にも代えがたい特効薬でしょうから、患者さんとは笑い合えるような関係になってほしい」と話したとき、みんなが大きくうなずくのを見て、「やっと気持ちが通じ合えた」と実感したようです。

看護師さんの笑顔の効用ユーモアセンスの大切さについては、私もこれまで何度か記事にしてきました。表情筋を鍛えて安らぎを与える笑顔づくりを、との思いから、表情筋のトレーニング器 MTG フェイシャルフィットネス PAO(パオ)の紹介もしてきました。

それは、病院や在宅ケアの現場を取材させていただくなかで、看護師のみなさんの笑顔が、またトンチの効いた受け答えが、病に臥せっている患者や家族のこころを救っている現実を、幾度となく目撃してきたからです。

一方で、その笑顔やユーモアセンスも、ときに患者サイドの方がたに不快な思いをさせてしまう場合があることを教えられる場面にも、何度か遭遇してきました。
高齢のご夫妻が、看護師さんの声のトーンに不快な思いをされたという話を先に紹介しましたが、このことも接遇マナーの一環でしょう。

Tさんが、看護師さんには接遇マナーということをハウツー的にとらえないでほしいと話す根拠は、おそらくこの辺にあるのだろうと思います。

最近の話としては、看護師さんの一部が「いつもマスクをしている」ことに「マナー違反では?」の声があがっていますが、この点についてはこちらの記事を読んでみてください。

感染防止の観点からマスクの着用が求められることの多い看護師だが、「勤務中とはいえ、今のこの状況でマスクが必要だろうか」と疑問に思うときも少なからずある。患者や家族にもその疑問はあるようで、看護師の「マスク依存」を懸念する声もあることをお伝えしたい。

接遇の基本におくべきは
「相手の意に沿おうとする気持ち」

早い話が、笑顔を例にいえば、患者や家族の前ではいつも笑顔でいればいいというものではない、ということなんだろうと思います。

大事なことは、その時々の患者や家族の気持ちに沿えるかどうかであり、看護師さんとしての接遇マナーの基本はそこにあるのではないか、と――。

ハウツーとして身につけたマナーは、それだけでは、ときにその相手の気持ちに近づこうとするうえで妨げになってしまうのではないだろうか、逆にいえば、患者の意向を尊重しようとする気持ちさえあれば、自ずと荒い言葉を使うこともないだろうし、礼儀をわきまえることも忘れないのではないだろうか――。

この点が、Tさんが接遇マナーの基本として伝えたかったことだろうと、私なりに解釈しています。看護師のあなたはいかがお考えでしょうか。

なお、看護師としての接遇マナーの基本となる患者のその時々の気持ちを理解するかかわりについては、リエゾン精神看護専門看護師の平井元子さんが近著『リエゾン―身体(からだ)とこころをつなぐかかわり 』(仲村書林)で、さまざまな角度から詳しく書いておられます。

また、新人の看護師さんに接遇マナーを伝える立場にある看護管理者が事前の準備として目を通すと話してくれた本としては、『医事・看護従事者のための接遇/対話力向上の技術』(経営書院)が多かったように思います。参考までに紹介させていただきました。