看護師も注目を!「笑いの効用」実証研究へ




笑いの効用と看護

がん医療における「笑いの効用」
実証に向けた研究をスタート

「笑いががん医療に効果があるかどうか実証研究を行う」――。
大阪府は2017年1月25日に開いた記者会見で、こんな発表をしました。

現在大阪市東成区にある「大阪府立成人病センター」は、今年(2017年)3月に「大阪国際がんセンター」と名称を変更するのに伴い市内の中央区に新築移転し、3月27日から外来診療を新たにスタートすることが決まっています。

この新たな船出を機に、一時的ではなく「継続的な笑いが、がん患者に及ぼす影響」を調べる研究に、日本で初めて取り組むというのです。

この研究プロジェクトについて松井一郎大阪府知事は、会見の席で「笑いに免疫力を高める効果があることを実証したい」と公言しています。

多くの人気お笑い芸人を世に送り出している地元のトップの発言に、「なるほど!」と、妙に納得させられたものです。

自然治癒力としての「笑い」に
看護師はもっと関心を!!

ところで、先に看護師さんのストレス発散に「落語」をおすすめする記事を書きました。
落語だけではありません。今や世界的な人気者となったピコ太郎さんのPPAPをはじめとして、漫才やコントなども大流行で、今や大変なお笑いブームです。

そんななかにあって、笑いを看護師さん自らのメンタルケアに使わない手はないだろうと思ってまとめた記事でした。

笑い飛ばして難病を克服したノーマン・カズンズ氏

この「笑い」については、1960年代の前半という早い時期に、アメリカ人のジャーナリストで作家のノーマン・カズンズ氏が、不治に近い難病を「笑い飛ばして」克服したという自らの闘病体験を一冊の本『笑いと治癒力 (岩波現代文庫―社会)』にまとめ、治癒力としての「笑いの効用」を広くアピールしています。

このことについても、 コチラの記事で紹介していますが、読んでいただけましたでしょうか。
→ 看護師もユーモアセンスを磨こう

思えば、かのナイチンゲール女史は「自然治癒力を生かす看護」を提唱しています。

よく考えてみると、ここでいわれている「自然治癒力」は、もともと私たちのからだに備わっている免疫機能が完全に働いてこそ、その力を存分に発揮できるはずのものです。

だとしたら、看護師のあなたには、その免疫力を高める効果が期待されている「笑い」にもっと関心を持っていただきたい――。

その一歩として、これから始まる大阪国際がんセンターで行われる研究の推移を注視していこうではありませんか。

外来がん患者の免疫活性化を
漫才や落語鑑賞前後にチェック

そこで、大坂府の研究プロジェクトですが、実施期間は5月中旬からの約4か月間――。

外来通院治療中のがん患者を中心に、がんの種類や症状を考慮して選んだ数十人に協力を要請し、同意が得られた患者が被験者となります。

被験者には、センターの1階にあるホールで月に2回程度、漫才や落語を楽しんでもらい、その前後の血液と唾液を採取して検査を行います。

その結果としての、ストレスや免疫細胞の活性化状況にみられる変化から、笑いの効用の有無や、より高い効用が得られる笑いなどについて明らかにしていく意向のようです。

「継続した笑い」の効用が実証される?

なお、プロジェクトを成功裏に修めるには被験者となるがん患者らに気持ちよく笑ってもらうことが前提となります。

そこで、鑑賞対象となる漫才や落語の演者としては、吉本興業や松竹芸能、落語家・桂米朝(故人)ゆかりの米朝事務所から著名な芸人が登場する予定となっています。

研究結果は2017年度中にまとめられる予定です。
先述のように笑いと免疫力の関係を示唆した研究は国の内外ですでに報告されています。

しかし、約4か月間という長期にわたり継続的にその効用を実証する報告はまだなく、どのような結果が報告されるのか、期待をもって待たれるところです。

追記:笑いによる免疫力アップを確認

上記研究結果の中間報告として、漫才や落語による「笑い」により、がん患者の免疫力向上や緊張や疲労と逝った心身の状態も改善したことが、2018年5月29日に公表されています。
被験者のなかには、免疫細胞の一つである「NK細胞(ナチュラルキラー細胞)」の血中濃度が、実験前の約1.3倍に増えた人もいたとのこと。
大阪国際がんセンターは、詳細については、改めてさらなる分析を行い、その結果と共に論文にまとめて発表する、としています。

笑いの効用実証結果を
認知症看護にも活用を

今回の研究はがん患者を対象にしたものです。

しかし「笑いの効用」については、このところ急速に増加してきている認知症患者の看護にも、別のかたちで大いに役立つことが、すでに研究により実証されています。

これは、認知症介護研究・研修大府センターと国立長寿医療研究センターの研究グループが報告しているものです。

認知症により認知機能が低下して、たとえば自分の子どもの顔さえもはっきり認識できないような状態にあっても、相手の表情や視線の動きから喜怒哀楽を読みとる能力は低下しにくく、最後まで残存するというのです。

この研究結果は、認知症看護において今や最大の課題の一つとも言える「認知症患者の意思決定支援」に、使えるヒントではないでしょうか。

できる限り笑顔でいることを心がけて

これを受けてでしょう。
認知症看護認定看護師の上野優美さんは、近著『急性期にある認知症高齢者―安心・安全を届けるかかわり  』(仲村書林)のなかで、不穏な状態にある認知症高齢者への対応において、残存している知的機能を積極的に活用しようと、
「できる限り笑顔でいることを心がけている」と記しています。

こんなふうに考えてみると、「笑いの効用」はがん看護や認知症看護のみならず、さまざまな看護場面でいい働きをしてくれるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

笑いの「自己効力感」への効用を実証する研究に着手

なお、笑いの効用について大阪国際がんセンターの研究チームは、実証研究の第二弾として、「自己効力感」と「生活の質」への効用を実証する研究な着手しています。

慢性疾患患者のセルフケア支援には大いに関係してくる研究だと思うのですが、関心のある方はこちらの記事を参考にしてみてください。
→ 「笑い」のチカラで自己効力感を高める看護