看護コンサルテーションで「やりがい」に気づく




やりがいに気づく

幼い頃から憧れだった看護師にやっとなれたのに、
「処置や検査に追われるばかりで、患者さんにきちんとかかわれていない」
「やりがいを感じられない仕事だ」
などの理由から、「石の上にも3年」も待たずにキャリアにピリオドを打ってしまう看護師さんが、依然として後を絶たないようです。

実際の数字でいえば、日本看護協会の調査は、正規雇用の病院看護職の離職率は10.9%で、過去5年ほど横ばい状態であると報告しています(2018年病院看護実態調査)。

確かにストレスも多く、「やった―!」とすぐには実感しにくい仕事でしょう。
でも、あなたが看護の現場で日々やっておられる一つひとつのことは、病に臥せっている患者や家族にとってとても意味のあることなのだと再確認していただきたい――。

そんな思いから今回は、離職を思いとどまって6年になるという看護師、Mさんの了解を得て、その思いとどまる契機となった出来事を紹介してみたいと思います。

看護コンサルテーションは
ただの「悩み相談」ではない

Mさんの看護師としての最初の職場は、産科と婦人科の患者が混在する病棟でした。
新しい生命が誕生する感動もありましたが、がん患者があまりに多いことに驚いたそうです。

化学療法や放射線治療といったがん治療にかかわる大変さもありました。
それ以上に戸惑うことの多かったのが、女性として子宮や卵巣を失うことへの抵抗感から精神的に落ち込む患者やがんの末期にある患者への対応でした。

リエゾン精神看護専門看護師の存在

患者の気持ちを汲んでケアできる看護師になるのが、Mさんの夢でした。
それなのに現実は「患者さんがこんなにつらい状態でいるのに、自分は何もしてあげられない」と感じることの連続――。
「自分は看護師に向いていない」と、職場を代えることや看護師からの転職さえ考えるようになったのだそうです。

「あのときは、ちょっとうつになっていたのかもしれません」
彼女はそう振り返ります。

ちょうどそんなとき、やはり看護師としての自分に限界を感じているという同僚から、院内のリエゾン精神看護専門看護師に相談してみようと、話を持ちかけられたのでした。
「いまさら相談しても……」と思ったものの、同僚に付き合ってみることにしました。

なんと、予想に反し結果は吉と出ました。
Mさんたちが受けることができたのは「看護コンサルテーション」と呼ばれるもので、単なる悩み相談ではなかったのです。

「看護コンサルテーション」と
「相談」はどう違う?

ところで、通常の「相談」と呼ばれているものと「看護コンサルテーション」には、どのような違いがあるのでしょうか。

この問いに、精神看護専門看護師の平井元子さんは、近著『リエゾン―身体(からだ)とこころをつなぐかかわり  』(仲村書林)のなかで、コンサルテーションが「専門家同士の相談」であることに大きな意味があるのだと説明しています。

一般に行われている、たとえば患者から医療スタッフへの相談といった場面では、とかくQ&Aのスタイルになりがちです。
そこでの情報の流れは一方向で、専門的な医療情報が医療スタッフから患者へと一方的に提供されるといった構図になります。

看護コンサルテーションのプロセス

これに対してコンサルテーション、たとえば「看護コンサルテーション」では、相談する側もそれを受ける側も看護の専門家であることに変わりはありません。
ですから専門家同士の相談なのです。

ただMさんと同僚のケースでいえば、3者ともにプロの看護師ではあるものの、こと身体疾患患者のこころの働きについては専門的知識をもたない2人の看護師が、その知識を持つリエゾン精神看護専門看護師に相談をするというかたちになります。

したがって「患者のこころのケア「」ということに限っていえば、専門家とそうでない者という関係になります。

とはいえ、それはあくまでも看護の流れのなかでの話ですから、そこでのやりとりは一方的なものではなく、相互に情報を提供し合いながら、戸惑ったりしたときの看護を振り返りつつ一緒に問題を解いていくことになります。

このプロセスにおいて、リエゾン精神看護専門看護師の視点が入ることによりはじめて見えてくるものがあるはずです。

Mさんの場合のそれは、患者に「何もしてあげられない」ということではなく、「できていることが確かにあった」ということです。

このことが見えてきたことにより、看護のやりがいといえるものにに気づくことができ、Mさんにとっては看護師としての自信につながっていったというわけです。

看護コンサルテーションは
各分野の専門・認定看護師から

この看護コンサルテーションにより、Mさんは、自分が看護師として患者や家族に日々行っていることの意味づけができるようになったそうです。

そして、自分のかかわりが患者や家族がこころの安らぎを得ることに多少なりともつながっているのだと気づいたとき、気持ちがずっと楽になり、
「もう少し看護師を続けてみよう」と思えたのだと話してくれました。

Mさんの場合は、患者・家族の精神面からの理解に戸惑っていたことから、リエゾン精神看護専門看護師によるコンサルテーションが効果的に働きました。

しかし看護コンサルテーションは、たとえばがん看護に関する悩みであればがん看護専門看護師に、家族へのかかわりに戸惑ったときは家族支援専門看護師、糖尿病患者の血糖コントロールに難渋するときは糖尿病看護認定看護師に……、といったように、該当する分野の専門看護師や認定看護師から受けることができます。

自分のケアに自信がもてなくなったら、転職を考える前に、まずはその道のスペシャリストたちを活用して、コンサルテーションというかたちで自らが日々行っている看護を一緒に振り返ってみることをおすすめしたいと思います。

その際、「誰に、どう頼めばいいのかわからない」とか「悩み事が上司に筒抜けになってしまうのではないか」などの懸念から、コンサルテーションを受けることを躊躇しているという看護師さんには、コチラの記事を参考にしていただけたらと思います。

日々の看護に行きづまって、あるいは職場の人間関係に悩み、専門看護師による看護コンサルテーションを受けたいと思う。でも、上司に筒抜けになるのは困るからと、躊躇している方のために、その辺の懸念をクリアしてみました。