看護コンサルテーションの頼み方で悩むあなたに

看護コンサルテーション

迷ったときは、
看護コンサルテーションを活用

看護という仕事は、人さまのいのちに直接かかわるだけに、しかもそれをチームで取り組んでいくわけですから、何かと迷ったり、行きづまりを感じたりしている看護師さんが少なくないのではないでしょうか。そんなときこそ、「看護コンサルテーション」と呼ばれる、素晴らしい相談機能を有意義に活用していただきたいと思うのですが……。

実は、その活用について、とても残念な話をよく耳にします。スペシャリストによる看護コンサルテーションを受けたいと思っても、依頼手続きのわずらわしさなどから、相談することを諦めてしまう看護師さんが少なからずいるというのです。せっかくのコンサルテーション機能が宝の持ち腐れになっているのです。

そこで今回は、看護コンサルテーションの活用をめぐる懸念や疑問に関して、取材を通して私が確認できたこと、知りえたことをお伝えしようと思います。

上司に知られたくないから、
看護コンサルテーションを頼めない?

看護コンサルテーションは、日々の患者とのかかわりやケア方法などをめぐり、何らかの問題に直面した看護師さん(コンサルティ)が、これはもう自分一人で考えていても一歩も前に進めないと判断し、先輩やその問題に見合う領域の専門看護師さんや認定看護師さん(コンサルタント)に相談してみようと思いつくことからスタートします。

この場合、すぐにコンサルテーションの依頼へとなればいいのですが、この最初の段階で、しばしば壁にぶつかってしまう看護師さんが少なくないと聞きます。

看護コンサルテーションに関しては、このサイトでもこれまで何回か取り上げてきました。たとえばそのなかの、看護師さんのストレス対策の一つとしてまとめた「リエゾン精神看護専門看護師の手を借りては?」の記事では、看護コンサルテーションの依頼を踏みとどまってしまう理由の一例を取り上げています。

ある大学病院の看護師長さんが、スタッフのメンタルヘルス支援を充実させたいと考え、病院側と交渉してリエゾン精神看護専門看護師によるコンサルテーションの専用窓口を設置したものの、看護師さんたちになかなか活用してもらえない、という話です。

そこで活用されない理由としてあげられたのは、自分の看護に行き詰まりを感じている、といったような仕事上の悩みや不満、看護チーム内、あるいは医師との人間関係の問題などが直属の上司に筒抜けになってしまうことへの懸念でした。

看護コンサルテーションに
上司の了解と依頼書は必要?

相談内容が上司に筒抜けになるという懸念は、結論からいってしまえば、実際のところまったくの的外れです。その理由は、先のリエゾン精神看護専門看護師に関する記事をひととおりお読みいただけたらおわかりでしょう。

とはいえ、看護コンサルテーションを頼んでみようと思いついたときにこうした懸念を抱くのは、手続き上、ある意味無理もないことだろうと思います。というのは、病院により多少の違いはあるものの、専門看護師のようなスペシャリストに看護コンサルテーションを要請するには、直属の上司である看護師長などにまずはその旨を申し出て了解を得ることが求められるケースが多いからです。

その了解のもとに、既定の看護コンサルテーション依頼書に必要事項を記載し、提出するというプロセスを踏むことになります。そこにはどうしても直属の上司が介入することになってしまいます。

ですが、たとえば看護チームや病棟単位で、特定の患者とのかかわり方やきわめて専門的な知識が求められる看護行為についてスペシャリストのコンサルテーションを受けるような場合なら、上司の介入がネックになることはないだろうと思います。

この場合の看護コンサルテーションが、実際どのように行われるのかを知っておきたいとお考えの方は、精神看護専門看護師の平井元子さんが、著書『リエゾン―身体(からだ)とこころをつなぐかかわり (SERIES.看護のエスプリ) 』のなかでいくつも事例を紹介していますので、読んでいただくとイメージできると思います。

一方で、きわめて個人的な問題で、看護師として仕事を続けていくうえで乗り越えたいと思っているような事柄について、日々の実践の振り返りを援助してもらうかたちで看護コンサルテーションを受けたいと考えることは少なくないでしょう。

このような場合、直属の上司が介入する一連の手続きは、むしろ壁となって、すんなりとはコンサルテーションの依頼ができないというのは、私なりに理解できる気がします。そんなケースを想定して、以下に整理してみました。

看護コンサルテーションに
上司の介入は必要ない?

少し前になりますが、懇意にしていただいている専門看護師さんに、彼女が勤務している病院が独自に用意しているという『看護コンサルテーション依頼書』を見せていただいたことがあります。

「どこもだいたいこんな書式でしょう」とのことですので、おそらくあなたの病院のものと大差ないんだろうと思います。その依頼書には以下のような記載項目が列記されていたと記憶しています。

  • 看護コンサルテーションを希望する看護師の氏名
  • 所属部署と経験年数
  • 連絡先の電話とファックス番号、あなたのEmailアドレス
  • 看護コンサルテーションを受けたい事柄(できるだけ事例として具体的に)

これらをすべてきちんと記載するのは大変な作業でしょうから、依頼書を一見して、私だったら「やーめた!」となってしまうと思ったものです。

そこで、「この依頼書がないと、看護コンサルテーションを頼めないの?」と尋ねてみました。すると嬉しいことに、「そんなことはない」との返事でした。専門看護師さんには6つの役割の1つとして「看護師を含むケア提供者に対しコンサルテーションを行う」ことが課せられています。認定看護師さんも「看護職に対しコンサルテーションを行う」ことが、3つある役割の1つに挙げられています。

ただし、そのコンサルテーションに関して依頼書が必要との条件はないそうで、「直接訪ねてくれてもいいし、メールや電話で声をかけてくれてもいい」とのこと。「ただ、専門看護師も認定看護師も人によってやり方が違うから、必ずしも電話でOKとはいかないかもしれないことだけは頭に入れておいて」と、彼女は話してくれたのでした。

がん相談支援センターを利用して
外部コンサルテーションを受ける

先に私は、看護に行きづまり離職を考えていた看護師さんが、看護コンサルテーションにより自らの看護を振り返るなかで、看護という仕事の「やりがい」に気づき、離職を思いとどまったという話を紹介しました。

「看護コンサルテーション」と「相談」はどう違うのか。そんな疑問を抱えつつ専門看護師のコンサルテーションを受けてみた。結果は、日々の看護を振り返るなかで、「自分は役に立っている」と、看護師としてのやりがいに気づくことができたという話です。

このコンサルテーションから5年が経過した現在の彼女の見事な成長ぶりを、メールや電話で知るたびに、看護コンサルテーションの威力をつくづく実感させられています。

幸い最近は、自分が勤務する病院のホームページにアクセスしてみると、そこにある看護部のページで専門看護師や認定看護師などのスペシャリストについて、それぞれの専門領域や研究課題などを簡潔に紹介しています。それらを参考に、どんどん活用されたらいかがでしょうか。

なお、勤務先の病院で看護コンサルテーションを受けることができない看護師さんも少なくないでしょう。そんな方は、がん領域に限られますが、他院のがん相談支援センターなどを利用して外部看護コンサルテーションを受けることもできるはずです。この点についてはこちらの記事を参考にしてください。

がん患者のケアで迷い、専門看護師などに相談(看護コンサルテーション)したいと思っても、勤務先には相談できる人がいないことは少なくない。その際には最寄りの「がん相談支援センター」を利用してみてはどうだろうか。ということでがん相談支援センターについてまとめた。