がん相談支援センターは
他院の看護師も利用できる
「がん相談支援センターって、誰でも無料で利用できるって聞いたけど、看護師の私が担当している患者さんのケアについて相談することもできるのかしら?」――。東京近郊の小さな個人病院に勤務する看護師さんから、こう尋ねられたことがあります。
「もちろんできると思うわよ。でも、たまたまその窓口にがん看護領域の専門看護師や認定看護師のような方がいれば、ケアについて具体的に相談できるとは思うけど、他の職種の方だったらどうかしら……。とにかく一度電話してみたら?」
そのときはその程度の話で終わっていました。その後、彼女にことの経緯を聞くチャンスもないまま気になっていたところ、つい先日、別の看護師さんとの話のなかで、がん相談支援センターは他院の看護師でも利用できるのかということが、また話題にのぼりました。
「そうか、院内に相談できる相手がいないケースは結構あるんだった」と思い、調べてみましたので、今回はそのことを書いてみたいと思います。
がん相談支援センターの活用で
誰もが質の高いがん医療を
「がん相談支援センター」とは、全国どこに住んでいても、誰もが質の高いがんの診療やケアを納得して受けることができるよう、厚生労働大臣が指定した一定の医療機関に設置を義務づけているがんに関する相談窓口です。
病院によってはがん相談支援センターの相談窓口に「医療相談室」「地域医療連携室」「よろず相談室」など病院固有の名称を掲示しているところもあります。しかし、それらの相談窓口が「がん相談支援センター」として機能している場合は、そこには必ず「がん相談支援センター」と併記することが義務づけられています。
がん相談支援センター設置の指定を受けているのは、全国の「がん診療連携拠点病院」や「地域がん診療病院」「小児がん拠点病院」などです。
厚生労働省によればその数は、2023(令和5)年4月1日現在、がん診療連携拠点病院が全国で456か所、地域がん診療病院47か所、小児がん拠点病院17か所となっています。
がん相談支援センターで
相談できること
がん相談支援センターは、院内外のがん患者や家族、地域住民、さらには地域の医療機関なども、無料で利用することができるようになっています。ということは、看護師さんも勤務先以外の病院のがん相談支援センターを利用できるということです。
この場合、がん看護領域の専門看護師や認定看護師による外部看護コンサルテーションを受けることもできるのではないでしょうか。
利用する際の相談内容ですが、がん相談支援センターに指定されている業務の範囲内のことであればすべからく相談に応じてもらえるはずです。
ちなみに、2018年7月31日に出された「がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針」では、地域がん診療連携拠点病院の指定要件のなかで、がん相談支援センターの主な業務として以下をあげています。
- がんの病態や標準的治療法、がんの予防や早期発見等に関する一般的な情報の提供
- 地域の医療機関、診療従事者に関する情報収集、情報提供
- セカンドオピニオンの提示が可能な医師の紹介
- がん患者の療養生活全般の相談
- 就労に関する相談
- 医療関係者と患者会等が共同で運営するサポートグループ活動や患者サロンの定期開催等、患者活動に対する支援
- がんゲノム医療に関する相談
- 希少がんに関する相談
- AYA世代にあるがん患者に対する治療環境や就学、就労支援に関する相談、
- がん治療に伴う生殖機能の影響や生殖機能の温存に関する相談
このうち「就労に関する相談」については、予備知識としてこちらを一度読んでおけば相談がスムーズに進むはずです。
相談は電話やメールで、ときに出張相談も
相談支援は電話で、あるいはプライバシーの保てる個室での直接面談のかたちで行われるのが一般的で、匿名での相談も受け付けています。メールでの相談を受けつけているところもあれば、数自体は少ないものの、出張相談を行っているセンターもあります。
また、相談ニーズが多いセンターでは予約制をとっていることが多いようですから、事前に電話で問い合わせておけば安心かつ確実でしょう。
最寄りの「がん相談支援センター」は?
最寄りの「がん相談支援センター」は、コチラ*¹から検索できます。ホームページで詳細をチェックしたうえで連絡してみてはいかがでしょうか。
また、国立がん研究センターの「がん情報サービスサポートセンターセンター(℡0570-02-3410)」でも最寄りのがん相談支援センターを紹介してもらえます。
なお、改めて言及するまでもないとは思いますが、個別の患者ケアに関して相談する際は、患者の氏名、生年月日、住所、性別など個人情報の扱いにくれぐれもご注意ください。
国が指定する研修を修了した
専従・専任の「がん専門相談員」
そこで気になってくるのは、どのような立場の、どのような専門スタッフが相談にのってくれるのか、ということではないでしょうか。
多くのがん相談支援センターでは、がん看護専門看護師やがん化学療法看護、あるいはがん性疼痛看護、乳がん看護の認定看護師、さらには経済的負担など生活全般の相談に対応する医療ソーシャルワーカー(MSW)も相談員として対応しています。
この相談員には、国が指定した研修を修了した専従(他の仕事を兼務できない)および専任(他の仕事を兼務できるが約8割はセンターでの業務を行う)の「がん専門相談員」がそれぞれ1人ずつ配置されていることが必須条件となっています。
ここで言う研修とは、国立がん研究センターがん対策情報センターが年に数回実施している「がん相談支援センター相談員基礎研修」のことです。
専従および専任の「がん専門相談員」には、この基礎研修の「基礎確認コース」、および基礎研修の「国指定コース」を修了することが求められています。
研修内容や研修期間などの詳細は、国立がん研究センターがん対策情報センターの「医療関係者向けサイト」*²にアクセスして確認してみてください。
参考資料*¹:がん診療連携拠点病院などを探す
参考資料*²:がん相談支援センター相談員研修