退院支援看護師は民生委員とも連携を!!

パートナーシップ

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地域住民の相談役
民生委員は貴重な連携パートナー

今回のタイトルを見て、「えっ、退院支援看護師と民生委員が連携するってどういうこと?」と疑問に思われた方が多いのではないでしょうか。実は私も、つい先日、退院支援を担当している看護師さんの集まりでその話を聞いたときは、一瞬「えっ、どういうこと?」と不思議に思ったものです。

そして思い出したことがあります。以前ある訪問看護師さんが、「在宅で高齢者を支援することの多い私たちにとって、民生委員は貴重な連携パートナー」と話していたのです。

これだけ高齢者が増えてくると、担当地域内にはひとり暮らしの高齢者もいれば、介護保険サービスの利用を拒み内々で老々介護を続ける高齢者宅も少なくないとのこと。そのような高齢者の身近な相談役として活動している民生委員の方々は、高齢者の日々の暮らしを見守っていくうえで頼りがいのある存在だ、という話でした。

同じようなことを、その日の集まりで退院支援看護師の方々も口々に話していました。話を聞いていて、民生委員がいることは知っていても、どういう立場で、どんな活動をしているのか、私自身、正確には理解できていないことに気づかされました。

そこでいい機会と思い、そのへんのことを調べながら、退院支援担当の看護師さんと民生委員との接点について考えてみましたので、今回はその話を書いてみたいと思います。

民生委員はボランティアだが
厚労大臣が委嘱している

集まりの席で、民生委員との連携について発言した退院支援を担っている看護師さんによれば、彼女が民生委員の方と懇意になったきっかけは、地域包括ケアセンターで開かれた地域ケア会議で席を隣り合わせたことだったそうです。

会議の冒頭、出席者はそれぞれ自己紹介をします。そのとき隣の席の女性が「民生委員をやらせていただいている○○です」と挨拶するのを聞き、「えっ、どうして民生委員がこの場にいるの……」と不思議に思ったと言います。

なにしろ地域ケア会議への出席は、その日が初めてだったうえに、「今にして思えば、私の勉強不足だった」と看護師さん。

地域会議における民生委員(正式名は「民生委員・児童委員」)の位置づけは、一地域住民であると同時にボランティアです。無報酬のボランティアですが、都道府県知事などからの推薦により、厚生労働大臣の委嘱を受けた特別職かつ非常勤の地方公務員です。

生活状況の把握や相談活動に
民生委員との接点が

厚生労働大臣の委嘱により民生委員に託されている活動については、民生委員法第14条にて以下の6項目が「職務内容」としてあげられています*¹。

  1. 住民の生活状況を必要に応じ適切に把握しておくこと
  2. 生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと
  3. 福祉サービスを適切に利用するために必要な情報の提供、その他の援助を行うこと
  4. 社会福祉事業者と密接に連携し、その事業または活動を支援すること
  5. 福祉事務所その他の関係行政機関の業務に協力すること
  6. その他、住民の福祉の増進を図るための活動を行うこと

これらの職務内容を見る限り、医療に直接係る記述はなく、退院支援看護師と直接の接点はないのではないかと考えがちではないでしょうか。

ところが民生委員によれば、たとえば「1」にある生活状況の把握や「2」の生活に関する相談に応じて助言や援助をしていく際に、健康状態や病状、服薬中の薬や治療内容に関する情報を持ち合わせていないと満足な支援ができないことが往々にしてあるのだそうです。

兵庫県丹波市の民生委員・児童委員連合会の調査によれば、75歳以上の高齢者が相談を寄せる日常生活の困りごとで最も多かったのは、健康・介護に関する内容、次いで「話を聞いてほしい」だったとのこと*²。

高齢者でも介護保険利用者は意外に少ない

民生委員の支援対象者は多くが高齢者です。したがって、介護保険を利用しているだろうから、担当しているケアマネジャーや訪問看護師と連携して、必要な情報の提供を受けるようにすれば済む話ではないか、と考えたりもします。しかし、高齢者と言えども、介護保険の利用率は思うほどは高くないのが現状です。

2018年4月に経済産業省がまとめた報告書のなかに、「加齢に伴う要介護(要支援)者割合の推移」を示した図*³があります。これを見ると、介護保険の未利用者は65~69歳では全体の97%、70~74歳は94%、75~79歳は87%、80~84歳は71%となっています。

その後の未利用者は、85~89歳では49%とほぼ半数、90歳以上で23%で、介護保険サービスの利用者が多くなるのは、85歳以上であることがわかります。

介護保険や訪問看護未利用者の
相談相手の多くは民生委員

介護保険を利用していない在宅高齢者の相談相手になっているのは、多くが民生委員です。高齢者も80歳、90歳となってくると、一つや二つ健康問題を抱えていて、通院しながら食事制限をしている人もいれば服薬を続けている人もいるでしょう。時には、体調を崩したりすることもあるはずです。

そのようなとき、たまたま安否確認に訪れた民生委員に相談を持ちかけるわけです。相談された民生委員としては、こと健康にかかることだけにいい加減なことは言えないから、「ちょっと相談できる健康関連のプロがいるとありがたい」そうです。

退院支援の対象者は、地域の医療・介護・福祉スタッフと連携して送り出すケースが多いことから、強いて退院支援看護師が民生委員と連携する必要はないのでは、との声も少なからずあるようです。

しかし、たとえばひとり暮らしの高齢者が退院する際に、孤立死のような悲しい事態を防ぐための見守り支援を考えるうえでも、民生委員との連携が欠かせないでしょう。その他にもいろいろなケースがあると思うのですが、いかがでしょうか。

最寄りの地域の民生委員と連絡をとりたいときは、市区町村の社会(地域)福祉課や地域包括支援センターに相談してみてください。最寄りの地域包括支援センターは厚生労働省のホームページ*⁴で確認できます。

民生委員は全国的に担い手不足のようです。看護師さんのセカンドキャリアに検討されてはいかがでしょうか。民生委員の活動について具体的に知りたい方は『民生委員活動の基礎知識: おさえておきたい30のポイント』(中央法規出版)が参考になります。

参考資料*¹:厚生労働省「民生委員・児童委員はどのような活動をしているのですか?」

参考資料*²:丹波新聞2022年4月11日

参考資料*³:経済産業省「将来の介護需要に対する高齢者ケアシステムに関する研究会 報告書」P.18

参考資料*⁴:厚生労働省「全国の地域包括支援センターの一覧」