地域包括ケアシステムにおける多職種連携のコツ




チームプレー

地域包括ケアシステムで見えてきた
多職種連携(IPW)の難しさ

この先の超高齢社会を見据え、厚生労働省(以下、厚労省)が「高齢になり重度の要介護となっても、住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるように」をモットーに、「地域包括ケアシステム構想」を打ち出して5年が過ぎようとしています。

全国の市区町村では現在、自分たちの地域にふさわしい地域包括ケアシステムを構築する取り組みが進められています。
おおむねうまく動き出しているようですが、そこにはクリアすべき課題があり、足踏みしている地域も少なからずあるようです。

■多職種間のコミュニケーションの難しさ
これまでに明らかになった課題のなかに、看護が日々の実践において最も大切なことの一つとして力を入れている「コミュニケーション」にかかわる問題があるとする声が多数あがっていることをご存知でしょうか。

何しろ地域包括ケアシステムには、実にさまざまな職種がかかわります。
関係する人びとが一つのケアチームとしてうまく連携し、機能していくためには、職種を超えたメンバー間の円滑なコミュニケーションが欠かせないわけですが……。

そこで今回は、職種間のコミュニケーションを難しくしている原因と、看護に期待されているこの問題をクリアするためにできることを探ってみたいと思います。

なお、地域包括ケアシステム構築の要となる職域を超えた看護職のつながり、いわゆる「看看連携」については、こちらの記事を読んでみてください。

地域包括ケアシステム構築の要となるのは、医療・介護・福祉領域のあらゆる現場で活躍している看護職同士の連携であろう。この看看連携体制づくりに厚労省が病院看護管理者向けに策定した手引きを紹介。今直面している課題が院内だけの問題でないと認識することが出発点となる。

多職種連携により30分以内に
包括的ケアサービスを提供

地域包括ケアシステムの構成要素として、厚労省は「住まい」「医療」「介護」「予防(介護予防や健康づくり)」「生活支援(福祉サービス)」の5つを挙げています。

これらのサービスをバラバラに提供するのではなく、多職種連携により一体的、つまりフルセットで提供できる体制を構築し、地域内でサポートを必要としている高齢者を安全かつ効率よく支えていこうというのが、地域包括ケアシステムの目指すところです。

ちなみに地域包括ケアシステムで言うところの「地域」とは、「コミュニティ」といったニュアンスの漠然としたものではありません。

■24時間毎日、30分以内に駆けつける
厚労省は、おおむね30分以内に駆けつけて必要とされているサービスを提供することができる生活圏を「地域」として捉えています。
具体的には中学校区を単位と考えたらいいでしょう。

この場合、高齢者の「住まい」が自宅であるか施設であるかを問わず、この生活圏内で、日々の生活を支えるサービスや健康面での安心・安全にかかわるサービスを24時間、毎日切れ間なく利用できるようにしていこうというわけです。

したがって地域包括ケアシステムには、当然ながら地域の実情や特性が大きく反映されることになり、全国一律のケアシステムモデルなるものがあるわけではありません。
各市区町村で3年ごとに策定することが義務づけられている「介護保険事業計画」を通じて、各地域が目指す独自の包括ケアシステムを計画し、構築していくことになります。

多職種連携の拠点となる
地域ケア会議の積み重ねが大事

各地域が独自の包括ケアシステムの計画、構築を進めていくうえで重要な役割を担っているのが、地域包括支援センターなどが主催する「地域ケア会議」です。
この会議には、地域で活動しているさまざまな団体関係者、あるいは個人が顔を揃えます。

自治体職員もいればケアマネジャー(介護支援専門員)のような介護関係機関のスタッフ、社会福祉協議会、ボランティア団体、民生委員、もちろん医師、歯科医師、理学療法士、栄養士、薬剤師、看護師、訪問看護師といった医療関係者も必要に応じて集まります。

会議では、地域にあるケアニーズの把握から始まり、個別事例についてケアの提供方法やサービスの担い手となる人材の発掘、チーム体制づくりなどを検討していくことになります。
この個別事例を積み重ねるプロセスを経て、地域の独自性を盛り込んだ柔軟な包括ケアシステムを構築していくことになります。

医療関係者と他職種の間の
コミュニケーションに課題が

地域包括ケアシステムでは、ケアサービスが必要な個別事例が発生した際に、求められるケア内容に応じて、いくつかの職種が連携してニーズに見合ったケアチームを組み、サービスを一体的に提供できるようにしていくのが理想とされています。

地域包括ケアシステムが機能するには多職種連携が必須だということです。
ちなみに最近はこの多職種連携が、IPW(imter-professional work)という略語で呼ばれることが多くなっているようです。

■医療スタッフ間で使い慣れている専門用語
複数の職種が連携してひとつの事に当たっていくためには、参加者が顔見知りの関係になり、お互いの特性や専門性を理解し合えるように話し合いを重ねることが不可欠です。
ところがこの話し合いにおける医療関係者とのコミュニケーションが、あまりスムーズにいかないという声が、他職種からチラホラ出ているようなのです。

と言っても、看護師さんをはじめとする医療関係者にコミュニケーション力が不足しているということではありません。
ケア対象者に関する情報を共有しようとする際に、医療現場において医療者間で使っている専門用語や略語をあまりに頻繁に使いすぎる点に、ひとつ問題があるようなのです。

看護職に期待される医師とのパイプ役

もう一点、これは医師に関してよく聞く話ですが、連携チームの仲間に病状や治療など医療に関係した説明をする際に、こちらが納得できるまできちんと説明してくれない。一通り説明した後に「何か質問はありませんか」と尋ねてくれる医師となるとごくまれだ、と――。

このようなときには、常に医師のそばにいて、医療に関してはずぶの素人である患者や家族とのコミュニケーションに長けてもいる看護師さんに、医師とのコミュニケーションのパイプ役として、あるいは医師による情報提供の通訳としての役割を担ってもらえるといいのだか、といった声も少なからずあることを書き添えておきます。

地域包括ケアシステムに対する医師や看護師の姿勢、退院支援との関連性などに関してはこちらの記事で書いています。是非参考にしてみてください。

団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度の要介護状態になっても最期のときまで住み慣れた地域で誰もが自分らしい生活を続けられることを目的に、地域包括ケアシステムの構築が進められている。ただ、医師や看護師の認知度は低いようだ。