地域包括ケア推進のための「看看連携」に手引き




連携

地域包括ケアの推進は
地域の看護職間の連携から

厚生労働省が「地域包括ケアシステム構想」を打ち出して既に5年が過ぎようとしています。
システムの構築はスムーズに進んでいるでしょうか。

地域包括ケアシステムを構築し、重度の要介護状態になってもその人らしい在宅生活ができるような包括ケアをもれなく提供していくうえで、医療・介護・福祉領域のあらゆる現場で活躍している看護職には、その地域における関係機関同士、あるいは職種間同士をつなぎ合わせるという重要な役割が期待されています。

この役割を責任をもって引き受け、実現して、それなりの効果を上げていくためには、まずはさまざまな領域で働いている看護職同士が、お互い顔の見える関係になり、密に連携しあっていくことが必要となります。
いわゆる「看看連携」です。

今日はこの、地域包括ケアシステム構築における看看連携体制づくりのポイントを、厚生労働省が2019年8月に公表した、病院の看護管理者向け手引きを参考にまとめてみたいと思います。

団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度の要介護状態になっても最期のときまで住み慣れた地域で誰もが自分らしい生活を続けられることを目的に、地域包括ケアシステムの構築が進められている。ただ、医師や看護師の認知度は低いようだ。

地域医療の中核病院を中心に
看護職が組織を超えて連携を

その手引きとは、厚生労働省の研究班*が策定した「病院看護管理者のための看看連携体制の構築に向けた手引き――地域包括ケアを実現するために」のことです。
*2017年度厚生労働科学研究費補助金地域医療基盤開発推進研究事業「地域包括ケアを支える看看連携を円滑にする体制の構築に関する研究」研究班(主任研究者:慶應義塾大学看護医療学部 永田智子教授)

同研究班はこの手引きにおいて、看護職同士がつながる「看看連携」を、
「地域の看護職同士が、対象者の生活を支えるために、同じ目標をもって、信頼しあい、対等の立場で協働すること」
と定義しています。

この定義のもと、「地域包括ケアの円滑な促進を阻害している問題の多くは、個々の病院や施設だけでは解決が難しく、組織を超えた連携が不可欠である」ことを指摘。
それゆえ看看連携の実現は、看護の質向上だけでなく、地域全体のケアの質の向上にもつながるとして、とりわけ地域医療の中核を担う病院(以下、「中核病院」)を中心とした看看連携体制構築の推進に、この手引きを積極的に活用してほしいと呼びかけています。

組織を超えた看看連携体制構築
に向けた取り組みの5ステップ

本手引きでは、看看連携体制を構築していく取り組みのプロセスが以下の5ステップで示され、それそれのステップで、中核病院の看護管理者が取り組むべき課題や留意点、およびアドバイスが簡潔に提示されています。

STEP1:連携体制構築の必要性を認識する
STEP2:連携体制構築に向けて働きかける
STEP3:実際に取り組みを実施する
STEP4:連携体制を維持・拡大するための工夫
STEP5:取り組みを評価する

ステップに沿って、まずは自分が所属している病院を地域ケアシステムにおける1機関として捉え、自院が抱えている課題について院内と院外(地域)両方の視点から検討してみることを提案しています。

この検討作業を進めていくなかで、地域内の看看連携により問題を共有する必要性に気づき、地域の関係機関と関係性を深めながら、問題を共有いていくための看看連携体制を作り上げしていく、といった道筋が示されています。

■組織を超えた看看連携体制構築の実践例
手引きの巻末には、手引き作成に際し研究班がヒアリングした看看連携体制構築の実践例として、以下の6事例が紹介されています。
■地方都市における、中核病院を中心とした取り組みの3事例
①高知県土佐市、②山形県米沢市、③新潟県長岡圏域
■地方の自治体病院(200床以下)が取り組んだ事例
④北茨木市民病院
■都心の下町地域における、大学病院を中心とした取り組み事例
⑤東京都葛飾区
■都市部の中心地域における、基幹型ステーションを中心とした取り組み事例
⑥大阪府大阪市

本手引きの詳細については、厚生労働省のホームページ*¹を参照してください。

組織を超えた看看連携の前に
個人レベルで確認しておきたいこと

ところで、本手引きのテーマである「組織を超えた看看連携体制の構築」については、「その必要性は日々実感しているが、そのネットワークづくりに取りかかる前に看護職が個人レベルで改めて確認しておくべきことがあると思っている」と語るのは、退院支援看護師として5年のキャリアを持つW看護師です。

退院支援において病院看護職に求められる看看連携について本手引きは、
「地域との入院時連携、訪問看護ステーションとの連携、施設入所者の入院に関する施設看護職との連携などが求められます」
と説明しています。

このうち、たとえば訪問看護ステーションとの連携に際してW看護師は、
「訪問看護師さんがどのような役割を担っているのか、どのようなことをお願いできるのか、といったことをきちんと理解したうえで連携しないと、相手に無理難題を押しつけることになってしまい、結局そのつけが患者さんのその人らしい在宅生活を難しくしてしまうようなことにもなりかねない」と言うのです。

確かに、「同じ看護職だからわかり合えているつもりでいたが、職域が違う看護職のこととなると実はほとんどわかっていないことを実感させられた」といった話を、病院に勤務する看護師さんから一度ならず聞かされたことがあります。

よく言われる「顔の見える連携」のためには、看護職同士がお互いの仕事を理解し合うことから始める必要があるように思うのですが、いかがでしょう。

その際の参考資料として、「たとえば高知県看護協会の地域包括ケア検討委員会がまとめた資料*²はどうかしら」と、W看護師は話しています。

地域包括ケアシステムについてはこちらの記事も読んでみてください。

地域包括ケアシステム構想が打ち出されて5年余り。全国の市区町村で地域にふさわしい独自の取り組みが進むなか、課題も見えてきた。看護職ら医療関係者に関しては、コミュニケーションをとりにくいとの指摘が他職種から出ている。どういうことなのか探ってみた。

参考資料*¹:「病院看護管理者のための看看連携体制の構築に向けた手引き――地域包括ケアを実現するために」https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000538278.pdf
参考資料*²:「地域包括ケア推進のための看看連携への取り組み」
http://kochi-kangokyokai.or.jp/files/libs/1203/20190617172129524.pdf