地域包括ケア推進のための「看看連携」に手引き

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地域包括ケアの推進は
地域における看看連携から

厚生労働省が「地域包括ケアシステム構想」を打ち出して10年になろうとしています。システムの整備は順調に進んでいるでしょうか。

地域包括ケアシステムとは、健康を損ねて要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい生活を最後までできるように地域内で協力し合う体制です。

具体的には、戦後ベビーブームの時代(1947~1949年)に生まれた団塊世代のすべてが後期高齢者の75歳以上となる2025年(来年)を目途に、各地域の実情に合った医療・介護・住まい・生活支援を一体的に提供していくことを目指しています。

このシステムを構築していくうえで、医療・介護・福祉領域のあらゆる現場で活躍している看護職には、その地域における関係機関同士、あるいは職種間同士をつなぎ合わせるという重要な役割が期待されています。

この役割を責任をもって引き受けて実現し、それなりの効果を上げていくためには、まずはさまざまな領域で働いている看護職同士が、お互い顔の見える関係になり、密に連携しあっていくことが必要となります。いわゆる「看看連携」です。

今回はこの、地域包括ケアシステム構築のベースとなる看看連携の体制づくりのポイントを、厚生労働省が2019年8月に公表した、病院に働く看護管理者向けの手引きを参考にまとめてみたいと思います。

組織を超えた連携
看看連携とは

その手引きとは、厚生労働省の研究班が策定した「病院看護管理者のための看看連携体制の構築に向けた手引き――地域包括ケアを実現するために」*¹のことです。

同研究班はこの手引きにおいて、看護職同士がつながる「看看連携」を、「地域の看護職同士が、対象者の生活を支えるために、同じ目標をもって、信頼しあい、対等の立場で協働すること」と定義しています。

この定義のもと、「地域包括ケアの円滑な促進を阻害している問題の多くは、個々の病院や施設だけでは解決が難しく、組織を超えた連携が不可欠である」ことを指摘。それゆえ看看連携の実現は、看護の質向上だけでなく、地域全体のケアの質の向上にもつながるとして、とりわけ地域医療の中核を担う病院(以下、「基幹病院」)を中心とした看看連携体制構築の推進に、この手引きを積極的に活用してほしいと呼びかけています。

看看連携体制構築
取り組みの5つのステップ

本手引きでは、看看連携体制を構築していく取り組みのプロセスが以下の5ステップで示され、それそれのステップで、基幹病院の看護管理者が取り組むべき課題や留意点、およびアドバイスが簡潔に提示されています。

  • STEP1:連携体制構築の必要性を認識する
  • STEP2:連携体制構築に向けて働きかける
  • STEP3:実際に取り組みを実施する
  • STEP4:連携体制を維持・拡大するための工夫
  • STEP5:取り組みを評価する

ステップに沿って、まずは自分が所属している病院を地域ケアシステムにおける1機関として捉え、自院が抱えている課題について院内と院外(地域)両方の視点から検討してみることを提案しています。

この検討作業を進めていくなかで、地域内の看看連携により問題を共有する必要性に気づき、地域の関係機関と関係性を深めながら、問題を共有していくための看看連携体制を作り上げしていく道筋が示されています。

組織を超えた看看連携体制構築の実践例

さらに手引きの巻末には、手引き作成に際して研究班がヒアリングした看看連携体制構築の実践例として、以下の4枠6事例が紹介されています。詳細は、厚生労働省のホームページを参照してください。

  1. 地方都市における、基幹病院を中心とした取り組みの3事例
    ①高知県土佐市、②山形県米沢市、③新潟県長岡圏域
  2. 地方の自治体病院(200床以下)が取り組んだ事例
    ④北茨木市民病院
  3. 都心の下町地域における、大学病院を中心とした取り組み事例
    ⑤東京都葛飾区
  4. 都市部の中心地域における、基幹型ステーションを中心とした取り組み事例
    ⑥大阪府大阪市

なお、病院と地域の医療機関、介護施設などとの看看連携の実践事例は『地域包括ケア時代の看看連携 実践事例集: 多施設・多職種との連携をつくる! (ナーシングビジネス2016年夏季増刊)』(メディカ出版)でも紹介されています。

病院看護職と訪問看護職の
看看連携における課題

ところで、本手引きのテーマである「組織を超えた看看連携体制の構築」について、退院支援看護師として5年のキャリアを持つW看護師は、「看看連携体制構築の必要性は日々実感しているが、そのネットワークづくりに取りかかる前に看護職が個人レベルで改めて確認しておくべきことがあると思っている」、と話しています。

退院支援において病院看護職に求められる看看連携について、本手引きは、「地域との入院時連携、訪問看護ステーションとの連携、施設入所者の入院に関する施設看護職との連携などが求められます」と説明しています。

このうち、たとえば病院看護職と訪問看護ステーションとの連携に際しては、発生しがちな問題がある、とW看護師――。

「病院看護職としては、訪問看護師さんがどのような役割を担っているのか、どのようなことをお願いできるのか、を理解したうえで連携しないと、相手に無理難題を押しつけることになり、結局そのつけが患者さんのその人らしい生活を難しくすることにもなりかねないのです」

看護職同士だからわかり合えるとの思い込みが……

確かに、「同じ看護職だからわかり合えているつもりでいたが、職域が違う看護職のこととなると実はほとんどわかっていないことを実感させられた」という話を、病院に勤務する看護師さんから一度ならず聞かされたことがあります。

よく言われる「顔の見える連携」のためには、看護職同士がお互いの仕事を理解し合うことから始める必要があるように思うのですが、いかがでしょう。

その際の参考資料として、「たとえば高知県看護協会の地域包括ケア検討委員会がまとめた資料*²はどうかしら」と、W看護師は話しています。

そこには、医療と介護、保健・福祉領域で働く看護職、具体的には保健師、助産師、訪問看護師、看護師個々は、「どんなことができるのか」「どのようなことを期待できるのか」について、かなり具体的に提示されています。是非チェックしてみてください。

また、病院勤務の看護職、特に入退院支援を担当している方は自ずと訪問看護師と連携することが多くなりますが、その活動をより具体的に理解してスムーズに連携するには『訪問看護実務相談Q&A 令和5年版』(中央法規出版)が手元に一冊あるとずいぶん助かるという話をよく伺います。なお、本書の令和6年版は2024年8月21日刊行予定となっています。

2024年春には、病院看護師と在宅の看護師が機能的に連携するための体制づくりを目指して「看看連携を考える会」が定期的なイベント開催等の活動をスタートしています。詳しくは同会のウエブサイトをご覧ください。

スムーズな職種間連携のコツは?

地域包括ケアシステムにはさまざまな職種がかかわることになるのですが、その職種間の連携についても、課題は少なくありません。その一つとして、「地域包括ケアシステムにおける多職種連携のコツ」では、職種を超えたスタッフ間のコミュニケーションについて書いています。是非読んでみてください。

参考資料*¹:2017年度厚生労働科学研究費補助金地域医療基盤開発推進研究事業「地域包括ケアを支える看看連携を円滑にする体制の構築に関する研究」研究班(主任研究者:慶應義塾大学看護医療学部 永田智子教授)策定病院看護管理者のための看看連携体制の構築に向けた手引き――地域包括ケアを実現するために」

参考資料*²:「地域包括ケア推進のための看看連携への取り組み」