「接遇」と「医療安全」と「おもてなしの心」




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患者と医療者双方の
安心・安全を守る医療接遇

新型コロナウイルスの感染拡大「第3波」により、1日当たりの新規感染者数も重症者数も急増し、連日のように「過去最多」を更新しています。

一部の医療機関では、相次ぐ重症者の対応に追われ、コロナ以外の通常の医療に支障が出かねない状況にあるとも報じられています。

新型コロナウイルス感染症の患者に直接対応しておられる方はもちろんのこと、そうでない方も、「自分もこのウイルスに感染するのではないか」「感染したら家族や同僚に感染させてしまうのではないか」……、等々の不安を抱えながら、今まで経験したことのない緊張感のなかで患者ケアに当たっておられることと思います。

そのつらい気持ちについては、ひとりで抱え込まず言葉にして吐き出してほしい、という話を先に書かせていただきました。

その一方で、心身ともに厳しい状況にある今だからこそ、自らを癒しつつも、目の前にいる患者もまた、自分と同じような不安で落ち着かない状況に置かれていることを念頭に、患者の安心、そして安全にいつも以上に留意していただきたい――。

そんな思いから、今日は、「医療現場における接遇は患者の安全や自分を守るために身につけるべきもの」として「接遇」の大切さを説いている新刊本を紹介してみたいと思います。

医療接遇コンサルタント
福岡かつよ氏の提案

この本のタイトルは、著者の提案そのままに『看護師のための 医療安全につながる接遇: 自分と患者を守るコミュニケーション力』(中央法規出版)です。

この本の著者は、福岡かつよさんです。
この名前に、「ああ、あのときの研修で講師を務めておられた方だ」とか、
「この方の講演を聞いたことがある!!」
という方がかなりの数いらっしゃるのではないかと思うのですが、いかがでしょう。

本書の「著者情報」によれば、福岡さんは「医療接遇コンサルタント」です。

厚生労働省の外郭団体に勤務し、医療・介護の現場を対象にしたさまざまな調査研究に携わったことがきっかけとなり、以降、20年余りにわたり、
「医療・介護に特化し、接遇を通じて現場を活性化させる」べく、大学病院からクリニックまで幅広くコンサルティングを主体に、活動しておられるそうです。

コンサルティングに加え、全国各地で、年間180本以上の講演・研修を行い、
「これまで10万人を超える医療者に医療接遇を提案している」
と記されています。

安心・安全を守るための
気配りのもととなるもの

「医療接遇」という表現はあまり聞きなれないものの、この場合の「接遇」が、いわゆる「接客マナー」とイコールでないことはすぐにわかります。

とは言っても、医療もサービス業のひとつですから、接客、つまり患者や家族に接する際のマナーを疎かにしていいという話にはならないでしょう。

以前私はこのブログで、国際線のキャビンアテンダント、いわゆる「CA」を5年ほど経験した後、後輩CAのマナー教育に10年余り携わってきた友人が、いくつかの医療機関の看護部長から要請を受け、新人看護師研修の講師を務めたときの話を紹介しました。

もちろんテーマは「看護師としての接遇マナー」です。

ただ、それまで医療現場とはほとんど接点のなかった彼女は、自分には「看護師としての」接遇マナーを語る資格はないと、当初はその申し出をていねいに断っています。

そのとき、その看護部長が彼女を説得した話が、まさに本書で福岡さんが提案している「医療接遇」であることに、今になって改めて気づかされました。

看護部長は、こう言って、彼女を説得したのでした。

「キャビンアテンダントの方も、上空を飛行中の飛行機という慣れない環境に身を置いてなんとなく落ち着かない気持ちでいる乗客を相手に、安心・安全を守るためにいろいろな気配りをされているわけでしょ? おそらくそこには、接客マナーを超える、おもてなしをしようとする気持ちを支える何かがあるはずだから、そのへんの話をしていただきたいのです」

患者への「おもてなしの心」が
医療接遇のキーポイント

医療接遇ということを説明しようとしたとき、この「おもてなしをしたいと思う気持ち」、簡単に言えば「おもてなしの心」が大きなヒントになるように思います。

「おもてなし」という言葉は、2013年の国際オリンピック委員会総会で行われた夏季オリンピック・パラリンピックを東京に誘致するスピーチのなかで使われたことで、広く海外の方々にも知られるところとなりました。

世界中から訪れる方々を、心から慈しみ、思いやりの心をもってお迎えしたいという、日本人ならではの相手を大切に思う気持ちの現われとでも言いましょうか。

患者にも、この「おもてなしの心」で接してほしい。
自分としてはおもてなしの気持ちで接しているつもりでも、その気持ち、思いを行動にして見せないことには相手に伝わらない――。

それを伝えるのが「医療接遇」であり、その土台になるのが、
「患者の痛みをわかろうとする医療人としての姿勢」であり、
「患者のつらさに歩み寄るための傾聴する力やコミュニケーションの力」である。

このことを本書では、実例を通し、イラストなどもふんだんに活用しながら、明快に解説してくれています。是非、参考にしてみてください。