看護としてのアドバンス・ケア・プランニング




選択・決定

アドバンス・ケア・プランニング
の概念がガイドラインに盛り込まれる

 超高齢社会のこの国にあって、著名な方々の訃報が伝えられることも多くなり、自らのエンド・オブ・ライフ、つまり人生の最終段階をどう生き、どう締めくくるかということに対する人々の関心が高まってきています。

こうした趨勢は、看護現場でいえば、その人らしさをより反映した終末期医療、とりわけ「アドバンス・ケア・プランニング」が求められるようになったことに象徴されているといっていいでしょう。

アドバンス・ケア・プランニングについては、とかくがん患者に限定されているように思われがちです。しかし、決してそうではありません。

2018年3月に改訂された厚生労働省による「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」には、このアドバンス・ケア・プランニングの概念が盛り込まれ、その実践が求められています。⇒終末期医療・ケアのガイドライン2018改訂

同年4月に実施された診療報酬改定でも、このガイドラインに沿った対応が評価されていますから、看護の現場では病院、在宅の別なく、アドバンス・ケア・プランニングが欠かせなくなっていると言えそうです。

ということで、今回はこのアドバンス・ケア・プランニングを看護の観点からまとめてみたいと思います。なお、アドバンス・ケア・プランニングの主旨や方法について患者に説明する手引きについては『アドバンス・ケア・プランニングの手引き』を参考にしてみてください。

人生のしめくくり方プランへの
看護師のかかわり

アドバンス・ケア・プランニングとは、病気の種類や年齢に関係なく、回復する見込みがなくなった場合を含む「もしものとき」について、「どこで最期を迎えたいか」「どのような治療やケアを受けたいか」「どのような治療は受けたくないか」といったことも含め、患者本人が自らの考えをまとめ、さらに家族や看護師ら医療スタッフと話し合いをもって合意を取りつけていく取組みのことです。

人生の最期の迎え方に関しては、「リビングウイル」や「事前指示書」(エンディングノート)に関心が集まった時期がありました。今もその傾向は強く残っていますが、その段階では「本人の意思表示」だけが強調されがちでした。
事前指示書に「希望する医療」を明示しておく

しかし、アドバンス・ケア・プランニングは本人の問題だけではありません。
家族なども含めて「もしものとき」を想定し、この先必要になると予測される意思決定を事前に行っておくことにより、双方が納得できるかたちで最期の時を迎えられるようにすることを意図している点に特徴があります。

このプランニングに、終末期ケア、つまりエンド・オブ・ライフケアの一環として、看護師のかかわり、とりわけ意思決定支援が求められるケースが年々増えてきているのです。
⇒西川満則著『本人の意思を尊重する意思決定支援: 事例で学ぶアドバンス・ケア・プランニング』(南山堂)

アドバンス・ケア・プランニング
単身者に見られる特徴

病院や在宅医療の現場におけるアドバンス・ケア・プランニングでは、先にまとめたこちらの記事で示しているように、医療やケアに関する意思表示が中心となります。
そのため、個々のプランニングに参加する医療スタッフの関心は、どのような治療やケアを受けたいのか、あるいは受けたくないのかといったことに集中しがちです。

このかかわりについては、看護教員らが著した著書、『医療事前指示書:私への医療・私の終末期はこうしてほしい』(ナカニシヤ出版)や『「私の四つのお願い」の書き方―医療のための事前指示書』(ワールドプランニング)が参考になります。

そんななかにあって、最近、「アドバンス・ケア・プランニングを進めるなかで患者サイドから求められる情報が、医療に関することだけでは終わらないケースが多く、対応に苦慮している」という話を、看護職の方から度々聞くようになってきました。

どうもその背景には、未婚率の高まりや離婚率が増えたことにより、「おひとりさま」と呼ばれる単身者、とりわけ一人暮らしの高齢者が増えている現状があるようです。

具体的には、アドバンス・ケア・プランニングの話が進んでいき、「どこで看とられたいか」「どう看取られたいか」の話の流れとして、看とりの後のことに話が及び、「葬儀やお墓の手配はどうしたらいいでしょうか」と相談され、対応に戸惑うことが少なくないというのです。

このような相談には、院内にケースワーカーなど社会福祉の専門家がいればバトンタッチできるでしょう。しかし中小規模の病院などでは、その領域の専門家がいない例がほとんどで、そのため答えに窮してしまう看護師さんが少なくないようです。

「最期のその先のことも知りたい」
に看護師の支援は?

そんなときの対応の一例として、病院勤務歴がそろそろ四半世紀になるという看護師長さんが語ってくれた話を紹介しておきましょう。
彼女は数年前に、長年連れ添ってきたパートナーに急死されるという体験をされています。
夫婦そろって1人っ子であることと、共に両親をすでに亡くしていて、お子さんもいないため頼れる身内はいませんでした。

夫の突然の死を受けて「お葬式など、この先どうやって夫を送ってあげたらいいのだろう」と考えあぐねたといいます。
そしていきついたのが、インターネットで情報を集めてみることだったそうです。

ネット検索をしてみると、全国規模で無料の資料を送付するサービス展開をしている葬儀社があることがわかりました。早速数社から資料を取り寄せ、簡単な見積りをしてもらったうえで比較検討し、自分なりに「ここなら」と納得できる葬儀社を選び、なんとか滞りなく夫を見送ることができた――。

「自分はひとり者なので死後のことも準備しておきたい」と支援を求められたときには、こうした自らの体験を紹介しているそうです。

病院に出入りしている葬儀社もあるでしょうから、早い話、そこを紹介すればいいのではないかとの意見もあるでしょう。しかし、患者側の宗教や予算の問題などもあるなかで、「お世話していただいてきた看護師さんからの紹介だから断りにくい」など、かえって負担をかけてしまうことにもなりかねません。

また「病院と葬儀社とがつながっているように思われるのではないかと思うと、紹介するのも気が引ける」という看護師さんの声も多いと聞きます。
そこで、
看護師長の話を一例として紹介してみました。

アドバンス・ケア・プランニングが
今以上看護に求められる時代に

平成29年版高齢社会白書(内閣府)によれば、65歳以上のひとり暮らし高齢者は男女ともに年々増加しており、その数は、平成27(2015)年の時点で男性約192万人、女性約400万人となっています。
高齢者人口に占めるその割合でみると、男性では1割強の13.3%、女性はその2倍に近い21.1%となっています。

こうした現状を考えると、高齢者だけをみても単身者の増加は止められそうになく、これからのアドバンス・ケア・プランニングの看護実践には、さらに幅広い知識と、関連領域の人びととのより緊密な連携が求められていくことになりそうです。

なお、厚生労働省はアドバンス・ケア・プランニングのいっそうの普及のためにと、アドバンス・ケア・プランニングに「人生会議」という愛称を決めています。
この名付け親が現役の看護師さんだったことを紹介する
ACPの愛称決まる、名付け親は現役看護師』も併せて読んでいただくと、アドバンス・ケア・プランニングの概要をよりおわかりいただけると思います。