世界肝炎デーと「肝炎医療コーディネーター」




知識

新型コロナウイルス感染者より
圧倒的に多い肝炎ウイルス感染者

日本人はもちろんですが、世界的に見ても最も多い肝臓病は、ウイルス性肝炎です。
これにはA型、B型、C型、D型、E型等があります。
このなかで飛びぬけて多いのは「B型肝炎」と「C型肝炎」です。

世界レベルでその数を見ると、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus;HBV)に持続感染*している人は3.5憶人以上、C型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus;HCV)に持続感染している人は1.7憶人以上と推定されています。

これに対しWHO(世界保健機関)は、私たちが今まさに日々闘っている新型コロナウイルスの累計感染者が、世界で1,500万人を超えたと言明しています(2020年7月22日現在)。

この数に比べれば、肝炎ウイルスに感染している人がいかに多いかが実感できるというものですが、いかがでしょうか。

毎年7月28日は世界・日本肝炎デー

このウイルス性肝炎についてWHOは、2010年、
⑴ 世界的レベルでの蔓延(まんえん)にブレーキをかける
⑵ 患者・感染者に対する差別・偏見を解消する
⑶ 徹底した感染予防策を推進する
等を目的に、毎年7月28日を「World Hepatitis Day(世界肝炎デー)」と定め、全世界で肝炎に関する啓発活動に取組むことを提唱しました。

これを受け日本国内では、2012年に、厚生労働省が7月28日を「日本肝炎デー」と定め、以降、肝炎ウイルス検査の受検勧奨と、新たな感染の予防を目指し、ウイルス性肝炎の予防や治療について正しい理解が進むよう普及啓発および情報提供を行っています。

さらに、「日本肝炎デー(7月28日)」を含む月曜日から日曜日までの1週間を「肝臓週間」と定めています。今年は7月27日から8月2日がそれに当たります。

肝臓週間の間には、毎年、国や自治体レベルで、ウイルス性肝炎に関する正しい知識や治療に関する最新情報の提供、肝炎ウイルス相談や検査等の取組みが行われることになっています。

ただし今年(2020年)は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、3密になるイベント等の開催は見送られています。

*持続感染とは、ウイルスが一時的な感染(一過性感染)で終息することなく、長期にわたり体内にすみついてしまい、持続的な感染を起こすこと。
現在のところ持続感染するウイルスとしては、B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルス、およびエイズの原因であるヒト免疫不全ウイルス(Human immunodeficiency virus;HIV)の3つが確認されている。
これらのウイルスによる職業感染についてはこちらの記事を。

肝炎患者等の身近な相談役
「肝炎医療コーディネーター」

B型肝炎もC型肝炎も、多くは、ウイルスに感染して一過性の肝炎を起こした後、そのまま肝機能が一生を通して安定するものです。

しかし、なかには一過性感染で終わらず持続感染に移行して肝炎が慢性化し、やがて肝硬変、さらには肝がんへと進展するケースが少なからず出ています。

このような経過をたどるのは、
⑴ 国や職場が実施しているウイルス性肝炎検査を受けていないために感染に気づいていない
⑵ 検査結果から感染したことを知らされていても治療を受けていない
⑶ いったんは治療を開始したものの中断している
といった人に多く、知らないうちに肝炎が慢性化していき肝硬変へ、さらには肝がんへと進行していることが明らかになっています。

そこで国は、2017年4月25日、肝硬変や肝がんへの移行者を減らすことをねらった肝炎対策の一層の充実を図ろうと、各都道府県知事に対し、「肝炎医療コーディネーター(肝炎コーディネーター)」の養成と積極的な活用を求める通知*¹を発出しています。

この通知では、肝炎医療コーディネーター養成の目的として、以下の3点をあげています。

  1. 身近な地域(医療現場を含む)や職域に肝炎医療コーディネーターを配置することにより、肝炎患者やその家族への支援をきめ細かく行うとともに、肝炎への正しい理解を周辺住民や職場の職員に広く浸透させる
  2. 肝炎医療コーディネーターが住民や肝炎患者などに直接働きかけるとともに、コーディネーター間で密に連携して専門医療機関や行政機関などへ必要な橋渡ししていくことにより、「肝炎ウイルス検査の受検(検査を受けること)の勧奨」や「(陽性者の)医療機関の受診」「治療の継続」といった検査後のフォローアップが円滑に進むように働きかけ、肝硬変や肝がんへの移行を予防、または遅延させる
  3. 身近な地域や職場で肝炎医療コーディネーターが活動して、肝炎への正しい理解を社会に広げることにより、肝炎患者や家族への差別や偏見の解消につなげる

各都道府県が認定する
肝炎医療コーディネーター

肝炎医療コーディネーターの所属先は、以下の3つに大別することができます。
⑴ 各都道府県の拠点病院や専門医療機関、および検診機関
⑵ 保健所や市区町村の肝炎対策担当部署などの行政機関
⑶ 企業の健康管理部門、人事労務課などの職域

このうち⑴の医療機関や検診機関の肝炎医療コーディネーターに就くことができるのは、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師、医療ソーシャルワーカー(MSW)をはじめとする医療従事者や医療機関の職員です。

医療機関・検診機関における活動内容

その具体的な活動内容として、通知では以下をあげています。

このうち以下の「7」にある「仕事と治療の両立支援」については、2020年度の診療報酬改定により慢性の肝疾患患者が「療養・就労両立支援指導料」の算定対象に加えられたことから、肝炎医療コーディネーターの活動への期待がいっそう高まっています。

  1. 肝炎医療に関する情報、知識等の説明、肝炎ウイルス検査の受検案内
  2. 肝炎ウイルス検査陽性者への受診勧奨、専門医療機関の紹介
  3. インターフェロンなどによる抗ウイルス治療後も含めた継続受診の重要性(ウイルス排除後も発がんリスクがあることなど)の説明
  4. 肝炎患者やその家族への生活面での助言、服薬や栄養の指導
  5. 定期検査費や医療費の助成、身体障害者手帳等の制度の説明や行政窓口の案内
  6. C型肝炎訴訟やB型肝炎訴訟に関する窓口案内
  7. 仕事や育児と治療の両立支援相談に関する窓口案内
  8. 医療機関の職員向け勉強会の開催
  9. 拠点病院などで実施する肝臓病教室や患者サロンなどへの参加
  10. 地域や職域における啓発行事への参加、啓発行事の周知

肝炎医療コーディネーターになるには

肝炎医療コーディネーターになるには、各都道府県が指定する「肝炎医療コーディネーター養成セミナー(研修)」(基本年1回実施。無料)を受講し、試験に合格する必要があります。

合格者には、知事より養成セミナー(研修)の修了証書、あるいは「肝炎医療コーディネーター認定証」が交付されます。

認定の有効期間、いわゆる「任期」は、「養成セミナー(研修)当日から受講した年の5年後の末日まで」としている都道府県が多いようです。
なかには段階的なフォローアップ研修を義務づけているところもあります。

詳しくは「肝炎医療コーディネーター〇〇県」などで検索して、担当部局のWebサイトをチェックしてみてください。

参考資料*¹:厚生労働省「肝炎医療コーディネーターの養成および活用について(通知)」