高血圧患者の熱中症予防に減塩指導は?




水を飲む

減塩治療中の高血圧患者も
熱中症予防に塩分が必要?

今日、2019年7月23日は二十四節気*では「大暑(たいしょ)」と言って、暑さが最も厳しい日に当たるそうです。今年は異常気象により多くの地域が大変な豪雨に悩まされましたが、やっと梅雨が明けて夏本番。熱中症予防が欠かせないシーズンとなります。

一昨日あたりからテレビの気象予報などでも、「熱中症に注意して、不要不急な外出を避け、屋内では冷房と扇風機を上手に使いましょう。水分や塩分をこまめに摂りましょう」などと繰り返し注意を呼び掛けています。

しかしこの呼び掛け、特に「水分と塩分をこまめに摂る」よう勧められて、「実は大変困っている」という方が少なからずいることにお気づきでしょうか。
そうです。かかりつけ医などから高血圧を指摘され、「このままでは脳卒中や深刻な心臓病につながる危険がある」などと言われて減塩食を続けている高血圧の患者です。

熱中症予防のために塩分を摂ったほうがいいのか、それとも血圧をこれ以上上げないためにいつもどおりの減塩を続けた方がいいのか――。
このような疑問にどう応えたるべきか、確かな情報を一、二まとめておきたいと思います。

MEMO
*二十四節季(にじゅうしせっき)とは、太陽の動きをもとにした暦のこと。1年を春夏秋冬の四つの季節に分け、さらにそれぞれを6つに分けて、季節の移り変わりがはっきりわかり、農作物の生産者などが季節に合った対応をとりやすいようになっている。節季の間隔は約15日であるため、カレンダーの日付通りではなく、たとえば大暑が来年も7月23日とは限らなくなる。

高血圧の人は夏でも
1日6g未満の減塩を

高血圧患者の熱中症予防については、日本高血圧学会の減塩委員会がホームページ上の「さあ、減塩! ~減塩委員会から一般の皆様へ~ 」と題するコーナーのなかで、「夏の日常生活における水分と塩分の摂取について:熱中症予防と高血圧管理の観点から」と銘打ったメッセージを発信しています。

そこでは、「水分は夏には多く摂ることが望まれます」として、とりわけ暑い環境下にいなくても、汗をかくなど皮膚からの不感蒸泄によって脱水状態に陥りやすく、熱中症の危険性も高まるため、血圧が正常か高血圧かに関係なく、水分は十分に摂るようにと促しています。
一方で、塩分については次のように記されています。

食塩(ナトリウム)は高血圧の人は夏でも制限することが望まれます
夏は発汗により塩分(ここではナトリウムのことを「塩分」と記載します)やカリウムなどのミネラルがいくらか失われますが、日本人の食塩摂取量は平均1日10g程度と多く、必要量をはるかに超えています。高血圧の人は、原則として夏でも適切な減塩が必要で、1日6g未満が望まれます。

(引用元:日本高血圧学会ホームページ*¹)

発汗が多いときは経口補水液で水分と塩分補給を

上記のように、基本としてはいつもどおり塩分制限を続ける必要があるとしています。
そのうえで、これからの季節に多い高温多湿の環境下、スポーツなどで大量に汗をかいた場合は、汗と一緒にからだから多少の塩分も失われることに配慮するよう注意を促しています。

発汗が多い場合には、水分とともに少量の塩分を補給することが望まれます
高温環境下での作業や運動などでとくに発汗が多い場合には、水分だけを補給すると血液のナトリウムやカリウムが低くなることがあります。
その場合は、水分とともにスポーツ飲料や経口補水液などで塩分・ミネラルを補給することが勧められますが、スポーツ飲料で補給の際には糖分の摂りすぎに注意が必要となる場合があります。
なお、通常の食事を摂っている方は、意識的に塩分摂取を増やす必要はありません。日頃から減塩を心がけている方や高血圧などで薬を服用中の方は、適切な水分と塩分補給についてかかりつけの先生にご相談ください。

(引用元:日本高血圧学会ホームページ*¹)

なお、ここで言及されているスポーツ飲料に含まれる糖分については、たとえば500ml入りのペットボトルの場合、1本に30g前後の糖質、つまりブドウ糖、果糖、ショ糖(砂糖)などの炭水化物が含まれています。その量を角砂糖に換算すると、なんと6~8個分、スティックタイプのシュガーなら8~10本にも相当します。

また、糖質のなかでも特に果汁に含まれる果糖やショ糖は、体内で脂肪に変わりやすく、肥満につながりやすいこと、またペットボトルの成分表を見て「糖分」の記載がないからと安心することなく、「炭水化物」をチェックするように伝えておきたいものです。

高血圧の有無に関係なく
熱中症予防の基本は暑さを避ける

そもそも熱中症は、高温多湿な環境下に長く身を置くことにより、徐々に体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れて、体温調節機能がうまく働かなくなった状態をいいます。
その結果、体内に熱がこもり、体温の上昇やめまい、頭痛、ときに痙攣などの症状が引き起こされ、最悪、いのちを失うことにもなりかねません。

こうした熱中症発症の経緯を考えると、「真夏日や猛暑日は不要不急な外出を避け、屋内では冷房と扇風機を上手に使う」などして暑さを避けるようにしてさえいれば、熱中症は基本的には予防できるはずのものです。

そこで熱中症予防をアピールしようと、気象庁は「高温注意情報」を、環境省は「熱中症予防情報サイト」にて「暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature:WBGT)をそれぞれ公表して、広く警戒を呼び掛けています。

在宅療養中の高血圧患者には「暑さ指数」の活用を

「暑さ指数」とは、地域ごとの気温や湿度、日射・輻射といった周辺の熱環境をもとに、次の5段階で熱中症の危険度を指数化したものです。

全国841地点における当日、翌日、翌々日の3時間ごとの予報値、および現在の暑さ指数を色分けしてサイト(コチラ)で紹介するとともに、メール配信でも提供しています。

  • ほぼ安全(21℃未満)
  • 注 意 (21~25℃)
  • 警 戒 (25~28℃)
  • 厳重警戒(28~31℃)
  • 危 険 (31℃以上)

在宅療養中の高血圧患者には、これらの情報をチェックするとともに、室内に温度計を常設して室温が、暑さ指数で「厳重警戒」に相当する28℃を超えないよう、エアコンや扇風機を上手に活用することも、熱中症予防のみならず高血圧の管理上も大切であることを伝えていただきたいものです。

最近は、タニタ 黒球式熱中症指数計 熱中アラーム なども市販されています。1台設置してあれば、安心ではないでしょうか。

なお、今年4月に改訂された「高血圧治療ガイドライン2019」では、降圧目標値、つまり降圧治療を始めた患者が目標とすべき血圧の値が10㎜Hg引き下げられています。

この件については、こちらの記事を参照してください。
→ 「高血圧治療ガイドライン2019」の改訂ポイント

引用・参考資料*¹:日本高血圧学会ホームページ