リエゾン精神看護専門看護師の手を借りては?

リエゾンナースと話す

メンタルセルフケアの助っ人
リエゾン精神看護専門看護師

患者・家族の希望をできるだけかなえてあげたいと、日々献身的に看護に携わっておられる皆さんが、心身ともに疲れてしまっている実態と、疲れ果てないために「自身のケアを怠らないで!」との思いを、先に記事にまとめました。

医師同様に看護師という職業も極めてストレスの高いものであることは改めて言うまでもない。過度の疲労状態から燃えつき症候群に陥る人が多い。いわゆる「バーンアウト」だ。そうならないように、患者の心を癒すように自らのメンタルケアも忘れずに!!

今回は、その、看護師さん自身のセルフケア、とりわけストレス対策のような精神面のケア、いわゆるメンタルセルフケアにおいて、強力な助っ人となってもらえる「リエゾン精神看護専門看護師」いわゆるリエゾンナースにスポットを当ててみました。

ところでこの「リエゾンナース」ですが、臨床でリエゾン活動をしている看護師さんのなかには、精神看護専門看護師の有資格者ではない方も少なからずいて、支援の方法論は若干異なっているようです。

もちろんメンタルヘルス支援に精通しておられることには変わりありません。

しかし、具体的な方法論に多少の違いがみられることを考え、以下は、専門看護師の有資格者である「リエゾン精神看護専門看護師」の活動に的を絞り話を進めていきたいと思います。

「師長に知られるのでは」と
相談できずにいませんか

もう10年ほど前になるでしょうか。別件での取材中に大学病院の看護師長さんから、リエゾン精神看護ということに関連してこんな話をうかがったことがあります。

看護スタッフに対するメンタルヘルス支援をより充実させたいと考え、リエゾン精神看護専門看護師専用の相談窓口を設置してみた。ところが、なかなか活用してもらえない。

どうも看護師たちは、看護で行きづまっていることやスタッフ間のトラブルなど個人レベルでの悩みや不満を相談すると、直属の看護師長である私に筒抜けになってしまうのではないかと、不要な心配をして、相談できずにいるようだ、と――

話を聞いて、「ありそうな話だ」と思ったことを記憶しています。

その当時は、看護師さんのメンタルヘルスの大切さが、今ほどは注目されていませんでした。

何よりも、リエゾン精神看護という学問領域については、その存在自体が、あまり知られていませんでしたから、「まあ、やむをえないのかな」「時間をかけて普及をはかっていくしかないのかなぁ」と、思ったりもしていたものです。

相談者本人の了解なく
相談内容が他言されることはない

「釈迦に説法」で恐縮ですが、精神看護専門看護師の方に限らず、看護師さんなら誰もが、看護師として一歩を踏み出す際に、ナイチンゲール誓詞を暗唱して、「任務上知りえたすべてを人に漏らさない」ことを誓っているはずです。

さらには、看護師の倫理に関する国際的な綱領である「ICN 看護師の倫理綱領」でも、
「個人情報を守秘し、これを共有する場合には適切な判断に基づいて行う」と、守秘義務を謳っていることは重々承知しておられるでしょう。

ですから、たとえばリエゾン精神看護専門看護師につらい胸の内を打ち明け、その原因が、たとえば看護チーム内にあることが判明したとしましょう。

さらに、その問題を解決するには看護チーム内での話し合いが必要と判断されたとしても、相談を受けた専門看護師が、いきなり直属の看護師長やチームの仲間に、あなたの相談内容を伝えるということはありえません。

まずは、今のつらい気持ちがどこから来ているのかを、リエゾン精神看護専門看護師と一緒に考えます。

そのうえで、「やはりチームで話し合ってみる必要がある」と、相談者であるあなたが納得した場合に限り、「では、話し合いをもつことを看護師長さんに提案してみましょう」となったとしましょう。

その場合、看護師長に提案することに「そうですね」と、あなたの了解が得られた場合に限って、チームでの話し合いにつながっていくはずなのです。

仮にそのとき、相談者であるあなたが「職場の上司やチームのみんなに話すのはまだちょっと待ってほしい……」と躊躇するとしましょう。

そうなったときは、相談を受けたリエゾン精神看護専門看護師は、別の答えを一緒に探してくれるはずです。

専門看護師による支援は
コンサルテーション手法が魅力

ところで、看護師さんのメンタルヘルス支援の担い手は、リエゾン精神看護専門看護師だけではありません。

院内にいるカウンセラーや臨床心理士など心理職スタッフも、相談に行けばそれなりの対応をしてくれるでしょう。

ですから、彼らに話を聞いてもらってもいいのですが、まずの相談相手としておすすめしたいのはリエゾン精神看護専門看護師です。

なぜなら専門看護師は、寄って立つ土壌があなたと同じ、看護だからです。

それだけに、日々の患者・家族や看護・医療チームのスタッフたちとのかかわりのなかで、あなたが何に戸惑い、悩み、行き詰っているのかを、かかわりを振り返りつつ、あなたの悩み事をより具体的に理解したうえで、コンサルテーションという方法を用いて一緒に解きほぐしてくれるという利点があります。

看護を一緒に振り返ることを通して

一緒にかかわりについて話し合い、解きほぐすプロセスを進めていくなかで、「なかなか実感できずにいた看護の成果に気づくことができた」「チームスタッフの気持ちをわかり合うことができた」といった実感をえることができるのです。

その結果、不満や悩みが、解消とまではいかないまでも、少なからず和らいでいくのを感じることができ、「看護に取り組む意欲を取り戻すことができた」といったような前に向き直そうとする――。

そういった看護師さんの声を、これまでの取材で数多く聞いてきました。

その一例として、リエゾン精神看護専門看護師のコンサルテーションにより離職をとどまった看護師さんの話をこちら記事で紹介していますので、読んでみていただけたら嬉しいです。

「看護コンサルテーション」と「相談」はどう違うのか。そんな疑問を抱えつつ専門看護師のコンサルテーションを受けてみた。結果は、日々の看護を振り返るなかで、「自分は役に立っている」と、看護師としてのやりがいに気づくことができたという話です。

このコンサルテーションの実際の流れについても、精神看護専門看護師の平井元子氏の著書『リエゾン―身体(からだ)とこころをつなぐかかわり 』*¹に詳しく紹介されています。

看護師さんなら一度ならずとも経験されるようなかかわりの戸惑い場面がいくつも登場しています。参考にされてみたらいかがでしょうか。

院外に相談相手を求めるのも

なお、コロナ禍にあって、なにかと悩むことも多いことと思います。

日本看護協会の統計によれば、2022年3月17日現在で、全国の精神看護専門看護師は383名とのことですから、リエゾン精神看護師のような方が身近にいない方もいるでしょう。

そんな方のメンタル面の相談先としては、全国にある精神保健福祉センターを利用するのもいいのではないでしょうか。

新型コロナの感染拡大がいっそう深刻化している。患者の対応に当たる医療従事者に係る精神的負荷の大きさは想像を絶し、バン―アウトやうつ傾向が3割強にみられると聞く。重症者の増加による医療崩壊が懸念されるが、まずは医療従事者がつらさを語れる場の確保を考えたい。

医療メディエーターに相談も

あるいは、悩みの内容によっては、このところ普及が進んでいる医療メディエーターに相談するのもいいのではないでしょうか。

社会問題になっている職場におけるハラスメントは医療現場も例外ではなく、多くの看護職が被害者と聞く。対話不足が主因なら、医療現場で最近力を入れている医療メディエーション、つまり「対話による関係構築」の手法をハラスメント対策に活用してはどうかと考えた。

参考資料*¹:平井元子著『リエゾン―身体(からだ)とこころをつなぐかかわり 』(仲村書林)