看護師の対人力が
円滑なチーム医療の推進力に
あらゆる仕事がそうであるように、看護もまた、人と人とがかかわり合うことで成り立っています。前者の「人」を「看護師さん」とすれば、後者の「人」に該当するのは、まずは「患者や家族」でしょう。
看護師さんの場合は、それだけではありません。
病院の内外を問わず「チーム医療」が重要視される現在にあっては、チームとして連携し、協働していく仲間たちもそこに加わってくると思います。
具体的には、医師や薬剤師など、あるいは最近連携機会が増えているケアマネジャーといった地域で活動する医療や福祉領域の専門職でしょうか。
ゆるぎない信頼関係のもとに、チームメンバーが一体となり、それぞれに与えられた役割を果たしつつ円滑に仕事を進めていくことが、患者・家族への質の高い看護の提供につながっていくのだろうと思うのですがいかがでしょうか。
そこで今回は、このチーム医療のキーパーソン役を期待されている看護師さんの、良好な対人関係を構築していく力、いわゆる「対人力」について、一冊の本の紹介と合わせ、まとめてみたいと思います。
対人力とは、「私はOKです」と
相互に言える接点を見出す力
対人力という言葉を私が初めて知ったのは、10年ほど前だったでしょうか。
大企業の管理職を対象にしたセミナーの広告記事に、
「部下を動かす対人力を高める」
と大きく書かれているのを見て、ちょっと違和感を覚えた記憶があります。
その違和感、つまり「えっ、対人力ってそういう意味ではないだろう!」と直感した原因は、「動かす」という言葉にありました。
部下の意向はいっさいかまわず、一方的に自分の考えだけを押し通そうとする――。
まさに企業戦士と呼ばれるような管理職の立場にある人たちにありがちな強引さ、傲慢さを、「動かす」という表現に読みとったからです。
その後何年かして、看護の世界においても看護管理者を中心に、対人力という言葉が使われるようになりました。
取材でお話をうかがうなかで、あるいは取材の下準備として看護研究の論文などを読んでいて、「対人力は看護師にとって欠かすことのできない力」といったような表現に出合う機会が多くなってきました。
その大半は、「よりよい人間関係を築く力」といった意味合いで使われていたように思います。
対人力とは「人づきあいの能力」
看護領域におけるこのような「対人力」という言葉の使い方、あるいは解釈には、あまりにも漠然としすぎていて物足りなさをずっと感じていました。
しかし最近になってやっと、「なるほど」と、合点のいく解釈に出合うことができました。
『対人力のコツ──人間関係が楽になる94の知恵』(自由国民社)という本のなかで、著述家であり、産業界を中心に心理カウンセラーを務めてもおられる著者の植西聰(うえにしあきら)氏は、こんなふうに説明しているのです。
対する相手との間に「アイムOK、ユーアーOK」という一致点、
つまりそれぞれが「私はOKです」と了解し、満足できる接点を見つけ出す力、簡単に言えば、人づきあいの能力こそが「対人力」である――、と。
迎合することなく
人と上手につき合っていく能力
ところで、この「人づきあい」という言葉ですが……。
この言葉を使う場面をイメージしてみると、「あの人、人づきあいが上手いわね!」といった使い方をしていることが多いように思いますが、どうでしょうか。
そのようなとき、こころのどこかに、「まったく、あの人、お調子者なんだから!」といった、相手に対するどちらかと言えばネガティブな気持ち、感情があるように思うのですが、そんなことはないでしょうか。
もしあるとしたら、相手にそんなことを感じさせるような人は、おそらくは、真に「対人力が高い」とは言えないのだろうと思います。
対人力が高い人は無理なく理解し合える
人には相性というものがあります。
ですから、看護師のあなたは、おそらく苦手な患者や同僚看護師、医師などともかかわらざるを得ない場面が少なからずあるでしょう。
そんなときであっても、
⑴ 苦手意識に振り回されることなく、
⑵ 相手に迎合(げいごう)、つまり相手の気に入るように調子を合わせることもなく、
⑶ 相手の主張をきちんと受け入れ、
⑷ 時に自分の主張も的確に伝えて、
お互いが無理なく理解し合うことができる……。
対人力が高い人とは、そういう人のことなんだろうと思います。
表情の豊かさも対人力を高める要因
そのために求められる能力として、著者は、以下をあげています。
- 対人関係力をのばすコミュニケーションスキル
- 交渉力(相手との妥協点、合意点を見つける力)
- リーダーシップ
- 伝える技術
- 感情的にならない、つまり自らの感情をコントロールできる能力
- 打たれ強さ(簡単に崩れない精神的強さ)
そこにあえて私は、看護師さんの対人力の一要因として、フェイシャルフィットネス パオ などで鍛えた豊かな表情、そして笑顔をあげたいと思います。
これらの能力をいっそう高めていていくうえで、たとえば前回までにこのブログで紹介してきた以下の記事なども、十分役立てていただけると思います。
ぜひ一度目を通してみてください。
加えて、看護師さんを取材させていただいているとよく話題にのぼってくる「アサーション(assertion)」とか「アサーティブ(assertive)」、つまり自己表現力といったことも、医療現場における人間関係の構築といったことに大きく影響してくるんだろうと思います。
この点についてはコチラの記事を読んでみていただけたら嬉しいです。