入院中の子どもの笑顔を取り戻す「臨床道化師」




ピエロ

小児病棟の子どもたちに
笑顔を届けるクラウン

病気の子どもたちに笑顔を、そして子どもらしさを取り戻してもらおうと、小児病棟を定期的に訪問し、子どもたち一人ひとりと、ゲームをしたり、歌を歌うなどして励ます活動を続けている「ホスピタル・クラウン」と呼ばれる臨床道化師の団体があるのをご存知でしょうか。

これまでの15年間、北海道から沖縄まで、およそ96の病院の小児病棟に、赤い鼻をつけた道化師(クラウン)姿の協会メンバーを、月に1~2回、定期的に無償で派遣し、闘病中の子どもたちに笑顔を届ける活動を続けています。

しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響で、病院の面会が厳しく制限されるようになったことから、2月末から訪問活動を自粛せざるを得ない事態に……。

そこで3月7日からは、直接の訪問に代え、クラウンたちの手品やバルーンアートの動画をyoutube動画で配信するなどして、子どもたちに笑いを届けてきましたが、5月に入ってからは、新たなかたちでのライブ配信を計画している――。

先週前半、そんなニュースがいくつかのメディアで取り上げられました。
「笑いの効用」といったことを考えると、応援したくなるホスピタル・クラウンたちの新たな挑戦を紹介してみたいと思います。

コロナ禍を受ける
子どもたちに笑いの効用を

笑いの心身への効用については、難病である膠原病を、自ら「笑い飛ばして」克服したというアメリカのジャーナリストで作家のノーマン・カズンズ氏の話があまりにも有名です。

その詳しい経緯は、カズンズ氏がまとめた『笑いと治癒力 』(岩波現代文庫)を介して広く一般に知られることとなり、まずはアメリカにおいて、続いて日本においても「笑いの効用」を実証する研究結果が続々と報告されています。

国内での一例として、がん患者らに吉本新喜劇を鑑賞してもらい、その前後でがん細胞やウイルスを直接攻撃するナチュラル・キラー細胞(NK細胞)の活性化を調べた実験で、NK細胞の働きが活性化して免疫力が高められることが実証されています。

さらには、2型糖尿病で食事療法などにより治療中の患者に、夕食後に漫才を鑑賞してお腹を抱えて大笑いしてもらったところ、食後血糖値の上昇が抑えられたという報告もあります。

最近では、笑いの効用は免疫力を高めるだけでなく、笑いが引き起こすポジティブな感情が自己効力、つまりセルフエフィカシー(self-efficacy)を高め、病気に立ち向かっていく原動力となり得ることを、大阪国際がんセンター(大阪府)の研究チームが報告しています。

人との距離が求められる
今だからこそつなぎたい

闘病中の子どもたちに笑顔を届ける活動を続けているのは、自らもクラウンとしての活動を続けている大棟耕介(おおむね こうすけ)氏が理事長を務めるNPO法人「日本ホスピタル・クラウン協会」(名古屋市中村区)です。

新型コロナウイルスの影響は、感染者はもとより、このウイルスとは無関係の病気で入院中の子どもたちにも、家族との面会制限だけでなく、病院内で親しくなった仲間とさえ一緒に遊ぶこともままならないなど、さまざまなかたちで深刻な影響を与えています。

こうした事態を憂いたクラウンたちは、社会全体がピリピリしがちなこんな時期だからこそ、入院病棟の子どもたちには笑ってもらいたいと考えたようです。

よりリアルなパフォーマンスを動画配信するとともに、オンラインで家族とつながることにより、直接会えないつらさを多少なりとも和らげることができ、元気になってもらえたらと、新たなプロジェクトを企画しています。

オンラインで家族とつながりながら楽しむ

このプロジェクトでは、病棟にいる「子ども」と、病棟から離れた病院内、あるいは自宅にいる「その子の家族」、そして「クラウン」、さらに「プロの似顔絵師」の4者を、オンライン会議システム「Zoom(ズーム)」でつなぎ、ライブ配信するという計画です。

ここにプロの似顔絵師が加わるのは、オンラインでつながりながらクラウンのパフォーマンスを一家で楽しんでいる様子を、似顔絵師が一枚の似顔絵に同時ライブで描き上げ、それを画像データとしてプレゼントするためです。

新しい挑戦にかかる費用を
クラウドファンディングで

同協会は、新しい挑戦として企画したこのパフォーマンスを、先日、名古屋市や東京などの6家族を対象に、試験的に実施しています。

子どもも家族も大喜びしている姿を画面で確認できたことから、全国の闘病中の子どもがいる200家族に対象を拡大し、本格的に始めることにしたそうです。

プロジェクトを本格的にスタートさせるに際し、プロのクラウンや似顔絵師の人件費などに必要な費用を確保するため、インターネットを介して人々から資金を募る「クラウドファンディング」を、「6月20日(土)までに200万円」を目標に、5月17日からスタートしています。

募集終了まで残り6日となった6月24日時点で、193人の支援者により目標額まであと一歩の1,985,277円の支援金が集まっているそうです*¹。

プロの認定クラウンは
養成講座、病院研修を修了

なお、日本ホスピタル・クラウン協会のこの活動に参加している協会認定のクラウンは、面接や性格診断テストで適正チェックを受けた後、適正ありと判断された人のみが養成講座を受講し、受講後さらに病院での研修が課せられるという厳しい研鑽を積んでいます。

認定後も、多くの練習と経験が必要で、1年に1回は協会の全体会議に出席して認定更新を行うといったプロフェッショナルです。

このような厳しい鍛練を重ねる理由として、「病院での活動は非常にデリケートで、しっかり相手を観察できるスキルを身につけることが重要」だからとのこと。
これなら安心して訪問をお願いできるのではないでしょうか。

実際にホスピタル・クラウンの訪問を受けた病院スタッフの感想が、日本ホスピタル・クラウン協会のWEBサイトで紹介されています。
訪問を希望するなど、関心のある方は立ち寄ってみてください。

なお、プロの似顔絵師がホスピスや緩和ケア病棟などを訪れて「似顔絵セラピーを行っている話をこちらの記事で紹介しています。
是非読んでみてください。
→ 「似顔絵セラピー」が患者に笑いや癒しを

参考資料*¹:似顔絵とクラウンの「笑い」で闘病中の子どもとその家族を繋ぐ

参考資料*²:日本ホスピタル・クラウン協会