退院前訪問指導を実施していますか

チーム

退院前訪問指導で
患者の在宅での生活をイメージする

このブログでは、記事をまとめるに際し、何人かの現役医師や看護職の方々に相談かたがた情報提供をお願いしたり、公開する記事内容に間違いがないかどうかチェックしていただいたりしています。

すでに何回かご登場願っているW看護師も、そのなかのお一人です。

彼女は、退院調整という呼び名が一般的だった頃からずっと入退院支援を専任で担当し、そのキャリアはすでに5年に及びます。

先日、このW看護師から、「退院前訪問指導を行っている看護師はまだ少ないようですが」で始まるこんなメールが届きました。

「患者が退院していく先の療養環境や家族の介護力などを直接自分で確認しておけば、在宅での療養生活をイメージしながらその人に合った退院支援を行うことができます。診療報酬で評価の対象にもなっていますから、是非積極的に取り組んでいただきたいのですが……」

おっしゃる通りだと思います。

退院前に入院患者宅を訪問して行う指導については、2018(平成30)年度の診療報酬改定において加算条件が大幅に改定され、看護師が訪問して指導を行った場合にも「退院前訪問指導料」として580点を算定できるようになっています。

これを受け、病院側からすすめられるから退院前訪問指導を試してみたいという看護師さんの声が私のもとにも続々と届くようになっています。

しかし、具体的な情報がいまだ限られていることもあって、記事にしてお届けすることを躊躇していたのですが、W看護師の「私にわかることだっら協力するから」との声に背中を押され、ひとまずこれまでに知り得たことをまとめてみたいと思います。

退院前訪問指導は
療養環境の整備から始まった

調べていてちょっと驚いたのですが、わが国の診療報酬体系に「退院前訪問指導料」が新設されたのは、およそ30年前の1990(平成2)年のこと――。

しかも退院して自宅に戻る予定の患者が円滑に在宅生活に移行できるように、退院前に患者宅を訪問し必要な指導を行うというねらいも当初から同じでした。

ただ、訪問先における指導内容については、多少変化してきています。

当初は、患者の歩行能力などのADLに応じて、室内の段差を解消するとか、手すりを取りつけるといった住宅の改修を提案すると同時に、その居住環境に応じた動作指導や生活指導を行うといったことが中心だったようです。

このような指導内容から、すでにお察しのように、退院前訪問指導料を算定できるのは、理学療法士と作業療法士による退院前訪問指導に限られていました。

その後、訪問指導の担当者にケアマネージャーやホームヘルパーなど、介護保険サービスを提供する中心スタッフや訪問看護師が加わるようになり、2018(平成30)年度の改定に伴い、病院看護師や保健師が訪問指導を行った場合にも算定できるようになっています。

退院前訪問指導料とは
参考までに、「退院前訪問指導料」については、2018年度の診療報酬改定に関する厚生労働省の通知において次のように説明されています。
「入院期間が1月を超えると見込まれる患者の円滑な退院のため、入院中(外泊時を含む)または退院日に患家を訪問し、患者の病状、患家の家屋構造、介護力等を考慮しながら、患者またはその家族等、退院後に患者の看護に当たる者に対して、退院後の在宅での療養上必要と考えられる指導を行った場合に算定する」

退院前訪問指導の対象は
1か月以上入院し自宅に戻る患者

退院前訪問指導料算定の対象となる患者は、継続して1月を超えて入院し、退院後は自宅に戻ると見込まれる患者です。

退院後に、自宅ではなく、特別養護老人ホームのような医師や看護師が配置されている施設への入所を予定している患者の場合は、仮に、退院先からの要望などにより退院前訪問指導を行うことがあったとしても、算定の対象外となります。

また、退院前訪問指導料(580点)は、訪問先において指導を行う対象が患者本人なのかその家族なのか、あるいは家族に代わる介護キーパンソンなのか等にはいっさい関係なく、一律「1回の入院中に1回」と決められています。

ただし、時には入院後の早い時期(入院後14日以内)に退院前訪問指導の必要ありと判断して直ちに訪問指導を行うといったこともあるでしょう。

このような場合は、その結果を踏まえ、在宅での療養生活に向けて最終調整を行うために再度訪問指導を行うこともあり得ます。

その際は、指導の実施日に関係なく退院日に2回分(580点×2)を算定することができるようになっています。

いずれの訪問の場合も、担当者には、以下が求められています。

  1. 指導した内容についてその要点を診療録に記載する
  2. 実施に当たっては、最寄りの訪問リハビリテーション事業所の担当者に連絡するなど、その地域が実施している訪問事業との連携に十分配慮する

退院前訪問指導には
患者サイドの同意が不可欠

W看護師は、退院支援をすすめていくなかで以上の点を常に念頭に置きつつ、退院先の療養環境をあらかじめ確認しておく必要があるかどうかを考えるようにしているとのこと。

そのうえで、以下の条件に該当するなど、退院前に訪問して療養環境を確認し、住宅改修など必要な整備をしておく必要があると判断した患者については、その旨を真っ先に退院支援チームの仲間に伝えて意見を求めるそうです。

  1. 退院後も在宅酸素、栄養注入ポンプなどの医療機器を使用する
  2. 吸引や経管栄養などの医療的ケアが引き続き必要
  3. 独居あるいは高齢者だけの世帯で介護力に不安がある

この話し合い(退院前カンファレンス)において、退院前の訪問指導が必要であると話がまとまれば、患者の担当医と看護部長にその旨を報告。

両者の了解を得たうえで、患者本人か家族に訪問の主旨や費用のこと、個人情報に関する秘密保持を厳守することなどを伝えて了解を求め、簡単な同意書*に署名していただくようにしているとのことです。

*退院前訪問指導についての同意書には、「退院前訪問指導について説明を受けたこと」「退院前に訪問指導を受けることに同意すること」について、患者本人と家族の署名を受ける必要がある。

費用に関する説明も忘れずに

ちなみに、退院前訪問指導料の患者負担額は、健康保険の自己負担割合に応じて、「1割負担は580円、2割負担は1,160円、3割負担は1,740円」となり、退院日に入院費用として請求されることになります。この点についても説明をお忘れなく!!

なお、訪問時の主な確認事項としては以下があげられます。

  1. 退院後の患者が長い時間を過ごす居室としてはどこが適当か
  2. 退院後の患者が必要な医療処置やケアを受けながら療養生活をおくるうえで支障となる環境はないか、どのように工夫すればいいか
  3. 患者自身や家族が不安に思っていることは何か

このうち「2」の患者の状態に見合った療養環境を整えるうえで何らかの福祉用具が必要と判断した場合は、福祉用具専門相談員と連携することもあるそうです。

在宅に移行する患者には自立促進や介護負担軽減を目的に福祉用具の活用が勧められる。この福祉用具の選択、活用に精通した「福祉用具専門相談員」の存在をご存知だろうか。患者の病状や介護状況、生活環境を踏まえた助言の的確さの評価は高い。退院支援での連携を。

退院後訪問指導についてはこちらの記事を参照してください。

退院して自宅に戻った患者のことが気になっている、との看護師さんの声をよく聞きます。退院後の生活に向けてあれこれ指導してきたがあれでよかったのか。伝えたことがきちんと実践されているだろうか、等々。そんな方は「退院後訪問指導」制度の活用を!!