便秘対策に水溶性食物繊維配合のゆずゼリーを

柚子

頑固な便秘対策として
ゆず(柚子)ゼリーを開発

訪問看護師の友人から、「頑固な便秘が続く高齢者のご家族から、便秘にいいゆず(柚子)のゼリーがあるそうですがご存知ですかって聞かれたんだけど、あなた知ってる?」と尋ねられ、「そういえば」と思い出したことがあります。

少し前の新聞にこんな記事がありました。ゆずの産地として知られる高知県内の農協が、特産品のゆずで地域経済の活性化を図ろうと、高知大学医学部と共同で研究に取り組んでいて、便秘の解消効果が期待できるゆずのゼリーを開発した、という内容でした。

ゆずは、レモンやすだちと並ぶ柑橘類の代表格です。その香りのよさやほどよい酸味から、水炊きなどはもちろんですが、減塩食の味つけには欠かせない存在です。また、輪切りにしたゆずを浮かしてゆず湯を楽しむ人もいると聞きますが、そこまで贅沢はできないものの、ゆず入りの炭酸ガス系入浴剤は、私も毎晩使っています。

ゆずの実や皮の内側の白い部分には「フラボノイド」と呼ばれるポリフェノールの一種の植物色素が含まれています。

このフラボノイドの抗酸化作用(体内で増えすぎた活性酸素の酸化を防ぐ働き)や抗アレルギー作用がお肌の健康にいいと聞いてから、「入浴剤はゆず」と決めているのですが、便通改善にいいとなれば私も……との思いもあり、改めて調べてみました。

特産品のゆず果汁に
水溶性食物繊維を加えたゼリー

高知新聞によれば、当地特産品のゆずの果汁を使って便秘の解消効果をねらったゼリーを開発・商品化に成功したのは、高知県安芸郡にある馬路村(うまじむら)の農業協同組合(農協)と高知大学医学部の共同研究チームです。

馬路村農協と聞き、「ゆずの村ポン酢」や「馬路村のゆずこしょう」、「ゆずの村ゆずドリンク」などを思い出す方も少なくないでしょう。馬路村農協ではこれまでも、ゆず果汁を使ったさまざまな特産品を売り出していますが、今回開発・商品化されたのは、高知大学医学部とタッグを組んで初めての完成品とのこと。

ゆず果汁に水溶性食物繊維のβ-グルカンを配合した「ゆずちゃんゼリー」です。

ご承知のように便秘解消のポイントは、「腸内フローラ」とも呼ばれる腸内環境の改善です。大腸の働きを活性化させる「善玉菌」と大腸内の腐敗を進める「悪玉菌」、どちらか強い方の味方をする「日和見菌(ひよりみきん)」の3種類が、腸内にバランスよく存在する状態に持っていけばいいわけです。

その最も手軽な方法として、「ビフィズス菌」や「乳酸菌」などの善玉菌を多く含むヨーグルトを摂るのがいいことはよく知られています。

ところが、便秘で悩むことの多い方のなかには「ヨーグルトは苦手」な方が多いようです。また、乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)で牛乳や乳製品を摂ると「お腹がゴロゴロ」という方も、ヨーグルト類は苦手でしょう。

このような方にすすめられるのが、食物繊維の多い食品を意識してとることです。とりわけ腸の働きを活発にして便の滑りをよくする便通改善効果が期待できるのは、水溶性タイプの食物繊維です。そこで、ゆず果汁に水溶性食物繊維であるβ-グルカンを配合した、というわけです。

便秘がちな男女対象の臨床試験で
排便改善効果を確認

高知大学医学部高知馬路村ゆず健康講座のウエブサイトによれば、研究チームは「ゆずちゃんゼリー」の商品化に際し、ゆず果汁そのものに腸内の乳酸菌を増やして腸内環境を改善する効果があることを、マウスを使った実験で確認しています。

そのうえで、ゆず果汁の腸内環境改善効果をより強化する目的で水溶性食物繊維のβ-グルカンを添付してゼリー化させた試作品を、便秘がちな男女に3か月間食べてもらい、その効果をCASと呼ばれる便秘評価尺度を用いて検証する臨床試験(治験)を行っています。

その結果、この試作品を食べたグループは、ゆず果汁とβ-グルカンの入っていないゼリーを食べたグループに比べ、顕著な便秘改善効果が認められたとのこと。この排便改善効果に男女差はなく、試作ゼリー摂取による副作用もないことが確認されています。

高齢者や若い女性の便通改善に

「ゆずちゃんゼリー」の商品開発に取り組んできた研究チームの溝渕俊二特任教授(高知大学医学部共同研究講座教授/医学部看護学科教授・臨床看護学)は、12月24日(2019年)に行われた記者会見で、便秘に悩む長期療養中の高齢者はもちろんのこと、若い女性にも便通改善に役立ててもらいたいと、話しています。

その言葉どおり、手間をかけず手軽に食べられるように、また女性がバッグなどに入れて気軽に持ち歩けるようにと、スティックタイプ(1包18g)になっています。

この「ゆずちゃんゼリー」は馬路村農協のウエブサイト、また地元の方なら高知市南久保にある馬路村農協のアンテナショップ「Umaji」で購入することができます。

シンバイオティクス効果の「ヤクルト400W」も

なお、便通の改善に最近注目が集まっている「ヤクルト400W(ダブル)」のシンバイオティクスについては、こちらで紹介しています。是非読んでみてください。

訪問看護師の友人から、利用者の排便ケアに「シンバイオティクス」を取り入れたところ結果は大成功だった、と。シンバイオティクスとはあまり聞きなれない言葉だ。友人の場合は市販の機能性表示食品を使ったそうだが、食事でもできるその方法をまとめた。

第三の食物繊維「レジスタントスターチ」

便秘対策としてもう一つ注目の「第三の食物繊維」と呼ばれる「レジスタントスターチ」については、こちらを読んでみてください。

多くの人を悩ます便秘の改善には「食物繊維」が欠かせない。この食物繊維には水溶性と不溶性に加え、第三の食物繊維、つまりレジスタントスターチがある。糖質の代表格であるでんぷんでありながら食物繊維の働きをして、腸活によりダイエットやメタボ予防に貢献してくれる。

長引く便秘は認知症リスクを高める?

便秘に関連して、注目すべき研究報告があります。国立がん研究センターの研究チームは、将来の認知症発症に排便習慣(排便頻度と便の硬さ)が大きく影響していることを大規模な疫学調査の結果として発表しているのです。

若いうちから便通の改善を心がけることが、認知症予防につながることが実証されています。認知症予防策としては「脳活」に力を入れている方が多いでしょうが、実は「腸活」も大事であることが実証されているのです。詳しくはこちらを。

排便習慣(排便頻度と便の硬さ)が将来の認知症の発症に関連していることを、国立がん研究センター予防研究チームが大規模な疫学調査の結果として報告している。便秘気味の身には見過ごせない内容だ。腸内細菌が作る短鎖脂肪酸の減少が原因らしい。

参考資料*¹:高知新聞2019年12月25日
参考資料*²:高知大学医学部「高知馬路村ゆず健康講座」
参考資料*³:馬路村農協ウエブサイト