看護師も知っておきたい「精神腫瘍医」のこと




コーヒータイム

がん患者と家族の心のケアを
専門に行う「精神腫瘍科」

2か月ほど前になりますが、ネット検索をしていて、宮城県名取市にある宮城県立がんセンターに、東北で初めてとなる「精神腫瘍科」が、今年(2019年)4月に開設されたことを伝える新聞記事*が目に留まりました。

その記事では「精神腫瘍科」を、おおむねこんなふうに説明していました。
がん患者とその家族の心のケアを専門に行う診療科であり、手術や闘病などに伴う精神的な不調に特化して診察、治療に当たる、と――。
*河北新報 2019年10月1日配信

この記事を読んでいて、がん告知を受けた患者が陥りがちな気持ちの落ち込みや不安、さらにはうつ症状のケアについて、サイコオンコロジー(精神腫瘍学)がご専門の内富庸介(うちとみようすけ)医師を取材したときのことを懐かしく思い出しました。

当時は、「精神腫瘍学」とか「精神腫瘍医」という言葉自体、一般にはもちろんですが、医療関係者にもまだあまり知られていませんでした。

ですから私自身も、精神腫瘍医と精神科医の違いもあいまいなままの取材でした。
そんななかにあって、
「がん患者の心のケアは、このまま担当医の努力と看護師さんの献身的な自助努力だけに委ねていてはいけない」
という内富医師の言葉に、深く感銘を受けたことを今でもはっきり記憶しています。

「がん」と「心」の関連性を研究する
精神腫瘍学と精神腫瘍医

あの取材から15年余りを経た現在、がん医療が急速に進歩するなかにあって、がん患者や家族の精神面の問題にも真摯に目が向けられるようになりました。

この動きに連動して、がんセンターや大学病院など、全国のがん診療連携拠点病院を中心に「精神腫瘍科」を開設する動きが進んでいます。

そこでは、精神腫瘍医や精神科医、心療内科医に加え、臨床心理士などの心理職、薬剤師、そしてリエゾン精神看護専門看護師やがん看護専門看護師をはじめとする看護職がタッグを組み、がんと向き合う患者や家族の精神面のサポートを行っています。

このチームにおいて、このところ注目を集めているのが、「がん」と「心」の関連性を研究する学問、精神腫瘍学の専門知識を持つ精神腫瘍医(サイコオンコロジスト)です。

精神腫瘍学については日本サイコオンコロジー学会が、「心」の研究を行う精神医学・心理学(psychology:サイコロジー)と「がん」の研究をする腫瘍学(oncology:オンコロジー)を組み合わせた造語である、と説明しています。

この説明のもと、精神腫瘍学の臨床・実践活動に取り組む専門家である「精神腫瘍医の役割」として、次の3点をあげています。

  1. 疾病や治療に関する適切な情報を提供すること
  2. 決して孤立しないように情緒的に支えること
  3. 治療を続ける上で患者さんを悩ます不眠や不安、気分の落ち込みに対して、精神医学的な治療を含めたサポートを用意し、最善の治療を受けられるように医学的なサポートを提供すること

(引用元:日本サイコオンコロジー学会ホームページ

日本サイコオンコロジー学会は
会員の4分の1弱が看護職です

日本サイコオンコロジー学会は、医師だけの学会ではありません。
がんと心の関連性について研究する精神腫瘍学に関心をもつ医師、看護職、心理職、作業・理学療法士、薬剤師、ソーシャルワーカーなど多職種から構成されています。

学会のホームページによれば、2019年9月1日現在の会員数は1922名です。
サイコオンコロジーのメッカはアメリカですが、日本サイコオンコロジー学会の会員数はアメリカサイコオンコロジー学会を抜いて、今や世界最多になっているそうです。

会員の職種別内訳を見てみると、これもちょっとした驚きなのですが、トップは予想どおり医師の904名(47.0%)で、次に多いのが看護職の451名(23.5%)と、心理職の340名(17.7%)を上回り、以下薬剤師57名(2.9%)、学生38名(0.2%)と続いています。

なお、日本サイコオンコロジー学会は、2020年3月14日(土)、東京大学医学部にて「多職種支援セミナー」開催します。関心のある方は詳細をコチラから。

精神腫瘍医とがん患者たちとの
対話を通して知る心のサポート

最近になり精神腫瘍外来を開設する医療機関が全国的に増えているとは言え、「勤務先には精神腫瘍外来はないし、精神腫瘍医もいないから、精神腫瘍学に基づく心のケアが実際どのようなものなのか、自分たちが日常行っているケアとどう違うのか、具体的にイメージできない」という方が少なくないでしょう。

そういった方に是非読んでいただきたい本があります。
「がん患者とその家族に、精神腫瘍科の存在を是非知ってもらいたい」という、一人のがん患者の切なる願いから誕生したという『人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話』(KADOKAWA)です。

これまでに3500人以上のがん患者とその家族の悩みに耳を傾けてきたという精神腫瘍医の清水研(しみずけん)医師(国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科・科長)と7人のがん患者たちの対話をまとめた一冊です。

「がんを体験した人が100人いれば、100通りの悩みがありますから、第一に心がけるべきは、その人がどのような悩みを抱えているのか、十分に理解することです」
そんなふうに語っておられる清水医師が対話を重ねていく様子から、たくさんのヒントを見出すことができると同時に、精神腫瘍科という診療科で繰り広げられる心のサポート風景をくっきりとイメージしていただけるはずです。

なお、たとえば勤務先に精神腫瘍科はないが、がん患者と家族、遺族も含めて心のケアを試みているものの思うほどの変化が見られずに行き詰っていて、精神腫瘍医のようなプロにアドバイスしてもらいたいと考えることもあるでしょう。

そんなときは、最寄りの「がん相談支援センター」に相談するのもいいでしょう。
外部の医療スタッフからの相談にも快く対応してくれる精神腫瘍医を紹介してもらえるはずです。

がん患者のケアで迷い、専門看護師などに相談(看護コンサルテーション)したいと思っても、勤務先には相談できる人がいないことは少なくない。その際には最寄りの「がん相談支援センター」を利用してみてはどうだろうか。ということでがん相談支援センターについてまとめた。