夜間勤務は乳がん発症リスクを高める!?




看護師の乳がん記事

日本女性の12人に1人が
生涯に一度は乳がんを経験

ご承知のように、乳がんといえば、女性に最も多いがんです。
日本人のがん罹患状況については、2019年1月に国立がん研究センターがん情報センターが、最新の統計値をまとめて公表しています。

そのなかに、統計をとった2016年の時点で、女性の乳がん罹患数は、全国推定値で約7万6839例とあります。つまり、2016年の1年間に、全国で約7万6839人の女性が新たに乳がんの診断を受けているということになります。

この数は、女性のがん罹患全体の約20%を占めるそうです。
また、日本人女性が一生のうちに乳がんに罹患する確率は9%、すなわち12人に1人という数字もはじき出されています。

これらの統計値から、女性であれば誰もが、「私は大丈夫かしら」と心配になるところです。
とりわけ夜勤のある看護師さんには、巷で言われている「夜間勤務と乳がん発症リスクの関係」が気になるところでしょう。
そこで今回は、その真偽のほどを調べてみたいと思います。

看護師の夜間勤務と
乳がん発症リスクの関係は?

もう2年ほど前のことになりますが、ある歯科クリニックの待合室で目にした一つの週刊誌記事がずっと気になっています。

歯の痛みが強かったこともあり、その週刊誌名は覚えていないのですが、
「夜間勤務が女性の乳がんの発症リスクを高める」
といったタイトルだけは、はっきり記憶しています。

ちなみにその記事で、男性において夜間勤務とがん発症リスクとの関連性が指摘されていたのは、「前立腺がん」だったと、うっすら記憶しています。

夜間業務に携わる女性は、女性の社会進出とともに急ピッチで増加してきています。
その職種は実に多岐にわたりますが、なんといっても病院や介護施設などに勤務する看護師さんには夜勤がつきものです。

そう考えて改めてネット検索してみると、「夜勤が看護師の乳がん発症リスクを高めるというのは本当?」といった疑問は、かなりの方がもっているようでした。

夜勤の従事期間が長い人ほど
乳がん発症リスクが高まっている

乳がんを発症させるリスクファクター(因子)については、いろいろと挙げられていますが、確たるエビデンスのある信頼に足る情報は、日本乳癌学会がホームページ上で公開しているガイドライン*¹で見ることができます。

そのなかの「疫学・予防」の項では、内外の文献から導き出した科学的エビデンスに基づいたグレード分類(エビデンスグレード)により、乳がん発症リスクの度合いが素人にも一目でわかるように紹介しています。

順を追ってみていくと、「アルコール飲料の摂取」「喫煙」「肥満」「脂肪の食事摂取」など、乳がんとの関連が疑われるさまざまな因子が取り上げられています。

そのなかに、社会環境因子の一つとして「夜間勤務」が挙げられており、エビデンスグレードは「3」、つまり「可能性あり」となっています。

米国大学病院勤務の看護師を10年間追跡調査

そこにある「閲覧」をクリックしてみると、夜間勤務と乳がん発症との関連性を示す内外のエビデンスが紹介されています。

その冒頭にあるのは、アメリカの大学病院に勤務する看護師78,562人を対象に10年にわたり経過観察を行った疫学調査です。

2001年の報告で、データとしてはちょっと古いのですが、月に3回以上の夜勤を務めた期間が、1~14年、および1529年の看護師は、日中勤務だけの看護師と比較して、乳がんの発症リスクが1.08倍となっています。

ところがこれが30年以上になると、1.36倍であり、夜勤の従事期間が長いほど乳がんの発症リスクが高くなる傾向にあることが示されています。

昼夜交代勤務と乳がん発症リスクの関係は?

また、昼夜交代勤務を続けた看護師では日勤だけの看護師に比べ、乳がんの発症リスクが1.79倍高かったとする調査結果もあります。

ただ、昼夜交代勤務の期間が数年間にとどまっている場合は、乳がんの発症リスクを高めることはないとの調査結果も出ています。

このほかにも、夜間勤務と乳がん発症の関連を示唆しているものの、優位な関連性は認められないとの結論に至った疫学研究が紹介されています。

看護師の夜勤は
乳がんリスクを高める可能性がある

以上のような疫学調査の結果から、ガイドラインは、夜間勤務は乳がん発症リスクを増加させる可能性があると結論。

「確実」「ほぼ確実」「可能性あり」「証拠不十分」「大きな関連なし」の5段階あるエビデンスグレートのうち真ん中の「可能性あり」に該当するとしています。

つまりこういうことのようです。
夜間勤務については、乳がんの発症リスクに関連することが「確実」「ほぼ確実」と判断できるだけの十分な根拠はない。
しかしながら、ばらつきがあるものの、発がん発症リスクを高めることを示唆する一定の傾向が認められ、可能性を否定できないというわけです。

乳がんリスクを定期的にチェックし
乳がん発症の影響因子を予防する

もちろん夜勤をしているすべての女性が乳がんになるというわけではありません。
そこにはアルコールや喫煙などの生活習慣や肥満、さらには遺伝の問題なども大きく関係してきますから、過度に心配する必要はないかもしれません。

とはいえ、可能性がある以上、予防的行動をとったほうがいいでしょう。
自宅で簡単にできる自己触診によるセルフチェック、
あるいは最近流行の郵送により自宅で簡単にできるがんリスクチェッカー を利用して、腫瘍マーカーの「P53抗体」を調べ、乳がんリスクを定期的にチェックするのもいいでしょう。

この「P53抗体」は、早期がんの発見に有効な腫瘍マーカーです。
厚生労働省も、根治の可能性が高い段階でのがんの発見が可能であるとして、他の腫瘍マーカーと組み合わせて検査することを奨励しています。

なお、「母親が乳がんだから」などと遺伝的に考えて乳がんが気になる方の場合は、条件が異なりますから、遺伝に関するカウンセリング体制や遺伝子検査体制等が整っているがんゲノム医療拠点病院等に相談されることをおすすめします。詳しくはこちらを。
→ 遺伝性乳がん患者の予防的切除に初の保険適用

また、肥満を招くなどの食生活も影響因子と考えられますから、その点については別の記事でまとめていますので、是非参考にしてください。
→ 乳がん発症リスクを下げる食生活

参考資料*¹:日本乳癌学会診療ガイドライン