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無料で受けられるがん検診で
乳がんの早期発見を
女性に最も多いがんは乳がんです。最近の統計では、日本人女性が一生のうちに乳がんにかかる確率は約9%、つまり11人に1人が生涯に一度は乳がんを経験していることになり*¹、女性であれば誰もが、「私は大丈夫かしら」と心配になるところです。
加えて「夜間勤務は乳がん発症リスクを増加させる可能性がある」ことがいくつかの疫学調査の結果から指摘されています。それだけに、夜勤のある看護師さんはことさら気になっているのではないでしょうか。
乳がんは早期発見により90%は完治できる
しかし、幸いなことに乳がんは、がんがまだ小さく無症状のうちに検診などで発見できれば、適切な治療により90%以上は治癒できることがわかっています。
しかもこの乳がん検診については、全国の自治体(市区町村)が一定の年齢の女性を対象に発行する「検診無料クーポン(券)」を活用すれば、費用を気にすることなく受けられる体制が整備されています。
さらに、その検診結果によって必要となるさらに詳しい検査についても、無料とはいかないまでも、費用の一部を補助する制度を用意している自治体もあります。
今回はその辺の費用の話も含め、乳がんの早期発見に必須の乳がん検診について書いておきたいと思います。
女性は40歳を過ぎたら
2年に1回乳がん検診を
厚生労働省は、がんによる死亡を減らすことを目標に「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」を定め、自治体によるがん検診を推進しています。この指針では、40歳の誕生日以降の女性は2年に1回、乳がん検診の受診を勧めています。
この場合の検診は、乳がん検診の「一次検診」と呼ばれるもので、「問診」と「マンモグラフィ検査」として知られる乳房のX線検査が基本となっています。自治体によっては、マンモグラフィ検査に「超音波検査」を組み合わせたり、マンモグラフィ検査に替えて超音波検査を行っているところもあるようです。
ちなみに、とかく若い世代の女性に敬遠されがちな、医師による乳房の「視診」や「触診」では初期の乳がんを発見することはできませんから、この一次検診で視診や触診を行うことは推奨されていません。
乳がん一次検診における「問診」の内容
まず「問診」では、検診時点での体調や病気の有無に関する質問を受けることになります。自治体により質問内容は微妙に異なりますが、おおむね以下の内容になっていますから、事前にチェックしてメモでもしておけばスムーズに受けることができるでしょう。
- 生理の周期などの月経の状況(すでに閉経している方は閉経時年齢)
- 妊娠や分娩、授乳の経歴(出産している方は出産回数や最終の授乳は何年前か。なお、妊娠中や断乳後6カ月未満の方は対象外となります)
- 自己触診で乳房にしこりや痛みを感じたことがあるかどうか(自覚症状がある方は医療機関の受診を勧められることがあります)
- 家族にがん(特に乳がん)になった人がいるかどうか
- これまでにがん検診(特に乳がん検診や子宮がん検診)を受けたことがあるかどうか、受けていた場合はその時期、そのときの判定や診断結果
乳がん検診の
マンモグラフィ検査とは
問診に続いて行われる「マンモグラフィ検査」とは、乳房専用のX線撮影です。撮影台の上に乳房を載せ、プラスチック製の透明な板で乳房を圧迫して平たくし、乳房全体を上下や斜めの2方向から撮影します。50歳以上なら1方向のみの撮影で終わることもあります。
乳房を薄く延ばすことにより乳腺が広がり、触診ではわからないようなしこりも見つけることができるそうです。ただこの検査については、乳房を圧迫されると「痛いと聞くから受けたくない」との声もありますが、痛みには個人差があり、乳腺の量が多かったり乳腺症があると痛みをより強く感じるようです。
また、乳房が張りやすい生理前は圧迫により痛みを感じやすいため、この時期に検診を受けるのは避けたほうがよさそうです。
心臓ペースメーカー装着や豊胸手術経験者は事前に報告を
なお、「心臓ペースメーカー」を装着している方、あるいは過去に「豊胸手術」を受けている方は、マンモグラフィを受ける前の問診でその旨伝えることをお忘れなく*。
以上の流れで行われる乳がんの一次検診は、通常1時間ほどで終わります。自治体が発行する「乳がん検診無料クーポン」が使えるのは、この一次検診です。
過去に豊胸手術を受けている方は、豊胸素材(シリコン注入、シリコンバック、ヒアルロン酸注入など)に応じて検診法を変える必要があるため、検査前に必ず報告することをお忘れなく。
乳がん検診無料クーポンの
対象者と問合せ先
「乳がん検診無料クーポン」は、住民票のある市区町村の「がん検診担当窓口」が取り扱っています。各自治体のがん検診担当窓口の問合せ先などは、日本医師会のWebサイトにある「がん検診窓口マップ」で検索することができます*³。
「乳がん検診無料クーポン」の発行を受けられる年齢は自治体により多少の違いはありますが、40歳、45歳、50歳、55歳、60歳の女性を対象としている自治体が多いようです。
また、その発行方法としては、対象年齢の方へ無料クーポンを自動的に発行、送付してくれる自治体もありますが、多くの自治体は「がん検診担当窓口」に本人が申し込んで発行してもらう必要があるようです。
該当する年齢に自動的に送付されるはずのクーポンが届かない、あるいは申し込んだのにクーポンが届かないまま検診日を迎えてしまうこともあるようです。
そのような場合は、検診を受けた医療機関に自己負担額を支払うことになりますが、後日請求すれば払い戻しを受けることができます。
また、検診無料クーポンには有効期限があります。期限を過ぎてしまうと、いかなる理由があろうとクーポンは無効で自費扱いとなりますのでご注意ください。
乳がん一次検診の結果は
受診後10日から遅くても1カ月以内
無料クーポンで受けた乳がん検診(一次検診)の結果は、検診受診後早くて10日、最長でも1カ月後には文書で通知されます。その結果が「異状なし」ならひとまず安心ですが、それで終わりではありません。乳がんの早期発見のためには、その後も定期的(2年毎)に検診を受けることが推奨されています。
一方、一次検診の結果が「異常あり」の場合は、乳がんの可能性が否定できないということですから、追加の精密検査(二次検診)を受け、本当に乳がんかどうか確かめておく必要があります。その結果が「異状なし」、あるいは「良性の病変」であることが確認されれば安心です。とは言え、この場合も油断することなく、引き続き2年に1回の定期検診を欠かさず受ける必要があります。
精密検査の結果、「乳がん」と診断(確定診断)されることもないとは言えません。その場合は、速やかに医療機関を受診して治療を受けることになります。
一次検診で異常が確認されたら
二次検診で精密検査を
一次検診で「しこりがある」などの異常が確認されると、二次検診として追加の検査や医師による診察・治療を受けることになります。この場合は、二次検診に無料クーポンは使えませんから、別途費用がかかります。
あるいは、検診とは別に、乳房の自己触診(セルフチェック)でしこりや痛みなどの異常を感じて受診し、検査や治療を受けるというケースも考えられます。
いずれの場合も医療費には、医療保険が適用になりますから、自己負担分(3割負担)ですむのですが、この費用には各自治体の助成金を活用することも可能です。
特に乳がんの治療費が高額になり、自己負担額が一定の額(年齢や所得額に応じて「限度額」が決められている)を超えた場合は、「高額療養費制度」を活用すれば、自己負担分を低く抑えることができます。
この「高額療養費制度」は自分で申請しないと給付、つまり払い戻しを受けられません。この辺の詳細については、こちらを参照してください。
なお、乳がんについて最新情報を詳しく知りたい方は、日本乳癌学会の編集による『患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2023年版』(金原出版)がお勧めです。
参考資料*¹: 人口動態統計 2018年