訪問看護で利用できない注射薬がある!?




医薬品

退院支援で知っておきたい
在宅における点滴・注射の話

在宅療養に移行する患者が、退院後も在宅において、入院中に受けていた点滴静脈注射や静脈注射(1回のみの薬剤投与、いわゆる「ワンショット」)、あるいは中心静脈栄養法などを引き続き受けることになれば、訪問看護師との連携が必須となります。

その際に、
「病院で使用している注射薬のなかには、訪問看護では利用が制限される、あるいは事前に所定の手続きが必要なものがある」
ということをご承知でしょうか。

在宅療養に移行した患者宅を医師が訪問して、点滴療法や注射などの医療行為を行うのであれば、入院中に使用していた医薬品のほとんどは、引き続き使用することができます。

ただし、訪問看護師が使用できる注射薬については、必要な手続きを忘れたりすると、その患者が入院中に使用していた注射薬でも使用できない場合があることは、
「意外と知られていないようだ」
といった話を訪問看護師の友人から聞くことができました。

今日はその辺のことを書いてみたいと思います。

訪問看護師が実施可能な
医療行為のレベル1~3

具体的な話に入る前に、訪問看護でできる点滴や注射などの医療行為は、レベル1~3に区分されていて、訪問看護師のレベルや医師の指示の有無等により実施可能な医療行為が異なることを再確認しておく必要があります。
ちなみにレベル4は、看護師が実施できない医療行為です*¹。

  • レベル1
    患者のリスクを回避し、完全・安楽を確保するための臨時的な応急処置として、訪問看護師の判断で実施できる医療行為
    緊急時の末梢からの血管確保や点滴中の患者に異常が出たときの中止、注射針(末梢静脈)の抜去は看護師が判断して行うことができる
  • レベル2
    医師の指示に基づき、訪問看護師が実施できる医療行為
    脱水時の短時間持続注入の点滴、抗生物質の静脈注射、中心静脈カテーテルラインからの注射薬剤の混注、輸液ボトルの交換、輸液ラインの管理など
  • レベル3
    医師の指示に基づき、一定以上の臨床経験を有し、かつ一定の教育を受けた認定看護師あるいは専門看護師の有資格訪問看護師等、のみが行える医療行為
    抗がん剤や細胞毒性の強い薬剤等の静脈内注射、麻薬(オピオイド)の末梢静脈注射、中心静脈アクセスポート(CVポート)専用ヒューバー針のポートへの穿刺と抜去など

院外処方可能な注射薬なら
在宅で使用できる

最近では在宅で電解質輸液や抗生剤などの注射を受ける患者が増えていることもあって、一時期に比べれば、院外処方で出してもらえる注射薬が増えているそうです。

この、厚生労働大臣の定める注射薬で院外処方が可能、つまり医師(保険医)が処方箋を交付することができる注射薬なら、訪問看護師も取り扱うことができます。

なお、保険医が処方箋を交付することができる注射薬については、厚生労働省のWebサイトを参照してください*²。

医師による交付が必要な指示書

医師が処方できる注射薬なら訪問看護師も使用可能なのですが、連日の点滴や静脈注射など、週に3日以上の実施が予定されているときは、多くの場合、医師による「訪問看護指示書」に加え、以下2点の指示書が必要とされることはご承知だろうと思います。

  1. 在宅患者訪問点滴注射指示書
    訪問看護師により、週3日以上、点滴や注射などの医療行為が必要と判断された場合に、その判断をした医師により交付される
    当指示書を交付する医師には、点滴や注射を実施する際に留意すべき事項等を明記することが求められている
    交付された指示書の有効期限は交付日から7日まで
    当指示書は医療保険だけでなく介護保険も適用となる
  2. 特別訪問看護指示書
    訪問看護指示書が交付されている患者の急性増悪などが原因で、訪問のペースを週4日以上と頻回にする必要があると医師が判断した場合に交付される
    指示書の交付は、基本的に月1回、交付日から最長14日間有効
    当指示書は医療保険のみ適用となる

在宅での点滴や注射に必要な
医療・衛生材料はどうする?

もう1点注意したいのは、在宅における点滴や注射に必要となる輸液セットやサーフロー留置針などの医療材料、および酒精綿や固定テープなどの衛生材料です。

これらの物品の費用は、指示書を交付する医師が所属する病院、あるいは診療所が算定する「在宅患者訪問点滴注射管理指導料」(1週につき100点)に含まれていますから、医療機関側で準備して訪問看護師に渡すか、あるいは家族が受け取りに行く必要があります。

なかには、医師が往診、訪問時に持参するケースもあるようです。

この点については、退院支援の段階で、訪問看護による点滴・注射における連携の一環として、必要物品のセットを準備しておく必要があるでしょう。

特定保険医療材料は院外処方で

なお、在宅中心静脈栄養などに使用する「在宅中心静脈栄養用輸液セット」やCVポート用の「ヒューバー針」などは、医薬品と同じように公定価格が決められていて、保険請求できる「特定保険医療材料」ですから、処方箋があれば最寄りの薬局で受け取ることができます。

このように在宅で点滴・注射を実施するには、注射薬等の取り扱いや指示書について事前の手続きが必要となりますから、医師や連携する訪問看護師、あるいはMSWやケアマネジャーなど、関係者で事前に話し合っておくことをお忘れなく。

参考資料*¹:訪問看護における静脈注射実施に関するガイドライン
参考資料*²:保険医が投薬することができる注射薬