「薬剤師訪問サービス」が薬機法改正で拡充へ

薬剤師

服薬期間中のフォローアップで
医薬品の適正使用につなぐ

街の薬局が、療養中の患者宅に足を運ぶ在宅支援に取り組んでいることはまだあまり知られていないのではないでしょうか。いわゆる「薬剤師訪問サービス」です。

2020年9月から施行されている改正薬機法*により、薬局のあり方が大きく変わっています。その1つとして、薬局の薬剤師には、処方箋に基づいて調剤した薬剤(輸液類を含む)を渡した患者に、電話あるいは訪問などにより服薬状況や副作用の有無を確認するなど、一定期間フォローアップすることが義務化されているのです。

薬局によっては、以前から薬剤師が患者宅を訪問する取り組みを始めていました。この活動が、今回の法改正により全国的に普及し、より拡充されることになったわけです。

これにより看護には、退院支援や訪問看護において、患者・家族に薬剤師訪問サービスの積極的な利用を促すとともに、最寄りの薬局薬剤師とは常時密に連携し、医薬品の適正使用につなげていくことが、これまで以上に求められることになりそうです。

そこで今回は、この薬剤師訪問サービスについて詳しく見てみたいと思います。

*改正薬機法
薬機法とは、正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律」と言う。2014年の薬事法改正により名称変更されている。服薬期間中のフォローアップの義務化やオンライン服薬指導などを薬局薬剤師に求めた改正薬機法は、2020年9月1日に施行されている。

薬剤師訪問サービスには
「訪問薬剤管理指導指示書」が必要

施行された改正薬機法では、調剤薬局に対し、処方箋に基づいて調剤した薬剤を患者が適正に使用するうえで必要があると薬剤師が判断した場合には、服薬期間を通して在宅患者をフォローアップすることを義務化しています。

この場合、フォローアップサービスの対象となるのは、輸液や注射薬、および医療用麻薬を含むあらゆる医薬品です。ただ、輸液や注射薬の内容によっては、無菌調剤室のある薬局に取扱いが限られることがあります。

フォローアップの方法としては、患者に電話やスマートフォン等のオンラインで服薬状況や副作用の有無、薬の保管方法等を確認する方法が一般的です。加えて、薬局薬剤師が在宅療養中の患者宅を直接訪問して行う「訪問薬剤管理指導」、いわゆる「薬剤師訪問サービス」が行われることもあります。

薬剤師訪問サービス利用の4条件

この薬剤師訪問サービスの対象となるのは、以下の4条件に該当する患者です。

  1. 足腰が弱って歩行に支障があるなど、介助者がいないと病院や薬局に通えない、あるいは認知症などで薬の飲み忘れなどが懸念される状態にある
  2. 処方を受けた薬の在宅での服用や自己管理に不安がある
  3. 処方薬の服用や自己管理に不安があり、薬剤師による在宅でのサポートが必要であると処方医が判断し、薬剤師に対して「訪問薬剤管理指導指示書」が発行されている
  4. 薬剤師による訪問サービスを受けることについて、薬剤師から説明を受けたうえで、患者または家族の同意が得られ、「同意書」がある

要介護・要支援認定者は
介護保険適用

上記条件に該当する在宅患者であれば、通常は週に1回、1か月に4回まで薬剤師訪問サービスを利用することができます。ただし、末期の悪性腫瘍の患者や中心静脈栄養法を受けている患者は、週に2回、月8回まで利用することができます。

いずれの場合も、このサービスにかかる費用には、医療保険も介護保険も適用となります。ただし要介護(要支援)認定を受けている場合は、医療保険よりも介護保険が優先されるため、この訪問サービスにかかる費用には介護保険が適用されることになります。

緊急時の投薬に臨時訪問サービスも

なお、医師発行の指示書により計画的に実施している定期的なフォローアップのための訪問に加え、定期訪問の対象になっていない疾患に関しても、月4回を限度に、緊急時に臨時の投薬を行うための訪問が認められます。

ただしこの場合に使えるのは医療保険に限られます。そのため、介護保険で通常の定期的な訪問サービスを受けている利用者は、この緊急訪問サービスには医療保険を利用することになります。

なお、薬剤師による訪問サービスについては、医師による訪問診療を受けているかどうか、また訪問看護を受けているかどうかに関係なく利用することができます。

薬剤師訪問サービスに
かかる費用は?

ところで、上記条件の「4」については、薬剤師訪問サービスにかかる費用を心配して、「同意」を躊躇する患者・家族が少なくないようです。そこでこの費用ですが、このサービス1回の利用にかかる費用は、以下の条件により大きく違ってきます。

  1. 利用している保険は医療保険か介護保険か
  2. 個人宅や介護施設など、同じ建物の居住者のうちサービス利用者が1人なのか、あるいは利用者が2人以上いるのか
  3. 薬剤の種類、とりわけ医療用麻薬を使用しているかどうか

少々複雑ですが、たとえば、単一建物内に訪問対象者が1人で自己負担が1割の場合、定期の訪問サービス料金は、それぞれ以下のようになります。

  • 介護保険利用者は、(介護予防)居宅療養管理指導費として1回517円
  • 医療保険利用者は、在宅患者訪問薬剤管理指導料として1回650円

同じ患者を緊急訪問した場合は、医療保険のみ適用で、以下のようになります。

  • 計画的な訪問サービスの対象となっている疾患の急変に伴う訪問の場合は、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料として1回500円
  • 計画的な訪問サービスの対象疾患以外の疾患による緊急時訪問の場合は、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料2として1回200円

退院支援や訪問看護で活用を

在宅療養に移行する患者が退院後も点滴やワンショット、中心静脈栄養法などを行う場合の退院支援、さらにはその先の訪問看護には、この薬剤師訪問サービスの利用が欠かせないのではないでしょうか。

在宅療養に移行後も点滴や注射を継続する患者は少なくない。その際、退院支援看護師は訪問看護師との連携が欠かせないが、事前に知っておきたい訪問看護師が実施可能な輸液や注射に関する医療行為、必要な注射薬、医師の指示書等に関する基本的知識をまとめてみた。