排尿自立支援に「排尿予測センサー」を活用する




新聞とコーヒー

排尿予測センサーが
排尿のタイミングを通知

「こんなにオムツ交換やトイレ誘導が楽になるとは想像できませんでした」
介護施設に勤務している看護師のNさんから、先日届いたメールです。

「オムツ交換を気にかけて眠りが浅かった利用者も、尿を漏らす心配がなくなって夜間ぐっすり眠れるようになったからでしょうか。日中も食事が進むなど、心なしか穏やかに過ごしているようです。思い切って導入してもらってよかったと思っています」

導入したというのは、排尿予測センサー「DFree(ディーフリー)」のこと。

超音波センサーで膀胱の膨らみを計測して尿のたまり具合をリアルタイムで捉えることにより、排尿のタイミングをパソコンやスマートフォンに通知してくれるという、ウェアラブル端末とアプリの組み合わせによるディバイスです。

「看護の現場でも、脳卒中や脊髄損傷などの神経疾患により排尿がコントロールできない患者さんの自立に向けたケアに、このディバイスを活用してみたらどうかしら」

介護施設に職場を変える前は、大学病院に病棟看護師として勤務し、脊損患者らの排尿自立支援も行っていたというN看護師からの提案です。

その当時は、排尿のタイミングをなかなか予知できずトイレが間に合わないこともたびたびで、患者自身が悲観的になることは言うまでもなく、看護チームとしてもかなり苦労したことを今でもはっきり覚えているそうです。

排尿ケアチームとの
「排尿自立支援」が保険適用に

Nさんが介護施設で働くようになったのは5年ほど前からです。

彼女が苦労したと話してくれた排尿自立支援については、彼女が職場を変えてちょうど2年後、2016(平成28)年の診療報酬改定で、入院患者を対象にした排尿自立支援が「排尿自立指導料」として公的医療保険の適用になっています。

尿道カテーテルを抜去はしたものの尿失禁や尿閉などが続く、あるいは留置カテーテルをなかなか外せないといった状態が長引くと、尿路感染症の発症リスクが高まります。

同時に、カテーテルの留置が長引いたりオムツを外せないような状態が続けば、行動制限による筋力の低下などが進んでADLを維持することが難しくなり、転倒や寝たきりなどにつながりやすいこともわかっています。

そこで、これらの問題をクリアして、早期に在宅へ移行できるようにする狙いから、病棟看護師と院内の排尿ケアチームが協働して、排尿自立に向けた包括的な排尿ケアを行った場合には、週1回200点を6回まで算定できるというのが「排尿自立指導料」です。

排尿の自立は人としての尊厳遵守につながる

この保険点数については、新設当初、「意外に高い」という声が関係者の間で多かったことを私も覚えています。

排尿の自立は、生活の自立の最重要課題であり、人としての尊厳を保つうえで欠かせないことだから評価が高いのだろう、と看護師の友人らと話し、納得し合ったものです。

排尿自立指導料の申請については、日本創傷オストミー・失禁管理学会の編集による『新版 「排尿自立指導料」に関する手引き』(照林社)が参考になります。

なお、2020年度診療報酬改定により、排尿自立指導料は入院基本料等加算の1つ、「排尿自立支援加算」として評価されることになりました。

また外来患者を対象にした「外来排尿自立指導料」も新設され、保険診療下で入院中から外来へと支援を継続することが可能になっています。

詳しくはこちらの記事を読んでみてください。
→ 入院中の「排尿自立支援」を継続して外来でも 2020年度診療報酬改定

排尿のタイミング予測に
個人利用を想定の「DFree」を

話を戻しますが、Nさんの介護施設で導入したという排尿予測センサーは、複数の利用者を対象にした「DFree」システムです。

個々の利用者の排尿に関するデータを無線通信(ブルートゥース)によりスタッフ詰所のパソコンやスマートフォンアプリに送り、表示されるグラフから排尿前後のタイミングや排尿パターンをリアルタイムで確認できるように作られています。

これとは別に、個人利用を想定した排尿予測ディバイスとして、
トイレのタイミングを事前にお知らせ!排尿予測デバイス DFree Personal【iOS・Android対応】が、2018(平成30)年6月1日より販売されています。

N看護師は、こちらのパーソナルタイプのディバイスを、入院患者の排尿自立支援に使ってみてはどうだろうか、と言うのです。

「排尿自立指導料」が保険適用になったことが契機となり、院内に泌尿器科医師や理学療法士、薬剤師、皮膚・排泄ケア認定看護師、脳卒中看護認定看護師などから成る「排尿ケアチーム」と呼ばれる医療チームを立ち上げる病院が急速に増えたと聞きます。

どのチームも病棟看護師と連携して、入院患者の排尿自立に向けた取り組みを活発化させ、残尿測定器なども活用して膀胱内の尿量を把握するなどの工夫をしているようです。

「しかし、排尿のタイミングを事前に把握することにはかなり難渋している」
との声がいまだ多いことを考えれば、N看護師の提案を試してみる価値は十分あると思うのですが、いかがでしょう。

在宅介護や過活動性膀胱対策にも活用

「DFree」は、いわゆるハイテク機器です。
開発・提供しているのは、医療や介護といったこととは全く無縁だったという3人の男性を中心とするベンチャー企業です。

医療分野も介護分野も生身の人間が対象だけに新しい機器の導入には神経質になりがちです。
しかし、この「DFree」は、介護施設のみならず在宅介護現場における排尿自立支援にも徐々に浸透しつつあり、人手不足や介護負担の軽減に一役買っているようです。

最近売り出された個人向けの「DFree Personal」は、外出先でも利用できるように、従来の排泄予測機能に加え、立つ・歩く・座るなどの姿勢変化に伴う膀胱内の変化を捉える補助機能も新たに搭載されています。

この補助機能により、たとえばシニア世代の女性を悩ます過活動膀胱対策としても利用が広がっているようです。