「終末期」をどう定義し判断していますか




日没

「終末期ではない」の根拠に
「44歳と若いから」は当たらない

「この女性は44歳と若いから、まだ終末期ではないだろう。終末期でない患者に透析を中止して死ぬ選択肢を医師が提示したことも、患者がその選択をしたからと言って透析を中止したことも、医師としての倫理に反しているのではないだろうか」――。

公立病院における「透析中止」の一件をとりあげたテレビの情報番組で、名前も顔も広く知られたコメンテーターがそう発言するのを聞き、「えっ、なぜそうなるの」と疑問を感じました。

まずひっかかったのは、「44歳と若いから、まだ終末期ではない」という部分です。
100歳時代、つまり「100歳まで生きる」のが当たり前のように言われる今の時代にあって、44歳という年齢自体は、確かに「若い」。
ただ、若いから「まだ終末期ではない」と断定するのは間違っているのではないか――。
そんなふうに私は思うのですが、いかがでしょう。

通常私たちは一般に、年齢には関係なく「助かる見込みがない状態になったとき」を「終末期」と呼んでいるように思います。
では医療の現場では、終末期をどのように定義し、どう判断しているのでしょうか。
その辺のことを調べてみましたので、わかったことを書いてみたいと思います。

終末期かどうかは
患者の状態を踏まえて判断

まずは厚生労働省(以下、厚労省)の定義です。
厚労省は2007年5月、「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」を公表しています。そこに「終末期」に関するはっきりした定義はないのですが、このガイドラインの解説編のなかに、終末期の判断に関する以下のような記述があります。

終末期には、がんの末期のように、予後が数日から長くとも2-3ヶ月と予測が出来る場合、慢性疾患の急性増悪を繰り返し予後不良に陥る場合、脳血管疾患の後遺症や老衰など数ヶ月から数年にかけ死を迎える場合があります。
どのような状態が終末期かは、患者の状態を踏まえて、医療・ケアチームの適切かつ妥当な判断によるべき事柄です。

また、チームを形成する時間のない緊急時には、生命の尊重を基本として、
医師が医学的妥当性と適切性を基に判断するほかありませんが、その後、医療・ケアチームによって改めてそれ以後の適切な医療の検討がなされることになります。
(引用元:終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン 解説編

なお、このガイドラインは2018年3月の改訂で、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に名称変更されています。

「終末期医療」から「人生の最終段階における医療・ケア」へと名称を変更した理由については、「最期まで個々の人の生き方(=人生)を尊重し、医療・ケアの提供について検討することが重要であるから」との説明が付記されています。
(参考資料:人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン 解説編

「終末期」の定義として示された
3つの条件とは

厚労省のガイドラインが示している終末期の判断方法では、医療・ケアチームの裁量により如何様にも判断できるような気がしないではありません。

そこで、判断の基準をより明確に提示しているものはないかとさらに探していくなかで、全日本病院協会が2016年11月にまとめた「終末期医療に関するガイドライン~よりよい終末期を迎えるために~」が目に留まりました。
そこには「終末期の定義」として、以下の3つの条件が提示されています。

「終末期」とは、以下の三つの条件を満たす場合を言います㊟
1.複数の医師が客観的な情報を基に、治療により病気の回復が期待できないと判断すること
2.患者が意識や判断力を失った場合を除き、患者・家族・医師・看護師等の関係者が納得すること
3.患者・家族・医師・看護師等の関係者が死を予測し対応を考えること

救命救急の場では発症から数日以内の短い期間で終末期と判断されることも多い
のですが、がんや難病の末期などでは1~2ヶ月ということもあります。
また、重
い脳卒中後遺症などでは、数年前からいずれ死が訪れることが予測されることがあるものの、間近な死を予測出来るのは容態が悪化してからとなります。したがって終末期を期間で決めることは必ずしも容易ではなく、また適当ではありません。
(引用元:終末期医療に関するガイドライン~よりよい終末期を迎えるために~

ちなみに全日本病院協会(略称「全日病」)とは、民間病院を中心に、全国の病院の約4分の1に当たる約2,500の病院が加入している全国組織です。
勤務先の病院がこの協会に加入しているかどうかはコチラで確認することができます。

救急医療現場における
「終末期」の定義とその判断

先に紹介した厚労省と全日本病院協会のガイドラインは、通常の医療現場で遭遇する慢性疾患を含む一般的な患者の終末期について言及しているものです。

これに対し日本救急医学会は2007年11月、「救急医療を展開する場において遭遇する症例の終末期」という位置づけで「救急医療における終末期医療に関する提言(ガイドライン)」をまとめ、公表しています。
そこでは終末期の定義とその判断を次のように明記しています。

救急医療における「終末期」とは、突然発症した重篤な疾病や不慮の事故などに対して適切な医療の継続にもかかわらず死が間近に迫っている状態で、救急医療の現場で以下1)~4)のいずれかのような状況を指す。
1)不可逆的な全能機能不全(脳死診断後や脳血流停止の確認なども含む)と診断された場合
2)生命が新たに開始された人工的な装置に依存し、生命維持に必須な臓器の機能不全が不可逆的であり、移植などの代替手段もない場合
3)その時点で行われている治療に加えて、さらに行うべき治療方法がなく、現状の治療を継続しても数日以内に死亡することが予測される場合
4)悪性疾患や回復不能な疾病の末期であることが、積極的な治療の開始後に判明した場合

なお、上記の「終末期」の判断については、主治医と主治医以外の複数の医師により客観的になされる必要がある
(引用元:救急医療における終末期医療に関する提言

終末期かどうかの判断に
看護師も自分なりのものさしを

終末期(人生の最終段階)における医療やケアに関するガイドラインは、紹介した3点以外にも、日本医師会や日本学術会議、日本小児科学会が、また終末期に限定はしていないものの日本老年医学会等が策定、公表しています。

それぞれに終末期のとらえ方が示されているのですが、その多くが「終末期の判断」を「主治医と複数の医師を含む医療ケアチーム」が行うとしています。
その医療チームには、当然看護師も含まれます。

いざというときに、患者の揺れ動く心情にも目を向けた看護の視点をチームの判断に生かすことができるように、先に紹介した「終末期の定義」や「判断基準」を参考にしながら、自分なりの「終末期」のものさしを準備しておかれてはどうでしょうか。