看護師も知っておきたい整骨院等の施術所利用法

肩こり マッサージ

がんこな腰痛や肩こりで
街の施術所を利用するとき

長引く腰痛や肩こりは、看護師さんの代表的な職業病と言われます。自分なりにセルフケアはしてみたもののなかなか回復しないからと、施術所(せじゅつしょ)と呼ばれる街の整骨院(接骨院)等で「はり・きゅう」や「あん摩マッサージ指圧」、あるいは「柔道整復」の施術を受ける方は決して少なくないでしょう。

これらの施術は法律の定めにより、医師以外では、国家試験や都道府県試験に合格して、それぞれの免許を所有している、いわゆる有資格者だけが業務として行うことを認められています。ところが、なかには無資格者が開業している場合があります。

また、症状と受ける施術によっては公的な医療保険が使える場合があります。医療保険適用の条件に合致していれば、施術にかかる費用を、医療保険の自己負担分、一般に3割程度に抑えることができます。

ということで、今回は整骨院やマッサージ治療院をよく利用、ないし利用を検討しているという看護師さんに、是非知っておいていただきたい上手な利用法、および利用に際しての注意点について書いてみたいと思います。

整骨院などの施術所は
整形外科の一分野ではない

看護師さんなら、整形外科と整骨院(接骨院)のような施術所の違いはご存知でしょう。ところが一般の方のなかには、整骨院やマッサージ治療院を整形外科の一分野と誤解している方が少なからずいるようです。そこでまずは、その違いを確認しておきたいと思います。

ご承知のように、整形外科では医師(整形外科医)が、骨や関節、筋肉、運動神経といった運動器官や手足の末梢神経、脊髄のような中枢神経の診察を行い、診断結果にあわせて薬物療法、手術療法、リハビリテーションなどの治療を行います。

一方で整骨院などの、法律上「施術所」と呼ばれる場所で施術を行うことができるのは、「柔道整復師」「はり師」「きゅう師」や「あん摩マッサージ指圧師」です。

施術者が免許保有者であることを
確認したうえで利用する

彼ら施術者はそれぞれ、国家試験や都道府県試験に合格した証として免許を保有しています。その免許をもとに、柔道整復、はり、きゅう、あん摩、マッサージ、あるいは指圧を行い、外傷性の打撲や捻挫、神経痛、腰痛症、五十肩といった身体の不調の軽減を図ってくれます。

これらの施術を無免許で行った場合は、法律により処罰の対象となります。整骨院や接骨院などの施術所を安心して利用するためには、前提として、当の施術者が有資格者かどうかを確認しておく必要があります。

その方法としては、施術所に掲げられている看板や広告に、あるいは施術所内に以下の掲示があるかどうかチェックしてみることです。

  1. 看板等に厚生労働大臣免許または都道府県知事免許の所有者であることが掲示されている
  2. 保健所に届け出た施術所であることが掲示されている
  3. 施術者の免許証そのもの、あるいは免許証の内容等を記載した書面が掲示されている
  4. 施術者が「厚生労働大臣免許保有証」*を所持している
*「厚生労働大臣免許保有証」とは、施術者が柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格を保有していることを示す携帯カード。
厚生労働省が東洋療法研究試験財団に依頼して発行しているもので、免許証に代わるものではない。あくまでも希望する有資格者に発行されているもので、免許保有者が必ず発行を受け、携帯しなければならないものではない。
有効期限は発効日から5年間となっている。

マッサージや指圧などの施術に
医療保険が使えるケースは?

街の整骨院等の看板に「医療保険が使えます」と書いてあるのをよく見かけます。頑固な五十肩で右腕が上がらなくなっていた友人が、この看板を見て、「医療保険が使えるなら自己負担分は3割だけだから」と早とちりをし、その看板が出ている「はり・きゅう治療院」に飛びこみで施術を受けたことがあります。

施術自体はなかなかで、「腕は楽に上げられるようになったが、思わぬ出費で首が割らなくなった」などと、苦笑いしながら話してくれたことがあります。医療保険は使えなかったというのです。

■はり・きゅう治療師による施術の場合
この話を聞いて厚生労働省のホームページで調べてみたのですが、彼女が悩まされていた五十肩のように、慢性的な痛みを主症状とする疾患で、以下に該当する場合は、施術にかかる費用は「療養費」として認められ、医療保険が使えることになっています。

⑴ 医師による診断、治療を受けたものの効果が現れなかった場合
⑵ 適当な治療手段が見当たらないと医師が判断した場合
⑶ はり師やきゅう師による施術を受けることに医師が同意している場合

具体的な疾患名としては、①神経痛、②リウマチ、③頸腕症候群、④五十肩、⑤腰痛症、⑥頸椎捻挫後遺症の6疾患があげられています。

また、上記の疾患で受ける施術に健康保険を使うには、あらかじめ医師の診察を受け、診断書あるいは施術を受けることへの同意書の発行を受ける必要があります。

友人の五十肩は医療保険の対象です。しかし、医師の診断書も同意書も持参しなかったため、全額自己負担となったようです。

なお、上記の疾患、特に腰痛については、原因疾患がある場合も少なくありませんから、いずれにしてもまずは医師の診察を受け、マッサージ等の施術が適応かどうかを確認することをお勧めします。

成人の5人に1人は腰痛もちだと聞く。その数を3000万人と推計する統計もあり、巷にはさまざまに情報が飛び交っている。が、なかには背景に深刻な疾患がある場合も少なくない。素人判断で痛みを緩和するだけでなく、整形外科医の診察が必要な危険信号を紹介する。

■柔道整復師による施術の場合
スポーツなどで骨折や脱臼、打撲および捻挫(いわゆる肉離れを含む)をして柔道整復師の施術を受ける場合も、あらかじめ医師の診察を受け、施術を受けることに同意を得ていれば、医療保険の対象となります。

このうち骨折と脱臼については、突然の事故などで応急処置として柔道整復師の施術を受けた場合は、施術後に医師の診察を受け、施術が必要な処置であったとする医師の同意書が得られれば、医療保険の対象となります。

日常的によく経験する肩こりや筋肉疲労に柔道整復師による施術を受ける方が多いようですが、この場合は医療保険は使えず、全額自己負担となります。

■あん摩マッサージ指圧師による施術の場合
あん摩マッサージ指圧師によるマッサージなどの施術で医療保険が使えるのは、脳卒中後の後遺症などによる関節拘縮や筋麻痺などがあり、関節可動域の拡大などを目的にリハビリテーションの一環としてマッサージが必要であると医師が判断し、施術を受けることへの同意書あるいは診断書が発行されている場合です。

単なる疲労回復や「ストレスがたまったから」などの理由で、あるいは病気の予防を目的としたマッサージなどは、医療保険の対象とはなりません。たとえば腰痛予防には、こちらを参考にセルフケアに取り組んではいかがでしょう。

看護師の職業病ともいわれる腰痛については、厚生労働省が腰痛予防対策指針をまとめている。そのなかでは介護・看護スタッフが個人レベルで取り組む予防策として、動的ではなく静的ストレッチングを奨励。その効果的な方法についても紹介している。