入退院支援に地域連携パスを活用する

連携

地域連携パスを活用して
切れ目のない医療・ケアの提供を

患者の入院から退院後も、地域内の複数の医療・ケア機関に働く多職種のスタッフが効率よく連携し合ってシームレス、つまり切れ目のない医療・ケアを提供したい――。そんな考えを実践するためのツールとして、地域連携クリニカル(クリティカル)パス、通称「地域連携パス」の導入が進んでいます。

わが国で地域連携パスの取り組みが国の施策としてスタートしたのは2005年ですが、当初、パスで連携するのは診療計画、つまり医師による診察や治療の部分に限定されていました。しかし、以来およそ20年近くを経た最近では、診療計画表に治療のみならずケア内容(介護を含む)も明記されるようになっています。

今や地域連携パスは、患者にかかわる多職種のスタッフがそれぞれの役割を引き受け、チームとして切れ目のないサービスを提供する仕組みづくりのツールとして活用されるようになっているのです。

そこで今回は、特に医療ニーズの高い患者の入退院支援では地域との連携に欠かせなくなっているこのパスについて、基本となるところをまとめてみたいと思います。

地域連携パスは院内パスと
考え方も手法も同じ

ところで、地域連携パスにはまだなじみがないという方でも、病院内のクリニカルパス、いわゆる院内パスについては日々運用されているのではないでしょうか。

クリニカルパスとは、患者が入院している間の、ケアを含む診療全般の予定をスケジュール表のようにまとめた入院診療・ケア計画です。

もともとは、アメリカボストンのメディカルセンターに働く看護師により、「入院中のすべての患者に、より質の高いケアを提供できるようにしたい」との切なる思いから誕生したと聞いています。

日本に導入されて以降は、「患者ケアの質の向上」に「医療の効率化」という目標が加わったこともあり、疾病別に標準化された医療の提供に終始し、患者個々に生じてくる問題への対応、つまり個別性が疎かにされがちだといった指摘も散見されています。

クリニカルパスが医療現場に導入されてそろそろ四半世紀。導入当初、看護が大事にしている「その人らしさ」、つまり個別性がパスに盛り込まれないのではないか、ケアそのものが通り一遍のものになってしまうのではないか、との懸念があったのですが……。

しかし、患者にかかわるスタッフ間の連携強化により、チーム医療の質の向上という点では、かなり効果を上げていることは間違いないようです。

地域連携パスはこのような院内パスと、考え方も手法も基本的には全く同じです。院内パスを地域にまで拡大して地域全体を一つの病院と見立てることにより、患者が退院した後の生活についても地域内の関係職種が連携して標準的なケアを切れ目なく提供することにより、患者のQOL向上を図っていこうとするものです。

地域連携パスで
退院後の患者に安心・安全を

現在、各地域で運用が進んでいる地域連携パスは、患者に提供する医療・ケアの質のさらなる向上を目指した国レベルの医療計画のなかに位置づけられるものです。この観点から厚生労働省は、地域連携パスのポイントを次のように説明しています。

地域連携パスとは

  • 急性期病院に入院中の患者が、回復期(リハビリテーション)病院を経て、早期に自宅に帰れるようなケアを含む診療計画を作成し、患者が治療を受けるすべての医療機関で共有して用いるもの
  • 患者の診療にあたる複数の医療機関が、役割分担を含む診療内容について、あらかじめ患者に書面にして提示し、説明することにより、患者が安心して医療・ケアを受けることができるようにするもの
  • 診療計画には、施設ごとの診療内容と治療経過、目指す最終ゴール等を明示する
  • 回復期病院では、地域連携パスを通して、患者がどのような状態で転院してくるかを事前に書面を通して把握できるため、転院後に改めて患者の状態を観察することなく、転院早々から患者の状態に即したリハビリテーションを開始することができる
  • この一連の流れにより、患者個々に、医療連携体制に基づく地域完結型医療を提供することができる

参考資料:第14回「医療計画の見直し等に関する検討会」(2005年12月9日)資料

退院支援・退院調整に
地域連携パス活用のメリット

地域連携パスでは、パスの連携先がそのまま患者の退院先の候補ともなります。あるいは退院後に訪問診療や訪問看護・訪問リハビリテーションなどのサービスが必要な状態で自宅療養に移行する患者の場合も、地域連携パスに組み込まれたケアネットワークをそのまま活用することができます。

ですから、「患者の転院先が見つからない」とか「在宅療養に移行したいのだが、患者サイドにかかりつけ医を決めてもらわないことには訪問看護ステーションにバトンタッチすることもできない」といった、退院支援でしばしば直面する問題も、地域連携パスを活用すれば比較的簡単にクリアできるようになります。

何よりも、地域連携パスを見れは、患者が入院から現在に至るまでどのような治療やケアを受けてきたのかが一目でわかるようになっていますから、退院前カンファレンスで地域のケアスタッフから「病気の経過についてもっと詳しく」などと、繰り返し説明を求められるようなことも、各段に少なくなるはずです。

連携チーム内で地域連携パスの必要性を共有する

院内パスはもちろん、地域連携パスも自分ひとりで運用できるというものではありません。まずは看護チームの仲間に、さらには医師やチームを組む他職種の仲間にも地域連携パスの必要性や活用のメリットを伝え、適宜勉強会を立ち上げるなどして共通認識を高めていくことから始める必要があります。

地域連携パスのモデル

たとえば国立循環器病研究センターはホームページ*¹で、「糖尿病連携パス」「脳卒中前方連携パス(脳卒中になる可能性の高い患者のための脳卒中予防連携パス)」「心臓リハビリテーションを組み込んだ急性心筋梗塞地域連携パス」を紹介しています。まずはこれらを利用して、運用してみてはいかがでしょうか。

また、がんについては、愛知県がん診療連携協議会の地域連携パス部会がホームページ*²で、独自に作成した「肺がん」「乳がん」「前立腺がん」「大腸がん」「胃がん」「肝がん」などの地域連携パス、および「パス説明・同意書」などをサイト上で公開しています。

さらに東京都では、都内の医療機関が共用できる5大がん(肺がん・胃がん・肝がん・大腸がん・乳がん)および前立腺がんの地域連携クリティカルパス「東京都医療連携手帳を運用しています。

この手帳はがん患者が手術など専門的な治療を受けた後に使用するもので、患者の5年ないし10年先までの診療計画を立てたものが、一冊の手帳にまとめられています。

参考資料*¹:国立循環器病研究センター「地域連携パス」

参考資料*²:愛知県がん診療連携協議会「地域連携パス部会」

参考資料*³:5大がんおよび前立腺がんの東京都医療連携手帳(クリティカルパス)