職業感染対策として知っておきたいワクチン情報




ワクチン接種

避けられない職業感染リスク
予防策は万全ですか?

病院などの医療機関はいうまでもありませんが、介護や福祉関連の施設などで、あるいは在宅において、仕事柄、病気を抱えている人に接触する可能性がある方は、常に「職業感染のリスク」を念頭に患者や利用者に対応していることと思います。

具体的には、感染症の有無に関係なく患者・利用者にかかわる際には、標準予防策、いわゆるスタンダード・プリコーション*を徹底し、院内や施設内、あるいは家庭内感染を防ぐと同時に、職業感染から自分自身を守ることが基本となるでしょう。

一方で、医療・ケア関係者は、自分自身が感染源となり、院内感染の運び屋になってしまわないように心がけることも大切です。

そのためには、食事や睡眠などの面から日々健康管理に努めると同時に、少なくとも年に1回は定期健康診断を受けて健康状態を把握しておくことも必要でしょう。

さらには、病院などの勤務先が院内感染対策の一環として行うワクチンによる予防接種を積極的に受けることも大切になってきます。

ところがこの予防接種については、スタンダード・プリコーションほどには、その重要性が語られていないのではないでしょうか。

ということで今回は、このワクチンに関する話を書いてみたいと思います。

*スタンダード・プリコーション(標準予防策)とは、感染症の有無にかかわらずすべての患者を対象に行う予防策のこと。患者の血液、体液(唾液、胸水、腹水、心嚢液、脳脊髄液など)、喀痰などの分泌物(汗は除く)、排泄物(尿、糞便、吐物など)、あるいは傷のある皮膚や粘膜は、すべてを感染の可能性がある物質とみなして対応する予防策のことを言う。
→ 患者ケアすべてに「標準予防策」をしていますか

院内感染対策の一環としての
ワクチン接種にガイドライン

ワクチンや予防接種に関して、「VPD」といういう言葉を聞いたことはないでしょうか。
VPDとは、Vaccine(ワクチン)、 Preventable(予防可能な)、 Diseases(疾患)の略で、文字通り「ワクチンで予防可能な疾患」のことを言います。

先の記事で紹介した「子宮頸がん」もVPDの一つです。
→ 子宮頸がんのワクチン接種、どうしていますか?

VPDの数は驚くほど多いのですが、現在日本国内において、広く一般的にワクチン接種が行われている主なVPDとしては、B型肝炎、ロタウイルス感染症、肺炎球菌感染症、百日咳、ジフテリア、結核、破傷風、日本脳炎、ポリオ(急性灰白髄炎)、風疹、麻疹、水痘、流行性耳下腺炎、インフルエンザなどがあげられます。

これらのVPDのうち、医療機関における院内感染対策としてとりわけ重要なものをピックアップし、それらのワクチン接種をすべての医療関係者にどのように行うかについて大まかな指針を示すワクチンガイドラインがあるのをご存知でしょうか。

ワクチン接種対象者を
「医療関係者全員」と明記

そのガイドラインとは、日本環境感染学会が2014年9月にまとめた「医療関係者のためのワクチンガイドライン」です。

その後2017年5月には、同ガイドラインの追補版、2020年6月には第3版が公表されています。

同ガイドラインが取り上げているのは、B型肝炎、麻疹(はしか)、風疹(三日はしか)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、水痘(みずぼうそう)、インフルエンザのワクチンです。
さらに、追補版では髄膜炎と破傷風を追加、さらに第3版では百日咳と帯状疱疹が追加され、されざれのワクチンについて解説しています。

同ガイドラインは、2013年4月に予防接種法が改正されたのを受けて、2009年5月に公表された「院内感染対策としてのワクチンガイドライン」を大幅に改訂したものです。

■受診・入院患者と接触する可能性のある人すべて
今回のガイドラインのポイントは、ワクチン接種対象者を「医療関係者全員」としている点です。
この場合の「医療関係者」とは、医療機関の受診患者および入院患者と接触する可能性のある人すべてを含むとあります。

したがって、常勤、非常勤、派遣、アルバイトの別なく、事務スタッフ、医療スタッフ、学生(実習生、指導教官)、ボランティア、清掃スタッフは言うまでもなく、院内の薬局やドラッグストア、食堂に出入りする業者も対象に含まれることになります。

ワクチン接種に伴う有害事象への
事前・事後の備えを万全に

ところで、ワクチンによる予防接種は、健康問題を抱えるいわゆる病人に対して行う治療とは異なり、通常は健康状態にある人に行うものです。

それだけに、同ガイドラインは、ワクチン接種後に起こる有害事象(ワクチン接種との因果関係は明確ではないものの生体にとって好ましくない出来事)に対しては特に万全の注意を払う必要があることを強調しています。

具体的には、不測の事態を最大限避けるために、
⑴ 接種前の問診の充実(既往歴、現病歴、家族歴など)
⑵ 健康状態を確認するための診察、および接種後の健康状態のチェック
を怠らないことに加え、
⑶ 予防接種を行う際には最低限の救急医療物品を備えておく必要がある、としています。

■医療関係者だからといってワクチン接種を強制しない
また、このような有害事象のことを考慮すると、医療関係者へのワクチン接種は、院内感染対策上重要ではあるものの法的義務はなく、医療関係者だからと言って決して強制すべはものではないと、注意を促してもいます。

なお、ワクチン個々の接種対象とすべき職種、接種時期、接種方法、効果、副反応(ワクチン接種による免疫反応以外の反応でワクチンとの因果関係が否定できないもの)などの詳細は、「医療関係者のためのワクチンガイドライン」(コチラ)を参照してください。

なお、中国の湖北省武漢市で発生し、世界的に感染が拡散され、日本でも感染者が日を追うごとに増えている新型コロナウイルスによる肺炎については、2020年1月末日の時点では、ワクチンはありません。

日本をはじめ各国の研究者たちが鋭意、その開発に取り組んでいるとの報があり、一日も早くいい報告が届くことを祈りたい思いです。