仕事を続けながら不妊治療を受けたい方に




妊娠

晩婚化に伴う晩産化により
仕事と不妊治療の両立が課題に

わが国ではこのところ、男女ともに晩婚化の流れに歯止めがかかりません。
併行して晩産化も進み、一昔前であれば高齢初産*とされていた年齢での出産が決して珍しいことではなくなっています。
*高齢初産:1991年以前は30歳以上としていたが、現在は35歳以上

ただ、男女ともに妊孕性(にんようせい)、つまり妊娠する力、妊娠させる力は年齢が上がるにつれて低下していくことがわかっています。

女性で言えば、30歳を過ぎたころから自然に妊娠する確率が徐々に低下しはじめ、35歳を過ぎると、子宮内膜症の影響や卵子そのものの質が低下してくることなどにより、妊娠する確率はガクッと落ちると言われています。

一方の男性側も、女性ほど顕著ではないものの、35歳ごろから徐々に精子の質の低下が始まり、妊孕性が落ちてくると考えられています。

結果として、不妊の検査・治療へと進むカップルが少なくないのが現状です。
厚生労働省は、実際にその経験がある、あるいは現在受けているというカップルは、全体の18.2%にのぼると報告。そのなかには仕事に就いている人も多く、仕事と不妊治療の両立が課題となるケースが多いことから、雇用者サイドに支援の重要性をアピールしています。

仕事と不妊治療の両立ができず
16%が離職している

厚生労働省は2017年8月に、従業員10人以上の企業(4000社)を対象に、雇用者側と従業員に仕事と不妊治療の両立にかかわる問題についてアンケート調査を行っています。

その結果、不妊治療を経験したことがあると回答した人(全体の14%)の半数以上(53%)が仕事と両立している一方で、16%が両立できずに離職し、8%が雇用形態を変更している実態が明らかになっています。

両立できずに離職したり雇用形態を変えた主な理由としては、「精神面で負担が大きいため」「通院回数が多いため」「体調、体力面で負担が大きいため」が多くあげられています。

■両立していても87%の人が両立の難しさを実感
この調査では、半数を超える人が仕事と不妊治療を両立してはいるものの、その87%が「両立は難しいと感じている」ことも明らかにされています。

「難しいと感じる」理由として、「通院回数が多い」「精神面で負担が大きい」「待ち時間など通院治療にかかる時間が読めない」「医師から告げられた通院日に仕事が入る」「仕事の日程調整が難しい」などがあげられています。

■不妊治療をしていることを職場に伝えている人は38%
仕事と不妊治療を両立させるためには職場の理解が欠かせないでしょう。
しかし調査では、不妊治療をしている、あるいは近々予定していることを職場に伝えている(伝える予定)と回答している人は38%と少なくなっています。

伝えていない理由としては、「不妊治療をしていることを知られたくないから」が最も多く、次いで「周囲に気遣いをしてほしくないから」「不妊治療がうまくいかなかったときに職場にいづらいから」となっています。

仕事と不妊治療の両立支援に
厚生労働省がリーフレット

不妊については、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性生活を続けているにもかかわらず、一定期間を過ぎても妊娠しない場合を「不妊」と理解している方が多いと思います。
この「一定期間」を日本産婦人科学会は、「1年と考えるのが一般的」としています。

不妊となると、とかくその原因は女性にあると考えがちではないでしょうか。
しかし、不妊に悩む夫婦の約半数は男性側に原因があるとする報告もあるようです。

不妊の原因がいずれにあるにしろ、仕事を続けながら不妊治療を受けるということになれば、妊娠・出産まで、あるいは治療をやめる決断をするまで、何年も治療が続くことも珍しくありません。
したがってこの間の、職場における不妊治療に対する理解と支援が不可欠となります。

そこで厚生労働省は、企業側と職場の同僚の理解を深めることを目的に、「仕事と不妊治療の両立支援のために~働きながら不妊治療を受ける従業員へのご理解をお願いします~」と題するリーフレットを作成し、ホームページで公開しています。

不妊治療に要する通院日数など
治療スケジュールも具体的に解説

このリーフレットでは、不妊治療のおおまかな流れとともに、男性不妊の場合と女性不妊の場合それぞれの治療内容、かかる費用、夫婦間で行われる体外受精及び顕微授精(いわゆる「特定不妊治療」)に対する費用補助、などについて詳しく説明しています。

また、先のアンケート調査において、不妊治療と仕事の両立を難しくさせている要因にあげられている「通院回数が多い」ことや「待ち時間など通院にかかる時間が読めない」ことなどに職場の理解が得られるように、不妊治療のスケジュールも詳しく掲出しています。

例えば、このなかにある「体外受精、顕微授精を行う場合、特に女性は頻繁な通院が必要となりますが、排卵周期に合わせた通院が求められるため、前もって治療の予定を決めることは困難です」の一文などは、特に上司の不妊治療に対する具体的な理解と支援を得るうえでとても役立つのではないでしょうか。

■プライバシーへの配慮について
この他、「プライバシーへの配慮について」や「仕事と不妊治療の両立に関する問い合わせ先一覧」、さらに従業員の不妊治療をサポートする企業独自の取組み例として以下を紹介しています。
⑴ 不妊治療を目的とした休職・休暇制度
⑵ 不妊治療のための費用の助成制度
⑶ 不妊治療に特化していないが、両立を支援するための柔軟な働き方に関する制度
⑷ 不妊治療に特化していないが、従業員からの相談を受ける取組み

■「不妊治療連絡カード」の活用を
また、巻末では「不妊治療連絡カード」を紹介しています。
これは、企業や職場に仕事と不妊治療の両立に関して理解と配慮を求めるためのツールとして、また仕事と不妊治療の両立支援制度を利用する際に医師または医療機関が発行する証明書として役立ててもらおうと、厚生労働省が作成したものです。

このカードは、厚生労働省のホームページ(コチラ)からダウンロードすることができます。
また、紹介してきた「仕事と不妊治療の両立支援のために」のリーフレットはコチラから全ページ(A4版8ページ)をダウンロードできます。現在不妊治療中の方、あるいは不妊治療を始めたいと考えている方はもちろんですが、職場の管理職の方も是非活用してください。

厚生労働省は2020年3月、不妊治療と仕事の両立に関する事業主や人事部向けに作成した「不妊治療を受けながら働き続けられる職場作りのためのマニュアル(コチラ)」と、同じ職場で働く上司や同僚向けに作成した「不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック(コチラ)」をWEBサイトにて公表している。いずれもダウンロード可。