誤嚥性肺炎の予防に役立つ3つのトレーニング

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誤嚥性肺炎の予防に
のどの筋肉を鍛える

もう5年ほど前になるでしょうか。『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』という本が大ベストセラーとなりました。

以来、この本で紹介された「のどの筋肉」を鍛えて「飲み込む力」、つまり嚥下力を強化するトレーニングが、高齢者を中心にちょっとしたブームになっています。

ちょうどその頃、永六輔さんや森光子さんなどの著名人が相次いで誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)で亡くなっていたことも、のどを鍛えるトレーニングをブームとして盛り上げる一因になっていたのだろうと思います。

しかし、直接の火付け役(?)となったのは、間違いなくこの本の著者で、頭頸部外科医として30年以上にわたり嚥下障害の治療や予防に取り組んできた西山耕一郎医師でしょう。

死因ランクを下げた肺炎だが

かつて肺炎は、長きにわたり日本人の死因トップを走ってきました。戦後に入りさまざまな抗菌薬(抗生物質)が登場したおかげで、肺炎による死亡者数が急激に減少し、2021(令和3)年の死因順位では5位に下がっています。

ただし、65歳以上に限って見ると、肺炎による死亡者数は年々確実に増加してきており、80歳、90歳代では死因の2位を占めるまでになっています。お察しの通り、その背景には「誤嚥性肺炎」があります。

西山医師がすすめる「顎を持ち上げてのどを鍛える体操」は、この誤嚥性肺炎を少しでも減らそうとの思いから編み出されたトレーニング法です。

舌の筋力を鍛えて
誤嚥性肺炎を予防する

ほぼ同時期、食べ物や飲み物を誤嚥する原因の一つが舌の筋力の低下にあるとして、舌の筋力を鍛えて嚥下力アップを図るトレーニング器具の開発に取り組む歯科医師がいました。

和歌山県内の老人ホームで、10年余りにわたり口腔ケアのボランティア活動を続けてきた笠原直樹医師です。笠原医師が開発したトレーニング器具は、「タン練くん」*²として商品化され、2018年9月から販売されています。

商品化に至るまでには、インターネットで開発資金の一部を募るクラウドファンディングを行ったそうですが、出資者のなかには「誤嚥性肺炎で弱っていく患者をみてきたので協力したい」という看護師さんも何人かいたと聞きます。

その「タン練くん」ですが、赤ちゃん用の哺乳ビンをそのまま大きくしたような、形状も機能もよく似たシリコン製のトレーニングボトルです。

あえて訓練時間を設けなくても、また訓練であることを意識しなくても、水やお茶を飲むというごく日常的な動作のなかで舌の筋力が鍛えられるように工夫されているのが特徴です。こちらも高齢者に好評で、製造が追いつかないほどの売れ行きと聞いています。

鍛えて強くなった筋肉により食事中の舌の動きがスムーズに

このトレーニングボトルは、ボトルに取り付けられた吸い口となる乳首部分の先端に小さな穴が開けてあり、そこからボトル内の水(お茶でもジュース飲料などでもOKです)を飲むようになっています。

その乳首部分は舌を前後に動かして吸引力を上げないとボトル内の水を吸い出せないように工夫された形状になっています。そのため、満足できるだけの十分量の水をとるには、しばらく吸い続けなくてはなりません。

この吸い続ける動きの繰り返しがそのまま舌の筋肉を鍛えることにつながっているのです。舌の筋肉が鍛えられて強くなると、食事をするときに舌をスムーズに動かすことができるようになりますから、食べたものや唾液を間違いなく食道へと送り込み、結果、誤嚥を防ぐことができるというわけです。

なお、「タン練くん」には、初心者向けに用意された練習用の小容量(30ml)ボトルと、舌の筋力が強まってからの大容量(200ml)ボトルの2タイプがあります。いずれもインターネットで購入可能です

誤嚥性肺炎を予防して
「口から食べる」を続けるケアを

私たちが普段なにげなく行っている「口からものを食べる、飲む」という摂食嚥下機能は、非常に複雑なメカニズムから成り立っています。一般にそのメカニズムは、以下の5段階から成ると考えられています。

⑴ 先行期:目の前の食べ物、飲み物を認識して口へ運ぶ
⑵ 準備期:口に入れた食べ物を噛み砕いて咀嚼し、唾液と混ぜて飲み込みやすい食塊にする
⑶ 口腔期:食塊を口の奥に移動させて口腔から咽頭へ送り込む
⑷ 咽頭期:嚥下反射により食塊を一瞬で咽頭を通過させて食道へ送り込む
⑸ 食道期:食道壁の収縮・弛緩によりに食塊を下方へ送り、胃に到達させる

上記の⑴と⑵が摂食機能、⑶⑷⑸が嚥下機能で、上記の「のどを鍛えるトレーニング」と「舌の筋力アップを図るトレーニングボトル」は、嚥下機能のなかの口腔期と咽頭期の機能アップにより誤嚥を予防しようというトレーニングです。

嚥下体操により
むせにくい体づくりも

なお、食べたり飲んだりしたものでむせたり咳き込んだりしないための「嚥下体操」もさまざま紹介されています。ここでは、浜松市リハビリテーション病院えんげセンターの藤島一郎医師による、呼吸訓練から始まる「“藤島式”嚥下体操セット」*³を紹介しておきたいと思います。

食事前の準備体操として、動画に合わせてやってみるように、誤嚥リスクが疑われる患者に勧めてみてはいかがでしょうか。

栄養状態を改善してサルコペニアを防ぐ

一方で私たちは、摂食嚥下機能が存分に機能しているだけでは、自分の口からものを食べて栄養状態の維持・改善を図り、サルコペニアと呼ばれる状態に陥らないようにしていくことはできません。

摂食嚥下の機能以外にもアプローチしていくべき点がいくつもあることを、先にこちらで紹介しています。併せて日々のケアにお役立てください。

高齢者が要介護状態に陥る原因としてサルコペニアが注目されている。重度の栄養障害を原因に筋肉量や筋力が落ちていきADL・QOLが低下していく状態だ。予防のカギを握る「口から食べることをあきらめさせないケア」の普及に取り組む小山珠美氏を紹介する。

参考資料*¹:西山耕一郎著『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』(飛鳥新社)

参考資料*²:タン練くん グリーン(200ml) 一般医療機器 (口腔嚥下機能訓練器具)

参考資料*³:「”藤島式”嚥下体操セット」