看護師のからだに無理のない正循環シフト

リラックスシフト

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「正循環シフト」は
人間のリズムに逆らわない

病院や介護施設をはじめ、ホテルやコンビニエンスストアなど、24時間体制のもと365日無休で稼働する職場がこのところ急増しています。そこで働く人々は交代制勤務(シフトワーク)を余儀なくされることになります。

その際の、心身への負担を軽減するための勤務シフトの組み方として、「正循環シフト」が注目を集めています。

私たちのからだには体内時計がひそんでいますが、この体内時計が刻んでいる「サーカディアンリズム」(「概日リズム;がいじつりずむ」とも言う)と呼ばれるリズムに合致した、からだに無理のない交代周期が「正循環」です。

たとえば朝8時から16時までの「日勤」、16時から24時までの「準夜勤」、24時から翌朝8時までの「深夜勤」といった3交代制の職場では、日勤が続いた後は準夜勤、次は深夜勤という周期によるシフトの組み方、これが正循環です。

正循環シフトはからだに無理がない

この周期による交代であれば、勤務を開始する時間が日を追うごとに時計回りにずれていくようになっていきます。そのため、自分のサーカディアンリズム、つまりからだのリズムを勤務のリズムに合わせやすく、からだにかかる負担をより少なく抑えることができます。

この正循環シフトに対し、多くの看護現場において伝統的に採用されてきた勤務シフトの組み方は、深夜勤から準夜勤、準夜勤から日勤といった周期で、時計を早めて前倒しで勤務を開始するかたちになります。

このシフトの組み方では、正循環シフトとは反対に、勤務を始める時間が時計回りとは逆の方向にずれ、体内時計が刻むサーカディアンリズムに逆らうことになります。そこで、「逆循環」シフトと呼ばれているのです。

神奈川県立がんセンターの
正循環シフト導入の試み

正循環シフトを実際に取り入れる医療機関は増えつつあります。

一例をあげると、平日朝の7時45分からという1日のうちでもっとも慌ただしい時間帯に「NHKニュース おはよう日本 関東甲信越」という番組があり、この特集コーナーで、神奈川県立がんセンターの緩和ケア病棟における正循環シフト導入の試みが紹介されたことがありました(2015年8月20日放送)。

当時の私には「正循環シフト」という言葉は聞き慣れないものでしたので、後でじっくり見ようと、慌てて録画しておいたのが幸いしたようです。

その録画を見直してみると、当センターの看護局では、従来の逆循環シフトから正循環シフトへ切り替えるか否かの選択は、看護師さん個々にゆだねられているとのことでした。

正循環シフトは「疲労が回復しやすい」

番組内では、2011年という早い時期に、いち早くこの正循環シフトを選択した1人の看護師さんを取りあげ、正循環シフトに切り替えてから「体調が改善したことに自分でも驚いた」との感想を紹介しています。

深夜勤から準夜勤に入るような逆循環シフトに比べると、正循環シフトでは、勤務と勤務の間が自ずと半日以上開くことになります。その間に十分な休息をとることができ、疲労を回復しやすいことを実感しているそうです。休息不足を感じている看護師さんには検討の余地がありそうです。

なお、夜勤中の脳の疲れや集中力の低下対策についてはこちらを参照してください。

日看協が発表した「夜勤形態」の調査結果では、二交代制が最も多く、勤務時間は約16時間に及んでいる。この間に1時間の休息と続けて2時間の仮眠をとっているようだが、体内時計から考えると脳の疲れや集中力の低下が懸念される。回避策としてブドウ糖補給を……。

看護協会もガイドラインで
正循環シフトを奨励

正循環シフトについては日本看護協会(以下、日看協)も、ホームページで公開している『看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン 全体版』*¹のなかで言及しています。

そこでは、勤務編成の基準としたあげた11項目の1つ、基準10に「交代の方向は正循環の交代周期とする」をあげ、正循環シフトの普及を図ろうとしているのです(P.50)。

しかし逆循環シフトにも、疲労がたまりやすいといったマイナス面はあるものの「連続した休暇を取りやすい」などのメリットがあります。

そんなメリットにより、今までのところ、特に若い看護師さんの間では、逆循環シフトのほうが人気があるともいわれています。

正循環シフト採用の病院は4分の1弱

少し前になりますが、2014年に日看協が行った上記ガイドラインの実施状況に関する調査では、三交代制勤務で正循環シフトを「実施している」病院は23.3%にとどまっています。

正循環シフトを「現在検討している」と回答した病院も37.2%と少なく、看護現場において正循環シフトは、まだ主流とはなっていません。

「からだにやさしい」と形容されることの多い正循環のシフト。これまで主流だった逆循環シフトに比べ、サーカディアンリズムの狂いによるホルモン分泌の乱れをいち早く調整してくれることは明らかです。

そしてこのことは、エストロゲン濃度の上昇による乳がんの発症リスクの低減につながることを示唆しています。夜間勤務の欠かせない看護現場にあっては、正循環シフトのいっそうの普及が望まれるところです。

「正循環」が診療報酬の加算要件に
2016(平成28)年度診療報酬改定では、「夜間看護体制の充実に関する項目」が新設されている。このなかで、勤務編成の基準11項目のうち3項目(①勤務間隔11時間以上 ②交代周期の方向は正循環 ③連続夜勤2回以下)が採用され、要件項目全てを満たせば入院基本料の全区分で加算算定が可能となっている。

夜間勤務と乳がん発症リスク

なお、女性の夜間勤務については「乳がんの発症リスクを高める」とする健康問題がよく指摘されています。

日本乳癌学会の疫学調査のエビデンス検証によれば、「その可能性はあながち否定できない」とのこと。詳しくはこちらを読んでみてください。

「女性の夜間勤務は乳がんの発症リスクを高める」との雑誌記事を読んだのをきっかけに、そのエビデンスを探ってみた。日本乳癌学会の疫学調査によるエビデンス検証によれば、可能性があるとのこと。あながち否定できないからには、リスクを踏まえた予防的行動を。

参考資料*¹:日本看護協会「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン全体版」