看護に活用を!「患者の怒りを鎮める言葉」




怒りを鎮める

看護師に向けられる
患者・家族の暴言・暴力

前々回の記事で、訪問看護師さんが受けている暴力被害について記しましたが、在宅ケアの訪問先に限らず、病棟や外来でも、看護師さんは患者(利用者)や家族からの暴言や暴力に遭遇することが少なくないようです。
そのなかには、病気そのものによる、ある意味避けがたいものもあるでしょう。

しかし、このところ圧倒的にふえているのは、患者や家族のストレス、あるいは怒りの矛先として、看護師さんが暴言・暴力を受けるケースです。

この背景にあるとされているのが、看護師さんと患者・家族間に生じがちな認識の「ずれ」です。そのずれを埋めるコミュニケーションの方法として、傾聴について記事をまとめてみましたが読んでいただけましたでしょうか。

看護においては「傾聴する」ことの大切さが強調される。ただこの「傾聴」は、リエゾン精神看護専門看護師によれば、ただじっくり聞いていればいいというものではなく、聞いて理解したことを相手に伝えることのの繰り返しにより、双方が納得して合意することが大切だと……。

ところで、患者や家族の訴えに親身になって耳を傾け、真摯に対応していても、そこにある認識のずれがどうしても解消しきれないということもあるはずです。

その結果、患者・家族の不平や不満が募っていき、激しい怒りとなって看護師さんに向けられるというケースもあるのではないでしょうか。
今回は、そんなときの対応を、1つの記事を紹介しつつまとめてみたいと思います。

不満の訴えにはまず、
「確かに」と、向き合う姿勢を示す

医師・医療従事者のための会員登録制(無料)サイト「日経メディカル Online」に、「はりきり院長夫人の“七転び八起き」という人気の匿名コラムがあります。
患者目線での、ときに容赦ない問題提起があり、興味深く読み続けています。

その2016年3月3日のテーマは、「患者の怒りを鎮静させる2つの言葉」でした。
そこにまずあげられているのが、「確かに」という言葉です。

患者・家族から激しい怒りを向けられると、だれもが、
「なぜこんなに怒らせてしまったのだろう」と、
それまでの経緯を冷静に振り返ってみることと思います。

すると、そこに、何らかの不平や不満をめぐるやりとりがあったことに気づく場合が多いのではないでしょうか

つまり、怒りをぶつけた側は、その時の医療者の対応を、
「不満を伝えたのにきちんと向き合ってもらえなかった」
と受け止めており、そのことが患者・家族の胸に1つのしこりを作り、怒りを生んでしまった、というケースが多いのではないかと思います。

そこで、コラムの書き手である院長夫人は、怒りとともに不満を訴えられたときは、まずは、「確かに、つらかったでしょうね」などと、
相手の訴えに真摯に向き合い、理解し、受け入れようという姿勢を示すことをすすめています。

「でも」ではなく「実は」で
納得を得られる説明をする

きちんと向き合う姿勢を示したうえで次に取り組むべきは、患者・家族の怒りのもととなっている不安や不満に感じていることに、相手にとって納得のいく、安心できる答えを出していくことだと思います。

その際、看護師さんをはじめとする医療者側としては、患者・家族が訴える不満に、とかく「でも」と反論しがちでしょう。
しかし、「それでは火に油を注いでしまうことになりがち」と、院長夫人は警告します。

おそらく言葉足らずであったり、言葉が難しすぎたり……、医療者側が説明を尽くしたつもりでいても、患者側にはきちんと伝わっていなかった――。
そのことが火種となり、怒りを生んでしまったのでしょう。

そこで、「でも~」ではなく「実は~」のかたちで、説明不足で認識のずれを生んでしまったことを認めつつ、自分たちが伝えたかったことをきちんと伝え直して、納得の得られるようにしていく、というわけです。
このようにすると、激しかった患者・家族の感情も少しずつ鎮まっていくようです。

この、「確かに」と「実は」の2つの言葉、看護場面で患者や家族、場合によっては医療チームのメンバーから予想外なかたちで怒りを向けられるようなことがあったら、是非一度使ってみてはいかがでしょうか。

なお、医療現場では、医師たちも怒りの対処法をあれこれ工夫しているようです。
その実際が、ここの言葉で語られている本があります。
こちらの記事を参考に、一度目を通されてはいかがでしょうか。

医療現場には怒りが渦巻いている、と語った人がいる。その現場にいて、看護師同様に医師たちもそれぞれが「アンガーマネジメント」に取り組んでいることがわかる本を紹介する。怒りは6秒やり過ごすことができれば問題は起きないと言うが、その6秒が簡単ではない。医師たちの努力を……。

リエゾン精神看護専門看護師曰く
ときには患者に「NO」も伝える

ところで、看護は非常にストレスフルな仕事です。
実際、「病棟に働く看護師の7割近くが患者との対応場面で怒りを感じている」
との調査結果も公表されています。

患者や家族から無理難題を際限なく要求されて「怒り」を感じることもあるだろう。6割を超える看護師が、その体験をしているとの調査結果もある。怒りを感じながらその感情を抑え込んでいるのが現状のようだが、むしろいいかたちでケアに生かしては……。

ですからおそらく看護師のあなたは、怒りによるストレスにより「イライラ」したり、「ゆううつ」になったりしたときに、その感情をコントロールすることは簡単ではないことを、ご自身の体験からよくわかっておられるだろうと思います。

同様に、病気になるということ、そして入院生活を、あるいは通院にしても闘病生活を強いられることは、誰にも大変ストレスな出来事です。

患者が抱えている、自分ではどうにも対処しきれないストレスが、身近にいる看護師さんに向けられることは往々にしてありうることだという受け止め方もできるのではないでしょうか。

そんなときの対応として、精神看護専門看護師の平井元子さんはリエゾン精神看護の観点から、ときに患者に「NO」をはっきり伝えることも、その場しのぎではない患者との関係を築いていくうえで必要な場合もあると、近著『リエゾン―身体(からだ)とこころをつなぐかかわり  』(仲村書林)で書いておられます。

もちろん、相手に大きく深呼吸を促す、そして自らも一呼吸おくなどして怒りがいったん鎮まったうえでの話ですが……。
是非読んで参考にしていただけたら嬉しいです。