「骨粗鬆症マネージャー」と骨折の一次予防

カルシウム

日本骨粗鬆症学会認定の
「骨粗鬆症マネージャー」をご存知?

「彼女、骨粗鬆症リエゾンナースとして活躍しているんですよ」

親しくさせていただいている看護師さんから同僚だという女性をそう紹介されたときは、「精神科領域のリエゾンナースならわかるけど、骨粗鬆症にリエゾンナースっていたかしら」と、口には出さなかったものの、ふと疑問に感じ、少々戸惑いました。

おそらく私が納得のいかない表情をしていたからでしょう。とっさにその女性、Eさんは、こんなふうに説明してくれました。

「骨粗鬆症リエゾンナースというのは、あくまでも私たちの間での通称です。正確に言えば、日本骨粗鬆症学会認定の骨粗鬆症マネージャーです」

ああ、それなら聞いたことがある……。

とは言うものの、骨粗鬆症マネージャーと呼ばれる方々が、どのような立場で、どのような役割を担っているのかは、漠然としかわかっていませんでした。

そこで、いい機会と思い、Eさんの話を参考に整理してみたいと思います。

日本骨粗鬆症学会などによれば、骨粗鬆症の患者数は女性980万人、男性300万人の計1280万人に上ると推計される。高齢化が進むのに伴いこの数はさらに増えることが見込まれることから、厚生労働省は2022年9月、骨粗鬆症検診の対象者拡充や男性の追加など実施要項を見直す検討を始めたことが報じられている。

骨折を減らすため多職種で取り組む
骨粗鬆症リエゾンサービス

高齢化率、つまり65歳以上の人口が総人口の28.8%(2021年)のこの国にあって、要介護や寝たきり状態につながりがちな高齢者の骨折や転倒をいかに防ぐかは喫緊の課題です。

特に、骨折に伴い歩行能力が著しく低下する大腿骨近位部(頸部)骨折は、患者のQOL、とりわけ活動面に与える影響が大きく、その一次予防、二次予防としてさまざまな取り組みが行われていることはご承知のことと思います。

高齢者の骨折の背景には、骨量(骨全体に含まれるカルシウムなどミネラルの量)の低下が招く骨粗鬆症があることはよく知られています。

そこで日本骨粗鬆症学会は、骨折リスクの高い骨粗鬆症患者に対する予防や治療のいっそうの充実を図ろうと、骨粗鬆症治療におけるリエゾンサービスの普及に力を入れています。

リエゾン(liaison)という言葉は、「リエゾン精神医学」「リエゾン精神看護」等々でお聞き及びでしょうが、そもそも語源は「つなぐ」「連携する」等を意味するフランス語です。

ただ日本骨粗鬆症学会は、よりわかりやすく「連絡係」と説明しているようですが……。

骨粗鬆症の予防や治療は、薬物療法や栄養療法、運動療法と広範囲に及び、医師の力だけで十分カバーできるというものではありません。

そこで、骨粗鬆症に精通したさまざまな職種のスタッフと医師とが密接に連携し合いながら、骨粗鬆症の一次予防、二次予防を効果的に進め、骨折を減らしていこうという取り組みがすすめられています。

これが、骨粗鬆症リエゾンサービスです。

さらに詳しくは、『わかる!できる! 骨粗鬆症リエゾンサービス 改訂版 骨粗鬆症マネージャー実践ガイドブック』*¹が参考になります。

骨粗鬆症マネージャーの半数は
骨粗鬆症リエゾンナース

骨粗鬆症リエゾンサービスを、医師を中心とするチームが一丸となって推進していくには、チームに参加する医師以外の医療スタッフも骨粗鬆症に関する基本的な専門知識と技能を十二分に備えている必要があります。

そこで、日本骨粗鬆症学会は、骨粗鬆症リエゾンサービスの役割を担う医療スタッフ(医師を除く)を専門資格者として認定する制度、「骨粗鬆症マネージャー制度」を創設し、骨粗鬆症マネージャー養成のためのレクチャーコースをスタートさせています。

骨粗鬆症マネジャーになるには、以下の資格・要件をすべて満たす必要があります。

  1. 保健師、看護師などの国家資格を有する医療・福祉従事者である
  2. 日本骨粗鬆症学会が行うレクチャーコースを受講している
  3. 日本骨粗鬆症学会の会員である
  4. 日本骨粗鬆症学会が行う認定試験に合格している

このうち「2」のレクチャーコースは4時間ほどのプログラムで、2012年10月から年2回開催されています。

骨粗鬆症マネージャーの半数は看護職(骨粗鬆症リエゾンナース)

直近の報告によれば、4月1日(2022年)に第7期骨粗鬆症マネージャーが認定され、認定者総数は3450名となっています(認定期間は5年間)。

その職種別内訳をみると、看護師(保健師、助産師を含む)が全体の51%と、半数を上回っています。

通称で骨粗鬆症リエゾンナースと呼ばれるのは、この方たちです。

次いで、理学療法士19%、薬剤師16%、診療放射線技師6%、管理栄養士3%、作業療法士2%、その他3%の順になっていて、その他には介護福祉士も含まれています。

骨粗鬆症マネージャーが担う
骨折のリスク管理と一次予防

骨粗鬆症リエゾンサービスの活動は、医療機関(病院や医院、クリニック)、高齢者施設、地域(薬局)などで行われます。

その活動内容は場所によって異なりますから、骨粗鬆症リエゾンマネジャー(リエゾンナース)に期待される役割も違ってきます。

しかし、目指すところは一つ、「骨粗鬆症発症後の治癒率向上と骨折の防止」です。

医療機関においては、『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版』*²に基づいて行われる骨粗鬆症の薬物療法の服薬や運動療法、栄養改善のための患者教育・指導に、多職種チームとしてかかわっていくことになります。

この骨粗鬆症リエゾンチームに参加して活動しているEさんによれば、チームとしての活動においてリエゾンナースに最も期待されるのは、骨折のリスク管理とのこと。

病状を把握したうえで、既往歴や内服薬使用の履歴、食事の摂取状況、運動、および諸検査の結果などから患者個々の骨折リスクを把握し、担当医や連携するチームスタッフ間におけるリスクの共有に努めているそうです。

同時に、骨粗鬆症治療中の患者には退院後に備え、独自に作成したパンフレットを活用して正しい服薬方法や食事や運動面の指導など、骨折の一次予防に必要な情報を栄養士など他の職種と連携して提供しているそうです。

骨折リスクの高い患者は地域担当者と連携も

加えてEさんは、入院中の骨折リスクの高い患者については、退院支援看護師などと連携することもよくあるとのこと。

また、かかりつけ医や退院後に患者を担当する訪問看護師などにリスク管理に関する情報提供を行うことも、骨粗鬆症リエゾンナースの重要な役割と認識しているそうです。

最近は、地域包括ケア支援センターの担当者から、地域ケア会議でケアワーカーたちを対象に骨粗鬆症や骨折・転倒予防に関するレクチャーを依頼されることもあり、「なかなかやりがいのある仕事だと思っている」と話しています。

なお、骨粗鬆症マネージャー制度や骨粗鬆症マネージャー認定資格等の詳細は、日本骨粗鬆症学会のホームページにある「骨粗鬆症マネージャー制度規則」*³を参照してください。

骨粗鬆症の早期発見に検診を

なお、骨粗鬆症は更年期以降の女性に多いのですが、「サイレント・ディジーズ(沈黙の病気)」と呼ばれるように、はじまりは何の症状もなく、深く静かに進行し、かなり進んでから自覚症状が出るのが特徴です。

症状を自覚する前、できれば更年期に入る前から、定期的に骨量(骨密度)をチェックして、早めに骨量の減少に気づくことが骨粗鬆症予防につながります。

この早期発見に、市区町村が実施している骨粗鬆症検診の受診をおすすめします。

更年期以降の女性に多い骨粗鬆症は、骨折や猫背、変形性関節症につながりやすい。予防策の要は、早い時期から定期的に骨量チェックを行うこと。最近は体組成計で推定骨量をチェックできるが、自治体の骨粗鬆症検診を受診して、検診後の指導も受けておきたい。予防にはミカンも。

更年期対策としてのホルモン補充療法も

また、更年期症状緩和の切り札とされるホルモン補充療法(HRT)は、骨粗鬆症の予防効果も期待できることが研究で確認されています。詳しくはこちらを。

更年期症状を緩和する切り札とされるホルモン補充療法は、日本では浸透せず、普及率は2%に届かないと聞く。その理由として副作用を指摘する声が多い。だが、NHKが更年期症状の治療医を対象に行った調査では、専門知識や経験の不足がこの治療を行わない理由らしい。

参考資料*¹:『わかる! できる! 骨粗鬆症リエゾンサービス 改訂版―骨粗鬆症マネージャー実践ガイドブック』(ライフサイエンス出版)

参考資料*²:『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版』(ライフサイエンス出版)

参考資料*³:日本骨粗鬆症学会「骨粗鬆症マネージャー制度規則」