水銀血圧計、水銀体温計を使用していますか?




水滴

水銀血圧計・水銀体温計は
2021年以降製造・輸出入禁止に

「水銀」と聞き、とっさに血圧計や体温計を思い浮かべる方は多いと思います。
とりわけ看護職にある方は、いずれもきわめて身近なツールであるだけに、水銀による健康被害や環境汚染にまではなかなか考えが及ばないのが正直なところでしょう。

しかし水銀は、有毒性の重金属です。
私たちの国は、この水銀、正確にはメチル水銀化合物による「水俣病(みなまたびょう)」という公害病を経験しています。

第1号の患者発生からすでに60年が経つというのに、いまだに水銀による四肢の運動障害に襲われれる患者が発生しており、依然、深刻な事態が続いています。

「水俣条約」(国際条約)と「水銀汚染防止法」(国内法)

そんななか、やや遅きに失した感はあるものの、2013年10月に国際条約である「水銀に関する水俣条約(水俣条約)」が採択されています。

この採択から2年後、2015年12月には「水銀による環境の汚染の防止に関する法律(水銀汚染防止法)」が成立しています。

いずれも、水銀の人為的な排出などによる健康被害や環境汚染を防ぐことを目的に、水銀使用製品の取り扱い、および管理を厳しく規制しています。

この条約と法律により、水銀血圧計と水銀体温計は2021年1月1日以降の製造・販売および輸出入が禁止されます。

これを受け医療現場においても、水銀血圧計や水銀体温計の取り扱いに法律に則った新たな対応が求められることになります。
今回はその辺の話を書いてみたいと思います。

水銀血圧計も水銀体温計も
2021年以降も使用できるが……

水俣条約や水銀汚染防止法により、2021年から水銀血圧計も水銀体温計も製造はストップしますが、使用が全面的に禁止されるわけではありません。
現在使用している、あるいは保管している製品はそのまま使い続けることができます。

ただし、水銀血圧計をこの先も継続して使用することについて、日本高血圧学会は、使用期間の長期化に伴い、いわゆる金属疲労として、水銀の蒸発や不純物の混入、部品の劣化などが生じ、測定値の精度が落ちる可能性があることを指摘し、定期的なメインテナンスを行うことを推奨しています。

このメインテナンスについては、国内で販売されている血圧計の製造・販売に携わっている企業が、自社製品の各機器やカフの耐用年数などから割り出したメンテナンスの時期を、購入時に渡される保証書や使用方法説明書などに明記しているはずです。

日本高血圧学会は代替品への切り替えを推奨

しかしながら、水銀含有機器の製造と輸出入が禁止となる2021年以降は、メンテナンスを受けること自体が今以上に困難になると予測されています。

こうした点を考慮して、日本高血圧学会は、2020年までを移行期間と捉え、水銀血圧計の破棄を推奨しています。

破棄する際の水銀血圧計の代替品として、いろいろな底部の者が売り出されており、選択に迷うところですが、電子圧力柱血圧計がいいようです。

電子圧力柱血圧計とは、水銀血圧計の見やすさはそのままに、水銀を使わず、圧センサーで検出したカフ内圧値が、液晶画面に水銀柱をイメージした電子柱による棒グラフでリアルタイムに表示されるようになっているものです。
これが、水銀血圧計に慣れている方には最も馴染みやすいようです。

「水銀イメージデジタル血圧計」「水銀レス血圧計「ハイブリッド血圧計」「疑似水銀血圧計」などの商品名で市販されている血圧計は、このタイプです。
詳しくは、日本高血圧学会ホームページの「水銀血圧計に関するQ&A」*¹を参照してください。

水銀血圧計・水銀体温計の破棄は
医師会による回収事業の活用を

不要となった、あるいは破棄することに決めた水銀血圧計や水銀体温計は、産業廃棄物として取り扱うことになりますから、水銀の取り扱いを法的に認められている産廃業者に処分を委託することになります。
くれぐれも不用品回収業者と間違わないように!!

ただ、単品で処分を委託すると、運搬費用と水銀の処理費用などを合わせて、業者による違いや地域差などはあるものの、数万円になると言われています。
なによりも、なんやかや手続きのわずらわしさが避けられません。

また、これは産廃業者への信頼性の問題になるのですが、なかには有害物質である水銀の処分を法的に決められた方法で行わず不法投棄してしまい、その地域の環境汚染から住民の健康被害を招いてしまうといったリスクも考えられます。

こうした事態を防ごうと、環境省は、病院やクリニックなどが血圧計や体温計など水銀医療機器の処理責任を負っていることを考慮し、日本医師会と連携して、水銀血圧計などの回収事業を行っています。

この回収事業を活用すれば、環境汚染の心配がなく、廃棄にかかるコストも、地域により異なるものの、1000~5000円程度で済むと見込まれています。

この回収事業は、常時行われているわけではなく、期間限定の事業です。
水銀血圧計などの廃棄を考えたら、まずは最寄りの医師会、あるいは血圧計の販売店か市区町村の窓口に、その期間や処分方法を問い合わせてみるといいでしょう。
併せてコチラの記事も参考に!!

日本高血圧学会が5年ぶりに改訂した「高血圧治療ガイドライン2019」を公表した。高血圧の基準値は据え置くも、降圧目標値は10㎜Hg引き下げた。患者には生活習慣の徹底改善が求められる。その第一歩となる減塩も、食塩摂取目標量0.5㌘減と厳しくなる。

参考資料*¹:日本高血圧学会「水銀血圧計に関するQ&A