インフルエンザ流行の兆しにワクチン接種を




発熱

今年のインフルエンザ対策は
例年より2カ月早めに

日本のインフルエンザの流行は、多少の地域差はあるものの、冬の乾燥期、おおむね12月下旬から3月上旬とされてきました。
したがって予防のためのワクチン接種は、例年どおり、12月上旬までに受けておけばいいだろう、と考えている方が多いのではないでしょうか。

ところが今年(2019年)はそれでは手遅れになりそうなのです。
厚生労働省は9月27日、沖縄県や九州を中心とする10都県で、インフルエンザの患者数がすでに流行入りの目安を超えたと発表しています。

特に沖縄県で患者数が突出しており、大きな流行の発生・継続が疑われる「警報レベル」に達しているとのこと。
まだ、全国的な流行には至っていないものの、例年より2カ月ほど早い流行になると予測し、早めに予防策をとるよう注意を呼び掛けています。

医療関係者はインフルエンザの
職業感染と院内感染を防ぐ

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる急性の呼吸器感染症です。
感染経路は咳やくしゃみ、会話時に感染者から発生する塗沫を介した、いわゆる塗沫感染が多いのですが、その他の塗沫の付着したドアノブや手すり、共有タオルなどに触れた手指を介した接触感染も少なくないようです。

こうした感染経路から考えると、こまめな手洗いとマスクの着用が予防の鉄則となります。
そのうえで、インフルエンザに対する最も効果的とされる予防手段は、感染を受ける前にインフルエンザワクチンを接種することです。

特に、インフルエンザ患者と接触する可能性の高い医療関係者は、まずは職業感染から自分自身を守るために、また院内感染防止の観点から、さらにはインフルエンザに罹患して欠勤するような事態を防ぐためにも、積極的にワクチン接種を受けることがすすめられています。

■毎年1回インフルエンザワクチンの接種を
日本環境感染学会が2014年9月にまとめた「医療関係者のためのワクチンガイドライン」では、国が定めた予防接種実施規則の第6条による「接種不適当者」に該当しないすべての医療関係者は、法律上の義務はないものの、インフルエンザワクチンを毎年1回、自ら積極的に接種することをすすめています。

ここで言う「予防接種実施規則第6条による接種不適当者」とは、以下のいずれかに該当すると認められた場合です。
⑴ 明らかな発熱(摂氏37.5度以上)が認められる
⑵ 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかである
⑶ ワクチンの接種成分によるアナフラキシーを呈したことがあることが明らかである
⑷ 予防接種を行うことが不適当な状態にあると医師が判断している

職業柄病気を抱える人に接触する可能性があれば、職業感染リスクを常に念頭に置く必要がある。標準予防策も重要だが、ワクチンによる予防接種により自らが感染源になることを防ぐことも重要だ。このワクチン接種の指針となるガイドラインのポイントをまとめた。

インフルエンザワクチンは
妊娠中の女性も接種できる

数ある予防接種用ワクチンのなかには、妊娠中、または妊娠している可能性の高い女性は受けられないワクチンがあります。
たとえば風疹、いわゆる三日はしかのワクチンです。

風疹ワクチンは生ワクチンですから、妊娠中、とりわけ妊娠初期に接種を受けると、胎児に感染して流産、早産の危険性が高まるリスクがあります。
出生後では約50%の確率で先天性風疹症候群を発症させるリスクがあるとされています。

その点インフルエンザ予防に使われるワクチンは、不活化ワクチン、つまりウイルスの感染力や病原性をなくした成分でつくられたワクチンです。
そのため胎児に影響を与えるリスクはないとされ、妊娠中や妊娠している可能性の高い、さらには近々妊娠を予定している女性でも受けることができます。

65歳以上の高齢者を対象に市区町村主体で行われるインフルエンザの定期予防接種については、こちらの記事で詳しく書いていますので、参考にしてみてください。

今年は2カ月早くインフルエンザの流行期を迎えそうだ。65歳以上のインフルエンザは肺炎を合併して重症化しがちだ。予防に最も効果的とされるインフルエンザワクチンの定期予防接種について書いてみた。今年は10月1日からワクチン接種を受けられる。対象者は早めの対応を。

インフルエンザワクチンの効果は
接種後2週で現れ約5か月間持続

インフルエンザワクチンの接種を受けると、その効果が現れるのは、多少の個人差はあるものの、約2週間後からとされています。

一方、有効期間ですが、ワクチンのなかには、麻疹(はしか)や流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、水痘(みずぼうそう)などのように、1回か2回接種するだけで終生免疫といって、生涯にわたり免疫が得られるタイプもあります。

しかしインフルエンザワクチンの有効期間は、接種後約5カ月とされています。
先に記したように、例年日本でインフルエンザが流行するのは12月の下旬から翌年の3月上旬ですから、逆算して12月上旬までにワクチンを接種しておけば、そのシーズンはインフルエンザにかかる心配はないだろうというわけです。

■今年のワクチン接種は10月から
ところが今年は全くの例外です。
インフルエンザワクチンの接種はすでに10月1日から始まっています。
現に流行している地域(沖縄県、宮崎県、佐賀県、福岡県、東京都など)では、ワクチン接種を急いだほうが安心でしょう。
その他の地域でも、例年より早めに受けることをおすすめします。

ちなみに、例年問題になるインフルエンザワクチンの供給量ですが、厚生労働省は8月7日、今年の供給量は2016年以降最も多い量であり、不足は生じないと考えられるとする通知を出していますから、先を争う必要は特になさそうですが……。

■ワクチン接種の費用負担は
なお、インフルエンザワクチンの費用負担については、職業感染リスクという観点から考え、スタッフの接種費用を医療機関が負担するところもあるようです。
しかし、費用負担をどうするかは、基本的にはそれぞれの医療機関の判断に任されていますので、改めて再度確認してみてください。

参考までに自己負担の場合は、成人(13~64歳)でインフルエンザワクチン0.5ml・1回接種で、負担額は3000~5000円、65歳から74歳では2000~3000円、75歳以上では全額公費助成となるため負担なし、というのが一般的です。

以上は「医療関係者のためのワクチンガイドライン」のなかの「インフルエンザワクチン」の項(p.S11-S13)を参考にまとめました。
このガイドラインは日本環境感染学会のホームページからダウンロードできます(コチラ)。
*インフルエンザの流行に伴い手放せなくなるマスクについては、こちらの記事も読んでみてください。

感染防護の観点から看護師のマスク着用は避けられない。しかし、患者とのコミュニケーションの観点から考えると課題は残る。特に加齢性難聴のある高齢者には、マスクによるくぐもった声はより聞きとりにくくなる。口元が見えないのも、笑顔の効用を……。