今注目の「散骨」について知っておきたいこと

思い出

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新たな供養法として注目の
「散骨」をご存じですか

人生の終わりを見据えた人生会議(アドバンス・ケア・プランニング;ACP)の場で、患者さんやご家族から、終活の一環としての葬送の方法、つまり「お墓をどうすればいいのか」「どこに納骨すべきか」を尋ねられることがよくあると聞きます。

これまで私たちの国では、亡くなった方を火葬したご遺骨は、墓地に埋葬・納骨して故人を供養するのが一般的でした。これに加え最近では、新しいスタイルの供養の方法として「散骨(さんこつ)」、とりわけ「海洋散骨」がにわかに注目を集めています。

先日もちょっと驚いたのですが、友人とランチをした食堂に流れていたテレビで、いわゆるワイドショーがこの海洋散骨を取り上げていました。昨年亡くなった、作家で元東京都知事の石原慎太郎氏のご遺族が海洋散骨を行ったことで、にわかに認知度が高まったようです。

小型クルーザーを貸し切り
家族だけで海洋散骨を経験

私の友人にも、海洋散骨の経験者がいます。その彼女は、最近、海が大好きだったというお父様を亡くされました。

生前のお父様は、家族との人生会議の場などで、「俺が死んだら墓になんか入れるなよ。夏になると家族みんなで行っていた、あのまぶしいほどに青く広大な湘南の海に撒いて自然に還してくれ」と話していたそうです。

そのご遺志を継ぎ、ご遺族が選んだのは、専用の小型クルーザーを貸し切り、家族だけで海洋散骨できる「海洋記念葬シーセレモニー」と呼ばれるサービスだったそうです。

海上でご遺骨を撒くだけでなく、お父様が好んでよく聴いていた音楽を流したり、散骨を終えた帰路は家族でよく行ったスポットを巡るなど、「それはもう心に残る供養ができた」「あの海に行けばいつでもまた父に逢える」と、つらい別れをしたばかりとは思えない、あまりに清々しい表情で話してくれたのでした。

おひとりさまに人気の「代理散骨プラン」も

なお、この会社のシーセレモニーには、「代理散骨プラン」が用意されているのですが、私の周りに多い、いわゆる「おひとりさま」のなかには、このプランの生前予約を検討している方が少なくないことも併せてお伝えしておきます。

思い入れのある地で
自然に還りたいと「散骨」を選択

ただ、この海洋散骨をはじめとする散骨については、「実は違法だ」との説が、SNS上で流れていたりもして、ご遺族からその点を尋ねられることもあるようです。

仮に、先祖代々続くお墓があり、引き継ぐ役割を引き受ける方がいれば、従来通りの供養を問題なく続けることができるのかもしれません。しかし、先祖代々のお墓があっても、自分は引き継ぎたくない、あるいはそのお墓にはもろもろの事情から入りたくないから「墓じまい」をしたい、という方もいるようです。

このところの生涯婚姻率や出生率の低下が影響して、この墓じまい、つまり地元にあるお墓を解体、撤去して、別の方法で供養したいという若いカップルが増えているとも聞きます。厚生労働省によれば、この「墓じまい」はこの10年で1.5倍に増え、全国で年間12万件ほどあるのだそうです。

一方で、そもそもお墓がない、あるいは新たにお墓を買うだけの経済的余裕がない、またおひとりさまだったりすると、お墓を持つ必要がないという方もいるでしょう。

そして最近少しずつ増えていると聞くのが、「思い入れのあるあの場所で自然に還りたい」という方。このような方々が最近好んで選択するのが、お墓がいらない「散骨」という方法です。

法的にも宗教的にも
散骨は問題ない

この散骨については、厚生労働省が2022年3月31日、散骨事業者向けに「散骨に関するガイドライン」をまとめ、公表しているのですが、そこでは散骨を次のように定義しています。

「墓埋法(正確には「墓地、埋葬等に関する法律」)に基づき適法に火葬された後、その焼骨を粉状に砕き、墓埋法が想定する埋蔵または所蔵以外の方法で、陸地または水面に散布し、または投下する行為」

行政文書だけに難解さが気になりますが、要は、散骨とは、火葬後に砕いてパウダー状にした遺骨(焼骨)の一部、あるいはすべてを海や山に撒く葬送法のことです。

散骨は「葬送のための祭祀(さいし)」、つまり祭りごととして法的に認められていて、散骨という行為自体には、法的にも宗教的にも問題はないことになっています。

つまり、散骨は違法ではないことを、まずは情報としてお伝え願えたらと思います。

散骨するなら
焼骨はすべて粉状に砕く

ただし、散骨するにはルールがあります。

その一つとして先の厚生労働省のガイドラインでは、「焼骨は、その形状を視認できないよう粉状に砕くこと」としています。

焼骨のすべてをきちんと粉状に砕かず、実際に目で見て人骨の一部とわかるような状態のままで放置した場合は、刑法190条の「死体損壊等罪」に抵触し、「3年以下の懲役に処する」となっています。

したがって、散骨を選択する場合は、火葬された遺骨、つまり焼骨の一部をそのままの形で「記念に持っていたい」との願いは許されず、焼骨は残らず粉砕してパウダー状にすることが条件となっているのです。

散骨する場所は
どこでもいいわけではない

散骨にはもう一点、守るべきルールがあります。それは、「粉砕してパウダー状にした焼骨ならどこに散布してもいいというわけではない」ことです。

散骨する場所の選択に関しては、先のガイドラインは注意点として次の点を上げています。

  • 陸上に散骨する場合は、河川および湖や沼を除き、あらかじめ特定した区域とする(私有地や生活圏に近い場所は避ける)
  • 海洋に散骨する場合は、地理条件や利用状況などを踏まえ、海岸から一定の距離以上離れた海域とする
  • いずれを選択するにしても、海水浴場や漁場、養殖場の近くは避け、周辺住民や漁業関係者の目の届かない場所とするなど、配慮を怠らないこと
  • 自然環境への配慮も忘れないこと(思い出の品や花束のラッピングなど、自然に還らないものの投下は禁止)

散骨に関する条例のある自治体も

加えて、全国には散骨に関する条例を制定して散骨を禁止、あるいは制限している自治体が少なからずあることも情報として提供していただけたらと思います。

ちなみに、現時点で散骨に関する条例を制定しているのは次の自治体です。

  1. 散骨を禁止する条例のある自治体:北海道長沼町、宮城県松島町、熊本県南阿蘇村
  2. 散骨を原則として禁止する条例のある自治体:埼玉県秩父市(墓地以外の場所は原則禁止)、鹿児島県伊佐市、北海道岩見沢市
  3. 散骨場の規制を行う条例のある自治体:長野県諏訪市、静岡県御殿場市・熱海市・伊東市・三島市、埼玉県本庄市、神奈川県湯河原町・箱根町、愛媛県愛南町