鎮静下(セデーション下)内視鏡検査時の看護

眠っている

内視鏡検査に伴う苦痛緩和に
セデーション(鎮静)を行う場合

内視鏡検査が始まったころに比べると、体内に挿入される内視鏡スコープの先端部分はより細く、かつ柔軟になっています。

これにより、検査を受ける患者にかかる負担は、ずいぶん軽くなっているようです。

とは言え、胃カメラによる上部消化管内視鏡検査で、経口内視鏡(口から挿入する内視鏡)を使う場合は、内視鏡スコープの先端部分が喉(のど)を通過する際に起こる咽頭反射により、患者は吐き気や嘔吐を経験することが少なくありません。

また、検査の所要時間は正味10分程度なのですが、その間は、終始喉にスコープが挟まった状態になります。

そのため、違和感や不快感など、それ相応の苦痛が避けられません。

こうした苦痛を緩和する目的で、患者にスコープを飲み込んでもらう前に、咽頭麻酔が行われるのですが、それでも不安や緊張から、うまく飲み込めない患者も少なくないようです。

少量の鎮静薬を使用して意識レベルを低下させる

また、大腸専用のカメラによる大腸内視鏡検査(下部消化管内視鏡検査)では、肛門から内視鏡を入れる際に、過度の緊張や不安からスムーズに入らないこともあるとのこと。

さらには、大腸内をよく観察するために、スコープを介して大腸内に空気(炭酸ガスを使うこともある)を入れるのですが、その膨満感による強い苦痛を訴える患者もいるようです。

そこで最近は、患者の苦痛や緊張を和らげて検査を安全かつスムーズに行うために、前処置として「セデーション(sedation)」と言って、少量の鎮静薬を使用して患者の意識を少しだけ低下させた状態で検査を行う施設が増えています。

今日はこの、内視鏡検査時に行われるセデーションについて、看護師として知っておきたいことや注意点を、大学病院の内視鏡検査室に勤務して5年になるという看護師の友人から話をうかがいながらまとめてみたいと思います。

セデーションにより
意識が低下した状態で検査を

セデーションとは、鎮静薬や麻酔薬のような意識レベルの低下をもたらす薬物、具体的には「セルシン」や「ホリゾン」のようなベンゾジアピン系薬剤を使用して鎮静を図る方法です。

がん患者の苦痛を緩和する究極の手段として行われるセデーションでは、深い鎮静が必要になりますが、内視鏡検査の場合は、ごく浅い鎮静です。

あらゆる緩和ケアを行っても患者の苦痛を緩和できないことがある。そんなときに緩和ケアの最終手段として行われる「セデーション」は、深い鎮静により患者とのコミュニケーションが困難になり、そのまま死へと向かうことも多い。それだけに看護は難しく……。

具体的に言えば、この場合の意識レベルの低下は、「ぼんやりとしているが、名前を呼べばうつろながらも覚醒して、必要な受け答えができる」程度です。

意識レベルは低下しているものの、自発呼吸や心血管機能も維持されている、いわゆる「意識下鎮静」と呼ばれる状態です。

意識が低下している状態は一時的なもので、検査が無事に終わって少し経てば、患者の意識は完全に回復して、通常の受け答えができるようになります。

内視鏡検査時にセデーションを行うメリット

内視鏡検査において鎮静薬を使用して上記のようなセデーションを行うメリットとして、日本消化器内視鏡学会は患者向けホームページにて、以下の4点を挙げています*¹。

⑴ 意識がぼんやりした状態で検査を受けることができる
⑵ 検査への不安やストレスが和らぐ
⑶ 検査時の苦痛や不快感が軽減される
⑷ 検査に伴う苦痛や不快感を払拭できるため、次回も検査を受けていいと思えるようになる

検査終了後も完全覚醒まで
一般状態の観察を続ける

とは言え、メリットがあればデメリットもあります。

日本消化器学会が指摘しているのは、概ね以下の5点です。

⑴ 鎮静薬により一時的に意識がなくなることがある
⑵ 鎮静により血圧が下がることがある
⑶ 鎮静により呼吸が弱くなることがある
⑷ 検査終了後はしばらく休む必要がある
⑸ 検査当日は安全のため、車やバイクなどの運転を控える必要がある

以上のようなデメリットの現われ方やその程度は、セデーションに使用する薬剤の種類や量、また患者の体調による薬の効き具合などにより個人差があります。

したがって検査中と検査を終えて意識が鮮明になるまでは、鎮静効果による意識状態のチェックに併せ、酸素飽和度や脈拍などのモニターを行うとともに、検査中の急変に備え、酸素投与や急変対応の準備もしておく必要があります。

セデーション下内視鏡検査後の帰宅条件

また、セデーション下での内視鏡検査終了後は、患者が覚醒していて、仮に「自分で歩けます」などと話しても、十分な覚醒ではない場合があります。

患者にはこのことを説明し、了解を得た上で、検査ベッドのまま別の部屋に移送します。

そのうえで、血圧や呼吸状態など全身状態をチェックしながら30分から1時間ほどは横になったまま休憩してもらい、次のことを確認して問題がなければ、帰宅を許可するようにしているそうです。

⑴ 明確な応答ができる状態まで覚醒している
⑵ 顔色や気分に異常がなく血圧の低下や呼吸抑制も見られない
⑶ ふらつかずに自立歩行ができる
⑷ むせずに水分を摂取できる

苦痛のない内視鏡を望む患者に
経鼻内視鏡も選択肢に

最近は人間ドッグなど短期入院による健康診断で内視鏡検査を受ける患者が増えているようです。

その際、過去に胃カメラで苦しい思いをしたからと、「苦痛のない内視鏡を」と希望されることも少なくないようです。

こうした要望に応えて上部消化管内視鏡検査には、経口ではなく経鼻、つまり鼻から挿入する内視鏡も選択肢の一つになっているそうです。

経鼻内視鏡は、経口内視鏡に比べスコープの先端部分が非常に細くできています。

そのうえ、鼻孔から挿入するため咽頭反射による吐き気などの不快感や苦痛がほとんどなく、セデーションをする必要もないとのこと。

したがって検査中も医師と会話することができるうえに、本人が希望すれば、リアルタイムの検査映像を見ながら検査を受けることもできるというメリットがあります。

苦痛のない方法で、しかもセデーションにより意識レベルが低下することに不安を訴える患者には、経鼻内視鏡という選択肢もあることを伝えてみてはいかがでしょうか。

もちろん、経鼻内視鏡の備えがあればの話です。

なお、セデーション下での内視鏡検査についてさらに詳しい情報を知りたい方は、日本消化器内視鏡学会の『内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン 第2版』が参考になります。

参考資料*¹:日本消化器内視鏡学会ホームページ「消化器内視鏡Q&A