退院支援に活用したい退院当日の訪問看護

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医療依存度が高い患者の
退院当日の訪問看護

退院支援の対象患者には、医療依存度が高い状態で自宅へ戻る患者が少なくありません。気管カニューレ、もしくは留置カニューレを使用している、あるいは在宅酸素療法や在宅中心静脈栄養法を受けている患者などはその代表でしょう。

また、いわゆる終末期にある患者のなかには、残された時間を数日だけでも、住み慣れた我が家で家族と一緒に過ごしたいと望み、家族もまた「自宅で、家族みんなで看取ってあげたい」と患者の意向を受け入れ自宅に退院していくケースも、最近は増えていると聞きます。

このような患者に対し、病棟看護師も退院支援看護師も、退院後の在宅での生活に支障が生じないように指導を行い、訪問看護師をはじめとする地域の関係職種のスタッフとも連携して、万全の準備をしたうえで退院の日を迎えていることと思います。

退院後への準備は万全でも拭いきれない不安

しかしながら、「いよいよ退院となると、患者や家族は言うまでもなく、送り出す私たち看護師サイドも、退院後のことがあれこれ気になって心配が尽きない」と語るのは、退院支援看護師のWさんです。

こうした心配を少しでも減らすための手立てとして、W看護師は、退院するその当日から訪問看護を利用できるように退院支援プログラムを組むようにしているとのこと――。そこで今回は、その辺の話を、W看護師の話をもとにまとめてみたいと思います。

退院当日の訪問看護の対象が拡大へ
2021年度介護報酬改定により、同年4月から、退院当日の訪問看護は、患者(利用者)のニーズに対応して在宅での療養環境を早期に整える観点から、従来の「厚生労働大臣が定める状態等」にある場合に加え、主治医が必要と認める場合も算定可能となっています。

退院当日からの訪問看護には
「特別訪問看護指示書」が必要

訪問看護は、介護保険サービスの一環として利用することが基本とされています。ただし、医療依存度が高い状態にある患者の場合は、医療保険で利用することもできます。その際には、かかりつけ医が発行する「訪問看護指示書」が必要になることは改めて言及するまでもないと思います。

ただ、この「訪問看護指示書」で受けることができる訪問看護には、「原則として1日1回、訪問時間は30~90分程度、週に3回まで、1か所の訪問看護ステーションから訪問看護師1人で対応」といった、かなり厳しい利用制限があります。

この決められた利用枠内では、訪問看護ニーズを過不足なく満たすことができない状態にある患者は決して少なくありません。

このような患者のために、「特別訪問看護指示書」が発行されていることを条件に、原則に縛られることなく、利用枠を超えて訪問看護を利用できる仕組みが用意されています。退院当日から訪問看護を利用するに際しては、この仕組みを活用することになります。

そのためには、患者が在宅移行後の生活に心配や不安を抱えていること、スムーズに在宅療養に移行するためにも退院するその日から訪問看護師にサポートしてもらいたい旨を、退院前カンファレンスの機会などを利用して、直接、あるいはケアマネジャーなどを介してかかりつけ医に伝え、「特別訪問看護指示書」を発行してもらう必要があります。

退院日に患者宅で待機し
訪問看護師がサポートを

「特別訪問看護指示書」は、その患者に「訪問看護指示書」を交付しているかかりつけ医が、以下に示す3要件などから、患者には一時的に頻回(週4回以上)の訪問看護が必要と判断した場合に、患者側の同意を得たうえで、訪問看護ステーションに対して発行することができるものです。

  1. 肺炎や心不全などの急性増悪の状態にある
  2. 疾病にかかわらず終末期の状態にある
  3. 退院直後である
医療保険対応の訪問看護には「1日1回、週3日まで」の利用枠がある。患者の病気や状態によっては、この枠を超えて週4日以上、最長で28日利用できる場合がある。その際必要になる「特別訪問看護指示書」や対象となるケースについてまとめた。

上記3要件のうち「3」の「退院直後である」患者に対する訪問看護のケースでは、退院当日に、訪問看護師に患者宅で待機していてもらい、患者が自宅に戻ったらすぐにその場で、必要な医療的ケアや機器の操作方法、さらには介護方法に至るまで具体的にサポートしてもらうことが可能です。

退院当日から14日間、毎日訪問看護

「特別訪問看護指示書」の有効期間は、指示書の発行日から14日間です。この間患者は、毎日でも訪問看護を利用することができます。

また、「訪問看護指示書」による訪問看護の場合は、1か所の訪問看護ステーションから1人の訪問看護師に限定されますが、「特別訪問看護指示書」による14日間の訪問看護では、2か所の訪問看護ステーションから訪問看護を受けることができます。

最長28日間、連日のケースも

さらに、次の要件を満たす患者であれば、「特別訪問看護指示書」の交付を月に2回まで受けることができます。

  1. 真皮を超える褥瘡の状態*にある
  2. 気管カニューレを使用している状態にある

したがって、退院当日から、最長で28日間は、連日、1日3回まで訪問看護を受けることができることになります。しかもこの場合は、3か所の訪問看護ステーションから訪問看護を受けることができます。

このように「特別訪問看護指示書」を上手に活用することにより退院直後からの一時期を訪問看護によるサポートを受けることができれば、「在宅療養にスムーズに移行できるうえに、患者や家族にも自信をもってむらうことができ、結果として再入院を予防することにもつながるのではないかと思っています」と、W看護師は語っています。

*「真皮を超える褥瘡の状態」とは、①NPUAP分類のⅢ度またはⅣ度、②日本褥瘡学会によるDESIGN分類のD3、D4またはD5を指し、特別訪問看護指示書を発行する医師が判断します。

介護保険による訪問看護はケアプランに

なお、介護保険で訪問看護を利用するケースもあります。その場合も、患者が医療処置を必要とする状態であれば、ケアプランに訪問看護を組み込むことにより、1日に複数回、週に何日でも、2か所以上の訪問看護ステーションから訪問看護を受けることができるようになっています。

具体的には、介護費用負担の問題もありますから、患者側の同意を得たうえでケアプランを作成するケアマネジャーにその旨を提案し、3者で話し合ってから、かかりつけ医に指示書の発行を要請することになります。