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「食べる楽しみ」のために
摂食嚥下支援加算を充実
摂食嚥下機能に障害がある患者は、経口摂取が存分にできないがゆえに、低栄養や脱水の状態に陥りやすくなっています。場合によっては、生命の危険に直結するような誤嚥による窒息や誤嚥性肺炎を起こしやすいという問題があります。
加えて、そもそも「食べる楽しみ」を失うことは、「生きたいという意欲」にマイナスに働き、QOL(生活の質)の低下につながりかねません。そのため、「口から食べることをあきらめさせないケア」は、とりわけ高齢者には欠かせないかかわりとなっています。
こうした点を踏まえ、2020年度診療報酬改定では、摂食嚥下障害を有する患者に対して、多職種チームによる質の高いリハビリテーション、いわゆる「摂食機能療法」がより効果的に行われて経口摂取の回復が促進されることを狙い、「摂食嚥下支援加算」の算定要件および評価の点で大幅な見直しが行われています。
なお、ここで言う「摂食嚥下支援加算」とは、2020年度の改定前までは「経口摂取回復促進加算」と呼ばれていたものです。名称変更に伴う改定のポイントを以下にまとめておきたいと思います。
「摂食機能療法」の所定点数と
「摂食嚥下支援加算」
摂食機能障害を有する患者*に対するリハビリテーション、つまり「摂食機能療法」の1日当たりの診療報酬評価(所定点数)は、おおむね次のようになっています。
- 1回につき30分以上、医師等の専門職が訓練指導を実施した場合は、1回につき185点を、1月に4回に限り算定する。
ただし、治療開始日から起算して3月以内の患者については、1日1回算定できる。 - 1回の訓練実施時間が30分未満の場合は、1回130点となる。
ただし、脳血管疾患による摂食機能障害を有する患者の場合は、発症から14日以内に限り、1日1回算定できる
①発達障害、顎または舌切除術後、脳卒中等による後遺症により摂食機能に障害のある患者
②内視鏡下嚥下機能検査または嚥下造影検査により、他覚的に嚥下機能の低下が確認でき、摂食嚥下支援チームの介入により、医学的に摂食機能療法の有効性が期待できる、つまり回復が見込まれる患者
上記の摂食機能療法所定点数のうえに、「摂食嚥下支援加算」として、週1回に限り200点が加算されるのは以下の2点を満たす場合です。
- 別に定められた施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関であること
- 規定の要件を満たす摂食嚥下支援チームにより、摂食機能または嚥下機能の回復のために必要な指導管理を行った場合
「摂食嚥下支援加算」の
リハビリ進行の算定要件
「摂食嚥下支援加算」は、以下の条件を満たす場合に算定することでできます。
- 摂食機能療法を算定する患者であること
- 摂食嚥下に係る専門知識を有した多職種からなる「摂食嚥下支援チーム」が介入することにより摂食嚥下機能の回復が見込まれると判断される
- 支援チームのメンバーが協働して必要な指導管理を行った
■摂食機能療法の実施計画書を作成し患者の同意を得る
摂食嚥下支援チームは、患者の内視鏡下嚥下機能検査または嚥下造影検査(VF検査)の結果に基づいてリハビリテーション、つまり摂食機能療法の実施計画書を作成する。
すでに摂食機能療法に係る計画書が作成されている場合は、チームにより見直しを行い、見直し後の計画内容を患者・家族に説明し、同意を得たうえで交付するとともに、その計画書の写しを診療録に添付する。
■週1回以上、チームカンファレンスにて計画書の見直しを行う
チームは、月に1回以上、患者に内視鏡下嚥下機能検査または嚥下造影検査を実施する。
この検査結果を踏まえて、実施計画等の見直しに係るカンファレンスを週に1回以上行う。
このカンファレンスには、摂食嚥下支援チームのメンバーのうち、常勤の医師または歯科医師、常勤看護師、常勤言語聴覚士、常勤薬剤師、常勤管理栄養士が必ず参加する。
支援チームの残りのメンバーである常勤歯科衛生士、常勤の理学療法士または作業療法士については、必要に応じて参加することが望ましい、とされている。
■カンファレンスの結果はその都度患者・家族に説明する
カンファレンスの結果に基づき、実施計画や嚥下調整食の見直し(嚥下機能の視点から適切と考えられる食事形態に見直すことや量の調整を行うことを含む)を行うとともに、摂食方法の調整や口腔管理等についても見直しを行い、必要に応じて患者またはその家族等に、その内容について指導管理を行う。
施設基準としての
摂食嚥下支援チーム構成メンバー
摂食嚥下支援加算を算定するには、院内に、以下から構成される摂食嚥下機能回復支援に係るチーム(摂食嚥下支援チーム)の設置が必要とされている。
■専任の常勤医師または常勤歯科医師
■専任の常勤看護師*
■専任の常勤言語聴覚士
■専任の常勤薬剤師
■専任の常勤管理栄養士
■専任の理学療法士または作業療法士
■専任の歯科衛生士
(歯科医師がチームに参加している場合に限り、必要に応じて参加していること)
専任の常勤看護師については、摂食嚥下機能障害を有する患者の看護に従事した経験を5年以上有し、かつ摂食嚥下障害看護に係る適切な研修を修了していることが条件となっている。
施設基準に係る地方厚生局長等への届出書類には、「経験年数」の記載と、「摂食嚥下障害看護に係る適切な研修」を修了していることを確認できる文書を添付することが求められている。
■接食嚥下障害看護に係る適切な研修
専任の常勤看護師に求められる研修としては、日本摂食嚥下障害看護研究会が各支部主催の研修会を随時開催しています。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い研修会は開催が見送られていましたが、2021年10月2日(土)には、第14回 摂食嚥下障害看護研究会が開催されています(その後のスケジュールは未定)。
また、摂食や嚥下に関する研修情報については、こちらの記事も参考にしてみてください。