退院支援における「かかりつけ薬剤師」との連携




薬局

かかりつけ薬剤師・薬局業務を
「対物」から「対人」へ転換を

「24時間対応すること」や「医師あるいは歯科医師の指示があれば、患者や家族の同意を得たうえで、在宅で療養生活を送る患者を自宅に訪問し、服薬指導を行う」ことなどを盛り込んだ「かかりつけ薬剤師・薬局」制度がスタートしたのは2016年4月でした。

日本薬剤師会は、この制度下での活動が来年4月で5年目に入るのを契機に、かかりつけ薬剤師・薬局の業務内容を、薬剤の取扱いなど対物中心の業務から地域住民とのかかわりの度合いの高い対人業務へと、本格的にシフトするとの意向を明らかにしています。

つまり、受け取った処方箋に従い薬を調剤して患者に渡すだけでなく、薬を渡した後も薬学的な知識や技能をフルに活用して、患者の「病気を治す」という医療本来の目的に、かかりつけ薬剤師としてこれまで以上に貢献していこうというわけです。

この意向を受け、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(以下、中医協)において、2020年度の診療報酬改定における調剤報酬の改定に向け、議論が重ねられています。
議論が進むなかで、すでにいくつか実施の方向に話が進んでいるものもあります。

そのなかから、退院支援の段階から看護との連携・協働が必要になってくると思われるかかりつけ薬剤師・薬局の新たな取り組みについて紹介してみたいと思います。

薬を渡すだけで終わらせない
かかりつけ薬剤師の新たな業務案

かかりつけ薬剤師・薬局の「対人業務」について厚生労働省(以下、厚労省)は、12月4日に開催された中医協総会において、以下4つのかかりつけ薬剤師・薬局の業務について、一定の要件を定めたうえで、調剤報酬として点数を新設することを提案しています*¹。

  1. 初めて吸入薬を使用する喘息患者や処方箋が変更になった喘息患者等に対して、練習用のデモ機も用いつつ行う吸入指導(COPDの患者等も含む)⇒吸入薬指導加算を新設
  2. 簡易懸濁法を開始等する在宅患者に対し、医師や家族等からの依頼に基づき行う、薬剤選択の提案や簡易懸濁法に関する説明・指導⇒経管投薬支援料を新設
  3. 糖尿病等の患者で、処方薬の種類や用法・用量等が変更になった場合、調剤後に改めて電話等により行う服用上の注意等に関する指導
  4. 患者の血液・生化学的検査等の結果を活用し、医師への疑義照会*により、患者の処方薬の用法・用量の最適化を行った場合
    *疑義照会とは、薬剤師が調剤段階で処方箋の記載内容に疑問等を感じた場合、処方箋を発行した医師に直接内容の確認を行うこと。

以上の提案をもとに行われた議論では、診療側に立つ医師の委員から、「薬剤師だけで業務を完結しようとしている」との指摘に基づき、次のような異論が出されました。
■吸入指導等は、服薬指導の一環で行われているものである
■糖尿病等の患者への指導等は医療機関が行うべきであり「薬剤師が、調剤後に電話等により改めて指導等」を行うことには非常に疑問がある
■患者の血液・生化学検査等の結果活用に関しては、そもそも患者が自らの検査データをかかりつけ薬局に提供したいと思うかどうか自体が疑問である

簡易懸濁法指導における
退院支援看護師との連携は?

こうした議論を踏まえて開催された12月20日の中医協総会では、かかりつけ薬剤師・薬局の対人業務として提案された上記4項目うち、「2」の退院後に簡易懸濁法を開始する患者にかかりつけ薬局でかかりつけ薬剤師が薬剤選択を提案し、家族に簡易懸濁法を説明・指導したことを調剤報酬として評価することに関しては、反対意見は出なかったようです*²。

ただし、診療側を代表する医師会の委員からは、「医師を含めた関係者間の理解のもとに実施されること」を条件とすることを求める意見が出されました。

ご承知のように、簡易懸濁法とは、錠剤やカプセル剤を開封して粉末状にすることなく、その剤形のまま専用の容器に入れ、そこに約55℃の温湯を加えて崩壊・懸濁(溶解)させたのち、経鼻胃管や胃瘻などのチューブを介して患者に投与する方法です。

この簡易懸濁法は、粉砕による薬剤の経管投与に代わる方法として、看護場面でも導入が進んでいると聞きます。
特に最近では、医療現場のみならず在宅においても、内服抗がん剤による暴露防止策としても、この方法が積極的に採用されているようです。

こうした現状からして、病棟看護師や退院支援看護師が、初めて簡易懸濁法を患者・家族に指導する役割を担う場合も十分あり得ることを考えれば、医師会の委員が求めている退院支援看護師を含む「関係者間の理解のもとに実施する」ことは、当然の算定要件として明記されるべきでしょう。

かかりつけ薬局における「経管投薬支援」
2020年度診療報酬改定では、胃瘻もしくは腸瘻による経管投薬などが行われている患者が簡易懸濁法を開始する場合について、医師の求めなどに応じて薬局が必要な支援を行った場合の評価として「経管投薬支援料(100点初回のみ)が新設されています。
具体的な支援内容としては、以下があげられています。
⑴ 処方医・看護と等への簡易懸濁法に適した薬剤の選択の支援
⑵ 患者の家族または介助者が簡易懸濁法により経管投薬を行うために必要な指導
⑶ 保健医療機関への患者の服薬状況および家族等の理解度に係る情報提供
(必要に応じて)

喘息、COPD患者の吸入療法は
看護と連携・協働して指導を

もう一点、看護、特に退院支援看護師がかかりつけ薬剤師との連携・協働のあり方について考えておきたいのが、厚労省提案の「1」で挙げられている喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者にデモ機、つまり練習用の吸入器を用いて行う吸入指導です。

吸入療法は、薬剤が高濃度かつ急速に目的とする局所に到達するため、内服投与以上に迅速かつより高い効果が期待できます。そのうえ、全身的な副作用も少ないことから、喘息においてもCOPDにおいても患者にとってとても有用な治療法です。

それだけに、正しい手技により確実に吸入することが必要で、初めての指導には医師や看護師との連携が不可欠であるうえに、その後のフォローにおいてもかかりつけ薬剤師だけでいいのかどうか、さらなる検討を求めていく必要がありそうです。

かかりつけ薬局における「吸入薬指導」
2020年度診療報酬改定では、調剤報酬のなかの「薬剤服用歴指導料」に薬局における「吸入薬指導加算(30点)」が新設されています。
その算定要件としては以下があげられています。
⑴ 喘息または慢性閉塞性肺疾患の患者であること
⑵ 患者・家族からの求め、または処方医の求めがあり、患者の同意を得ること
⑶ 文書での説明と練習用吸入器を用いた実技指導を行うこと
⑷ 3か月に1回に限り算定可能
⑸ 指導内容を医療機関に提供すること

なお、かかりつけ薬剤師・薬局制度についてはこちらの記事も参照してみてください。

薬局にこもり薬剤業務をしているだけでなく、患者のもとに出掛けて服薬指導を行う「かかりつけ薬剤師」の存在をご存知だろうか。高齢者の増加に伴い複数の診療科から薬の処方を受けて起こる多剤服用の弊害が防げると期待されているが、訪問看護師との連携は?

参考資料*¹:厚生労働省ウエブサイト
参考資料*²:m3.com医療ニュース2019年12月20日