病院内にも認知症カフェがあったらいいのに

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病院内に認知症カフェがあれば
認知症の初期段階に利用できる

認知症の診断を受けた義父と暮らして3年になるという友人から、「病院で働く看護師さんにお願いしたいことがあるんだけど、ブログで書いてくれない?」と、電話がありました。

彼女は看護職でもないし、医療や福祉領域の関係者でもありません。認知症の義父と暮らすようになり、必要に迫られて認知症ケアについて情報を集めているうちに、医療や福祉全般に関心をもつようになったという、いわば一般人です。この友人が、病院勤務の看護師さんに「お願いしたいこと」とは……。

現在デイケアセンターやコミュニティーセンターなど、地域を中心に「認知症カフェ」とか「オレンジカフェ」と呼ばれる場所が開かれています。

このような、いわば認知症者や家族にとっての居場所が、「病院内にもあって、認知症が進行してにっちもさっちもいかなくなる前に、看護師さんや同じ立場の人たちと情報交換することができたら、家族としてはずいぶん助かると思う」、と――。

だから、病院のロビーや外来フロアの一角に、そんな場所を設けてほしい、と言うのです。

認知症カフェのほとんどが
地域で開催されている

「認知症カフェ」とは、認知症者や家族、地域住民、医療や介護の専門職など、認知症に関心のある人なら誰もが気軽に集まり、安心して交流することができる場所です。

1997年にオランダで「アルツハイマーカフェ」として始まったのをきっかけに、今では世界中に同様のカフェが普及しています。

日本では、2012年に提唱された認知症施策総合プラン、いわゆる「オレンジプラン」に認知症カフェが取り入れられ、その活動が推進されたことにより、2020(令和2)年3月には全国約8,000カ所で、認知症カフェが開催されています。

この数は、世界でもまれにみる多さとのこと。ちなみに、認知症カフェのルーツであるオランダのアルツハイマーカフェは240カ所と聞きますから、日本における普及状況はまさに驚きです。ただ、友人が指摘するように、その多くは地域で開催されているのが現状です。

厚生労働省が2016年3月にまとめた認知症カフェに関する実態調査報告書*¹によれば、認知症カフェの開催場所で最も多いのは、デイサービス・デイケアで全体の15%、次いでコミュニケーションセンター等13%、特養・老健9.9%、グループホーム・小規模多機能ホーム9.2%と続き、病院等医療機関は4.0%にとどまっています。

認知症カフェの運営方法や
有効性に関する大規模調査

認知症カフェについては、普及は進んでいるものの、以下の点については、すべてがカフェの運営者の裁量にゆだねられていて、詳細がわかっていないという問題もあります。

  1. どのような人を対象にしているのか
  2. どの程度の頻度で開催されているのか
  3. どのようなプログラムで開催されているのか
  4. その結果どのような効果が得られているのか

そこで、藤田医科大学医学部と認知症介護研究・研修センター仙台の合同研究チームは、先の厚労省の実態調査をもとに大規模なデータ解析を行い、認知症カフェの有効性に影響をもたらす運営方法に関する運営者サイドの評価を、次のようにまとめています。*²。

  • 認知症者にとっては、カフェの開催頻度がより頻繁で、コンサートなどの催しがあることが、カフェの効果を上げていた
  • 認知症者の家族にとっては、開催頻度は有効性にはあまり関係がなく、カフェで医療専門職に相談できることや同じ立場の人同士で話し合えること(いわゆる「ピアサポート」)が効果を上げることにつながっていた
  • 認知症者やその家族ではないものの、認知症に関心をもって参加している地域住民にとっては、開催頻度が高く、認知症に関する講話や医療専門職への相談が効果をもたらしていると考えられる
  • いずれの立場の人にとっても、自分と同じ立場の人が多く参加していることが有効性に関係していると考えられる

認知症者・家族・地域住民が参加し
1か月に1回、2時間程度

次いで、運営者サイドの評価を踏まえ、では一体認知症カフェはどのように運営するのが望ましいのか、という話になってきます。この点について研究チームは、大規模なデータ解析の結果から、おおむね以下の2点が明らかになった、としています。

  1. カフェにより構成割合は異なるものの、認知症者、その家族、地域住民の3者が参加し、「1か月に1回、2時間」のかたちで開催されることが主流
  2. 認知症カフェの源流とされるオランダのアルツハイマーカフェでは、1回2時間の間に、おおむね30分間隔でミニ講和、話し合い、コンサートなど、いくつかのプログラムが行われており、この構成がいずれの立場の人の望みもバランスよく叶えていると推測される

ただし、運営者個々の考え方や地域特性、開催場所、参加者の構成やニーズなどに合わせて、カフェの開催頻度や時間、プログラム構成などには「バリエーションが生じると考えられる」と、研究チームは付け加えています。

認知症カフェに参加して
認知症の進行を緩やかに

高齢化の進行に伴い認知症者は年々増加しており、厚労省は、いわゆる団塊世代(1947年~1949年生まれ)の全員が75歳以上になる2025年には、これらの5人に1人、累計で約700万人に達すると推計しています。

待ったなしの認知症対策を強化しようと、2019年6月に国が打ち出した「認知症施策推進大綱」では、「認知症は誰もがなりうるもの」との認識のもと、「予防」に力を入れていくことを重要方針として掲げています。

この「予防」の定義として大綱には、「認知症にならないという意味ではなく、認知症になるのを遅らせる、認知症になっても進行を緩やかにするという意味」と明記されています。

地域で開催されている認知症カフェを利用するのは、認知症がある程度進行して、家族も介護に行きづまったという方が圧倒的に多いようです。

しかし、たとえば「最近物忘れがひどいから」などと外来を受診して認知症の診断を受けた、その初期の段階から、病院内にある認知症カフェに立ち寄り、何がしかのアドバイスなりを受けることができたなら、進行スピードを多少なりと遅らせることができるのではないか、もっと心穏やかにケアすることもできるのではないだろうか――。

認知症の義父の介護を続けていて、そんなふうに、友人は考えているようですが……。病院勤務の看護師さん、とりわけ病院勤務の看護管理者や認知症看護のスペシャリストの皆さんは、いかがお考えでしょうか。

ちなみに厚生労働省は、認知症施策関連ガイドラインとして事例集、「よくわかる!地域に広がる認知症カフェ」などをまとめ、取り組みの参考にしてほしいとしています。

物忘れを見過ごさず血液検査で認知症予備群のリスクチェックを

なお、最近は、物忘れに気づいた段階で、アルツハイマー型認知症の予備群とされる軽度認知障害のリスクを血液検査で判定できるようになっています。

その結果に応じた先手を打てば、認知症の予防も可能になっていることをご存知でしょうか。詳しくはこちらを。

認知症は早い段階で発見して先手を打てば予防も期待できることがわかっている。幸い、簡単な血液検査で、アルツハイマー型認知症の前の段階である軽度認知障害のリスクを判定する検査法が開発され、実用化されている。その紹介と、認知症予防策を紹介する。

参考資料*¹:2016年度厚労省老健事業「認知症カフェの実態に関する調査研究事業」報告書
参考資料*²:藤田医科大学 プレスリリース